雲が空を薄く覆い、日の光が弱まり始め、ほんの少し暗くなってきた頃、左手の方向に人気ひとけのない小さな公園があった。名前が「啄木ゆめ公園」と、ここでも啄木にまつわる名前がつけられていた。公園には、水飲み場にベンチ、小さな遊具が置かれており、真ん中には小屋のような、日よけのあるベンチが置かれている。そのベンチの木のペンキは薄れ、少し古びた雰囲気になっているが、暑くてほんの少し座りたかったので、ベンチへと向かう。

 日よけの下に潜り込み、ベンチに腰掛け、力を抜くように体重をかける。少し上を見上げて屋根の端を見れば、蜘蛛の巣が張られており、古びた雰囲気がより一層際立ってくる。

 バッグから水筒を取り出し、麦茶を飲み、ついでに塩分補給のタブレットを口に放る。

 道路の方に目を向けながら、体の力を抜き、椅子に体重をかける。  「ピィー、ピィー」「チュン、チュン」「ジャワジャワ」と一羽だけセミのような鳴き声をした鳥もいるが、そう聞こえる様々な鳥の小さな囀りが公園に響く。日影にいるおかげで日の光が直接体に当たることなく涼しい風が体に当たり、街中でも自然を感じられる落ち着いた空間がこんなところにあるのだと少し驚いた。だが、そんなことを考えさせないほど、自然の音が体を包み込む。もういっそのこと探索をやめて残っていたいほどだ。

 だが、ゆっくりし過ぎて本当に動きたくなくなる可能性があるので、椅子との優雅な一時に別れを告げ、公園を後にした。

 公園の敷地から歩道へと出ていき、また道なりに進んでいく。

 そよ風の吹く音が騒音として耳に響き始めたその時、看板に書かれた文字に目に入る。「石炭」と黒い文字で書かれた看板だ。


「石炭……まだやってるのかな?」


 釧路はかつて石炭の採取、炭鉱の栄えた都市で、調べてみると、今も一部の鉱山が稼働しているのだ。今のエネルギーは石油中心となっているため、石炭として使われる燃料は殆どが石油に置き換えられてしまっている。その現状がある中でも、釧路の石炭は今も地元の発電所や、道内の製糖工場やでんぷん工場に供給されているらしい。

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