第5話 オヒトリサマ……って誰?
「ショコちゃん? ショコちゃん? どうしよう。私、こんなことになると思わなった」
「ジュンちゃん? どうしたの? 泣いてたらわかんないよ」
「ショコちゃん、助けて……」
なにがあったかわからないけど、この前ウミちゃんたちと喧嘩した後もニコニコしてたジュンちゃんがこんなふうに泣くなんてただごとじゃないよ。
「ジュンちゃん。落ちついて何があったか話してみて。力になるから」
「ショコちゃん.........。オヒトリサマの話、覚えてる?」
「ジュンちゃんが話してたあの話?」
わたしがジュンちゃんにキレる前に聞いた話だからよく覚えてる。
なんか、ラインにリンクがきて、そこまで聞いたはず。
「うん。今日ね、ラインにね、ひとおりぼうし、って人からメッセージが来てね」
「リンク、あったの?」
「うん」
ジュンちゃん、あんなにオカルト好きなんだからもしそんなラインが来たら喜んでリンク見るのは簡単に想像できた。
「リンク、見たの?」
「うん。なんか、変な動画が流れてきて。怖かった」
やっぱり。
「でも、それだけでしょ?」
「違うの。呪われてしまったの。そのあとまた変なラインがきて.........」
ばかばかしい。
わたしはちょっと安心した。
「ジュンちゃん、それいたずらだよ。よくわからないけどあるでしょ? プログラムみたいなの。そうやって怖がらせようとしてるだけだから」
「そうなのかなあ……」
ジュンちゃんの声にはグズグズ涙が混じってる。
わたしはちょっとおかしくなった。
あんなに幽霊が幽霊がって話してたジュンちゃんが怖いラインが来ると泣いちゃうんだ。
ちょっと笑っちゃう。
「大丈夫だよ。ほっとけば何もないよ」
「ショコちゃんは、そういうの平気なの?」
ジュンちゃんの泣き声はとてもナナミちゃんたちと喧嘩した子とは思えない。
「全然平気! 幽霊なんて怖くないよ」
幽霊なんていたとしてもメリーさんみたいな子なら全然怖くない。
「じゃあ、ショコちゃんも、一緒にリンク踏んでくれる?」
「全然いいよ、わたしがなんでもないって証明してあげる!」
するとラインのメッセージが来てリンクが送られてきた。
URLっていうのかな? なんかアルファベットが沢山書かれてるやつ。
「開いてみて」
「うん。いいよ」
わたしは何も考えずにリンクを見た。
一瞬、画面が黒くなって、YouTubeかなにかの動画が再生された。
どこかの村かな? なんだか古い村。映画のシーンみたいで、村の人もいるんだけど服が古い。
映像もすごい昔の映像みたいで、カラーだけど色がくっきりしてない。音もない。
カメラは一軒の家を映している。
その家にはお札みたいなのが沢山外から張られてる。
一瞬映像が黒くなると、次の映像でその家から誰か人が連れていかれた。
村人数人でひとりを連れていく。
連れていかれた人は白い着物を着てて、白い布みたいなのを被されているから顔が見えない。
なんだか変な雰囲気。
それにすごく聞き取りにくいけど、おじいさんが歌うみたいな声が聞こえた。
「ひぃとおりぼおし、きなそ、きなそ、やらひつわぁむ」
これ、日本語だよね?
なんか、村人たちが歌ってるみたいだ。
動画はまた黒くなる。
今度は薄暗いどこかの映像。
ここは牢屋? なんだか木で作られた檻? 暗くてよくわからないけど、不気味な場所。
だんだん怖くなってきた。
映画なんだろうけど、すごく雰囲気がある。
またおじいさんの声。
「ひぃとおりぼおし、きなそ、きなそ、やらひつわぁむ」
「ひぃとおりぼおし、きなそ、きなそ、やらひつわぁむ」
「ひぃとおりぼおし、きなそ、きなそ、やらひつわぁむ」
「ひぃとおりぼおし、きなそ、きなそ、やらひつわぁむ」
「ひぃとおりぼおし、きなそ、きなそ、やらひつわぁむ」
カメラが檻の中にいる人たちを一瞬映した。
けど、ほんとうに一瞬だから何をしているのかわからない。
そしたら今まで聞いた事ないすごい叫び声が聞こえた。
昔ホラー映画で拷問されて死ぬ人を見たけど、そんなのと比べ物にならないすごい声。
ちょっと、洒落になってないよ!
