第9話 不屈の神騎



基地が近付くにつれて異常さが見えてくる。


「なんだ、あれ」

「4メートルはあるようだ」


「それなのにみんな距離を取って……違う。あの巨人が小ぶりな巨人を大量に湧き出させてる……まさか白き巨神ネフスジアブ?」

「違う。白き巨神なら見たことがある。あれは違う」

「……っ」

ゼキは生き証人なのだ。


「みんな!お待たせ!」

「状況はどうなってる!」


「4メートル級のの巨人だ。近付くと攻撃で寄せ付けない!」

カルマが叫ぶ。


「その上、4メートルの巨人が周りの2メートル級の巨人たちを産み出すんだ」

イェリンが弓で支援しながら教えてくれる。


「なら俺が突っ込む」

「ゼキ!?」

「今のチェリクの耐久ならいける。そして攻撃を耐えれば耐えるほど固く、重い一振を叩き込める」

それはまさに今回の巨人にうってつけの力じゃないか!そして言葉が通じるからこそゼキはチェリクの性能をしっかりと理解している。


前方ではルチアとアルジュが応戦している。アルジュはスパイ……のはずなのに、ルチアをアシストしながら戦ってる。


「いや……今はそうじゃない」

あの巨人を何とかしないと。


「ルチア!アルジュ!リンとゼキが帰還した!前衛は俺とリンに交替!」

『了解!』

「ゼキが4メートル級にトドメを刺すまで凌げ!2メートル級を1体でも多く仕留める!」

「ちょ……カルマ!そんなことしたらゼキが……っ」


「ルチア」

「ゼキ?」

「お前はアテナと対話が出来るんだろう」

「そうだけど……」


「俺もだ」

「チェリクも私たちの言葉を?」

「いや。でも確かなことだ」

「待ってよ、そんなの……」


「信じてくれ、チェリクを。俺は信じる。知ってるから。チェリクとネフスジエフは俺とリンと同じだって」

「……あんたは……もう。そんなこと言われたら止められないでしょうがっ!行きなさいよ!後ろは任せなさい!この……リン大好きっ子め!あんたが単なるツンデレだって知ってんだからね!?」

「……後で覚えておけ」

いつもより低いゼキの声が迫力ありすぎなんだが。


ゼキがチェリクの大鎌で攻撃を受けながら4メートル級に突撃を仕掛ける。


「俺たちは2メートル級を!基地には一歩も入れさせない!」

『了解!』

カルマの言葉に総員総力を上げて攻撃を仕掛ける。


「うおおおぉっ!貫け!チェリク!」

『イフシュ』

チェリクの声が響く。

そしてゼキのチェリクが耐久で突っ込み大鎌を突き4メートル級に刺し撃破する。


「ゼキは後退して態勢を立て直せ!残りは2メートル級を一掃!」

『了解!』


そして2メートル級を片付けようやっと……と思った時、突如4メートル級を屠った地点に白く大きな巨神が現れる。


白き巨神ネフスジアブ……っ」

ゼキが驚愕する。

あれが白き巨神ネフスジアブ!?


「ちょ、何だっけそれ!?ネフスジエフとは違うわよね!?」

「とにかく敵だ!」

ルチアの言葉にゼキが叫ぶ。


そして白き巨神ネフスジアブが俺たちに掌を向け何かを放ってくる。


「ネフスジエフ!バリアを展開!」

白き巨神ネフスジアブの光線をネフスジエフのバリアを受け止める。


「うう……っ」

しかし衝撃が大きい!


「それでも……みんなを守るんだ!」

その思いに呼応してか、バリアが光線を白き巨神ネフスジアブに反射する。しかし思った以上に反発が大きい!


「うわあぁぁぁっ!」

神騎ごとぶっ飛ばされる!


「リ――――ン!」

カルマの声が遠のく。


『エグニル』

ルーンの呼ぶ声が聞こえた気がした。神騎の鎧は衝撃では解除され、コアで俺を包んだまま海に落下するのだと思った。しかし衝撃波は来ない。誰かに優しく包まれている。


「……だれ?」

見上げればそこには慈愛の巨神が微笑んでいた。


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