宮司さんのやわらかくも芯のある語り口が心地よく、聞き入りました。人と繋がることで生じる弊害。そういえば「絆」という文字は悪い意味があったような。一般的には良いけど実は…というのが乱れた縁の本性にも似ています。人生の悩みの多くは対人関係、たくさんの乱れた縁を切りたいところですが、宮司さんはよしとしません。その理由を聞いて……なるほど、たしかにそういう考えもあります。我が身を省みるお言葉、しかと胸に刻みました。
人は「縁起」で成り立っているという話があります。心理学上も、人間の人格というものは周囲との関係によってあらわれる、という説があるそうです。悪い人間関係に苦しむことは多いけれど、それがあまりに多ければ、それらを全部すっぱりと切ってしまったら……。自我というものを揺るがされる掌編です。