また一瞬黒くなって、今度は夜の神社が映った。
おお神輿の上にある小さな家みたいなの、お社っていうはずだけど、すごく古い。
今度は声がない。
しばらくお社の映像が流れて、何も起きない。
マジで怖くなってきて動画を消そうとしたその時、お社の扉が開いた。
中から誰かが出てくる。
白い着物みたいな服を着た、髪の長い誰か。
女のひとにも見えるけど、どうかわからない。
だって、その人、顔がなかった。
多分、特殊メイクってやつなんだろうけど、顔にブラックホールがあるみたいに目も鼻もない。
その人は生まれたての赤ちゃんみたいにズルズル、ズルズルって地面を這いずりながらカメラに近づいてくる。
ズルズル、ズルズル。
音はないけど、苦しそうに、ズルズル。
十分に近づいてきたそれは、地面に手を付けて力を込めて、ゆっくりと立ち上がろうとしている。
その何かが声を出した。
「おひと……さま、……かえ?」
ちょっと、無理。
わたしはこれ以上見たくなくて画面を消した。
「ショコちゃん、ショコちゃん、見た? 大丈夫、ショコちゃん」
そういえばジュンちゃんと通話したままだった。
わたしはちゃんとした人間の声を聞いて少し安心した。
よくできた映像だから怖かったけど、結局作り物じゃん。
「全然大丈夫だよ! 最近、AIでああいう映像も作れちゃうらしいよ。すごいよね」
「そうなのかなあ……」
ジュンちゃんはまだ怖さが抜けてないみたい。
話題を変えよう。
「それより大丈夫? 学校、どうしたの?」
「ううん、ちょっと身体が弱くて、たまにしばらく動けなくなちゃうんだ」
わ、新設定。
なんだか難しい病気なのかな。
「けど、少し休めば大丈夫だから。ショコちゃん、ごめんね、怖い話ばっかして、怖かったでしょ?」
ジュンちゃんが謝ってくれた! そういう子じゃないと思ってたから、意外。
「ううん。この前は怒っちゃってごめんね。体調よくなったら遊びにいこうよ」
「うん。ごめんね。それじゃあ、もうわたし休まないと。おつかれさま」
多少気が楽になったのかな。ジュンちゃんの声が明るくなってるからわたしも安心した。
「うん、わたしも寝るね。じゃあおやすみ」
そう言って電話を切った。
ライン通話が終わるといつのまにか新しい友達が追加されていて、未読のメッセージが来る。
相手の名前は『ひとおりぼおし』。
メッセージを開くと、
<おひとりさま、こちきてこ>
……だって。
呆れちゃう。
わたし知ってるんだ。
ラインでリンクを見ると、勝手に友達追加してメッセージを送ってくるプログラムみたいなのがあるんだって。
相手はAIだから怖くもなんともない。
わたしはムカついて意味がないとわかってても返信した。
<全然怖くないから 通報するよ>
返信してスマホを充電して寝ようとしたら、またライン。
めんどくさいなあ。ホントに通報してやろうかな。
<おひとりなるかえ?>
……意味わかんない。
もうブロックしよう。
そう思った時だった。
「お……お…………ぇ」
「…………?」
家に誰もいないはずなのに、誰かの声がした気がした。
テレビは点いてないはずなのに……。
ど、どこか窓が開いてて、そこから風の音がしたんだ。
きっとそうだ。
わたしは家の中に何か原因がないか探した。
絶対、何かあるはず。
そしたらすぐに原因がわかった。
やっぱり窓に隙間が開いてる。
そこからさっき聞こえたみたいな不気味な音がしていた。
タワマンの上の方に住んでるせいで、強い風が吹くと不気味な音がするんだよね。
「やっぱり。気のせいじゃんね」
ホッとして窓を閉めると、音は止んだ。
だけどその時だった。
「ひっ!?」
今度はハッキリと聞こえた。
誰もいないはずなのに、わたしの後ろから誰かの声が。
それはさっき動画でバケモノが呟いていた声と同じだった。
「おひとりさま……なるかえ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます