第10話:こいつが
ここは・・・どこだ・・
真っ白な世界に何もない。誰もいない
俺は死んだのか?・・・死んで当然か・・・結局エマを巻き込んで・・・
くそ!くそ!くそ!俺のくそ野郎!心の中で何度も叫ぶ。くそくそくそ
頭を地面に自ら叩きつけて、何度も何度も何度も何度も
『貴様うるさいな』
ゾワッと体の毛が立つ。
後ろを振り向くと、俺と同じ黒猫。いや、目の色だけ違う。
あの時の猫だ。俺を喰った。俺を殺した猫だ
目以外は俺と同じはずなのに、嫌なオーラを感じる。
こいつと目が合っていると吸い込まれそうになる。
勝てない。つらい。いろんな負の感情が体中を走る。
ごくッと唾をのみ声をひねり出す
「お前・・・あの時の黒猫?・・・・俺死んだのか?」
『死んでない。まだ・・・な。まぁでもこのままだと死ぬだろうな。あの娘と一緒に』
娘?エナのことか?湖に落ちていくときのエナの声が頭から離れない。
そもそもこいつが・・・こいつがあいつらの探してる黒猫だろ。
こいつのせいで俺は2回も死ぬし、全く関係ないエナまで…!
「お前のせいで!!お前がこの世界に恨まれてるせいで…!関係のないエナまで・・!」
『関係ない…か。関係はあるが…まぁその話はどうでもいい。貴様をここに呼んだのには2つ理由がある』
どうでもいいだと…巻き込んでおいて…どうでもいい?
ふざけるなと怒り、毛がさらに立ちあがる。
俺にはお構いなしに顔色を変えずに黒猫は話を続ける
『一つ目は俺の魂を貴様の中に入れろ。その願いを聞いてくれたら、まぁ。なんでも貴様の願いを一つ聞いてやる。』
『二つ目はこの世界にいる魔女を探してくれ。魔女は4人、名前は・・<ベラミダ><イリネス>…「ちょっ!ちょっと待ってくれ!」
言葉を遮られたのが不服だったのか、黒猫は俺を睨む
『なんだ。貴様は人の話を最後まで聞けないのか』
「いや。おかしいだろ。聞ける聞けないの問題じゃねぇ。そもそも魂を体の中に入れるってなんだよ!」
『ふん。なんだそんなことか。まずは貴様の胸に俺が手を当てて、俺が貴様に「いや!やり方をきいてるんじゃねぇよ!」
なんだこの黒猫。ちょっと天然なのか?貴様貴様うるせぇ。全然会話にならねぇ。
「なんでお前の魂を俺が入れなきゃならないんだよ」
はぁ・・・。と黒猫はため息をつき片手で魔法?紙芝居のようなものを出してきた
『わかりやすく説明してやると、俺の体はこの世界じゃ消滅したが、消滅前に魂だけをこの空間に送って生き残った。
だが肉体を持たない魂は時間が経つにつれて消滅してしまう。
つい最近は消滅しかかっていたんでな、最後の力で貴様に会って魂のかけらを喰ったおかげで、少しは消滅の時間が長引いたわけだ。
だがこのままでは消滅する時間を長引かせているだけで、消滅するのに変わりはない。最後の力を使ったせいでこの空間ももうすぐ崩壊する。
4人の魔女達なら俺を復活させられることができるから、その魔女達に会うまでこの空間の代わりにお前の体が必要というわけだ』
わかったか?このアホが。と思っているのが顔の表情からわかる。
ペラペラと長く話されたが、イラスト付きで説明されたせいで妙に納得して、なるほどぉ~と頷いている自分がいた。
魔法って便利だなぁ~
いやいやいや、感心している場合じゃない。途中おかしいところがあった。
「俺の魂を喰った・・・?」
『あぁ。お前の魂と俺の魂は相性がいいらしいからな』
そんなにサラッと・・・ふざけるな。と言いたいが、俺もエマのことを巻き込んで殺した。
同罪だ。
「ん?待てよ。お前何でも願いを聞いてくれるって言ったよな」
『あぁ。俺は嘘はつかない』
俺は唾を飲み込む。
「エナを…助けられるか?」
『あの娘か。貴様はずいぶんあいつに入れ込んでいるな。やめておけ。あいつは魔女だ。しかも俺が知らない魔女だ』
「そんなの俺には関係ねぇ!あいつは俺の家族だ!大切だって言ってくれたんだ!俺のために泣きながら守ろうとして!怖かったはずなのに、逃げたかったはずなのに・・・!」
『約束は約束だ。それが貴様の望みなら助けてやる』
「ほんとうか…で、でも!エナと俺の近くにはディーニっていう強いやつがいて・・」
黒猫は鼻で笑う
『あんな雑魚なんて、俺にとったら道端にいる虫同然だ。貴様は俺をただの猫だと思ってるのか』
「猫じゃん…」
『何か言ったか?』
「いや!何でもない。でもどうやって倒すんだ?」
『そんなの簡単だ。貴様の体を俺が少しの間使って戦えばいい話だ』
ほぇ~そんなことができるんですね。
「ん?お前・・・戦いが終わった後はちゃんと体を返してくれるんだろうな」
『…』
「おい!聞こえないふりしてんじゃねぇ!返せよ。ゼッタイに!返さないっていうなら魔女も探さないし、魂も住まわせないからな。」
『わかった』
「お前嘘はつかないってさっき言ってたよな?」
『俺は嘘はつかない。誓おう』
「よし。契約だ。まずはエナを助ける。そのあとにディーニって男だ」
会った瞬間はこいつにおびえていたのに…俺ってやっぱり適応能力すごすぎ?
こいつがさっき言っていた、この空間も崩壊っていうのも始まってるみたいだし。
時間はもうないか。
俺に迷ってる暇なんてないな・・・
「で、どうやって体に入るんだ?」
『やっとか・・・俺が貴様の胸に手を置いて<ソウルエンター>と言うから、<パーミッション>と返事しろ』
「わかった。最後に一ついいか」
『なんだ?』
「魂を入れる前にお前の名前を教えろ。お前とか貴様とかやめようぜ」
『俺の名前は・・・モゴモゴ』
「もごもご?なんて?聞こえなかった」
『クロだ。・・・俺の名前』
クロ・・・。見た目まんまじゃねぇかよ。
かっこいい名前かと勝手に思ってたわ・・・
「じゃあ、クロさんだな。クロさんはおれのことはファストって呼んでくれ。そしたら行こうか。クロさん」
『次名前を連呼したらお前を殺す』
「俺を殺したらお前も消滅するんじゃねぇの?」
『…』
こいつ…都合悪くなると黙るんだな…
『いいから早くやるぞ。時間がない』
クロは俺の胸にそっと手を当てる。
最初に感じた負のオーラは消えていて、体に触れた手は温かく感じた。
全部終わったらもっと魔女について聞こう。エナも魔女だって話だ。
魔女ってなんだ?
この世界の魔女と黒猫は何で嫌われてるんだ?
クロに聞いたらわかるかもしれない。
わからないことがたくさんあるが、今はエナだ。
エナを助けて謝ろう。そして傍にはもういれない。エナを危険な目には合わせられない。
クロの顔を見ると目を閉じていた。俺も合わせるように目を閉じる、
『ソウルエンター』
「パーミッション」
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