物心ついた頃には、周りの人たちとの関係が分からなくなっていた。
何がそんなに面白いのか、自分をネタに怒り、嗤い、憐れむ人々。
その中で身体はかじかんで、ぎこちなくなっていく。
冬は嫌いだ。
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報われない半生を描いた前半と、その決着を描いた後半で構成されている作品。
私は前半部を読んで、身体が怠くなった。
なんという説得力だろう。
好きも嫌いもなく、味方も敵もなく、ただただ分からないまま、状況だけが悪くなっていく。
そんな、どうにも出来ない苦しみが表れている。
分からないことを分からないまま受け止めること。
それを認めること。
なんという険しい道なのか。
けれども、その道の先に、春は待っているのかもしれない。