タッタタ三拍子


「タッタタという三拍子が他の馬とは違う。特別に柔らかいんだよ」
 
 文中に出てくるこのセリフ、これがそのまま、九月ソナタさんの作風の説明になる。
 イケメン王子と、ちょっとユニークな頑張る女の子(たまに男の子)
 王道中の王道。
 ありふれたストーリー。
 しかしながら何かが違う。先行レビュー者「みかみさん」の仰るとおり、違うのだ。

 レビューのたびに毎回似たようなことを書いているが、その違いは、九月ソナタさんの童心にある。
 赤毛のアンが童話を書いたならきっとこのようなお話ではなかったかと想わせる、のびやかで、豊かな感性が隅々にきらめく、軽やかな筆致。
 たくさん読書をしてきたことをうかがわせながらも、気難しい文学少女くずれになることもなく、「わたしの好きなお話」を想像の羽根を拡げて、のびのびと書いておられる。

 大好きな絵本を抱いて眠った夜が誰にでもあるだろう。
 お姫さまはお姫さま、王子さまは王子さま。童話の中にいた彼らとの再会。
 北海道で育ち、在米生活が長い九月ソナタさんの紡ぐ物語は、どこか懐かしい。特別に柔らかい。
 陽ざしに白く灯る桜の下を通るたびに青空に吸い上げられていくような気分になった幼い頃の春を、読む人たちに想い出させてくれるのだ。