真実の愛について述べよ。
帽子屋猫
第1話
… 巷で噂の、真実の愛とは?
長年勤めてきた学院を、いよいよ定年退職しようとする年齢となり。
それでも。
想いを引き摺られてしまう言葉。
『真実の愛』
思えばある時期からその言葉が流行り始め、
卒業のタイミングで婚約破棄やらなんやらが
当然のように、上演されるようになり。
いつしか美談となっていたりするよね。
僕くらい長く生きててもまだ
理解できていない真実の愛について、
君たちが理解していることに驚嘆しているんだよ。
いやマジで。
だからね。
貴族として、
人として、
君たちはどう感じているのかを
僕に教えて欲しいんだ。
学院としての対応かい?
学院での婚約破棄は現実として無理があると言っても、
いくら才能があっても平民と貴族を同席に置くべきではないと問題提起しても、
いくら平等だと謳ったところで、
卒業してしまえば、学院と貴族社会での常識は
異なるんだと言っても。
今はハラスメントとして訴えられてしまうからと答えは出せなくてね。
結局、決定に至ら無いままだよ。
世知辛いよなぁ大人って。
… はっ。
苦労を知らない君たちが羨ましいよ。
え?
若いからこそ許される?
若さゆえの過ちってか?
あのな。
はっきり言うけど、
それ、黒歴史にしかならんよ?
ふう。
だからこそ問いたい、若人よ。
真実の愛とはなんぞや?
そうさな。
あんまり長くても君たちには
まとめきらないだろうし、
下手に魔法を使って、
世間で流行っている物語のあらすじを
書かれても仕方ないし、
こちらとしてもチェックするのに疲れるので
(秘書が)
140から200字以内でまとめて。
手書きであること。
うそ、おおげさ、まぎらわしい、
そんな言葉は使わないこと。
誤字脱字のチェックはもちろん当然だし、
僕にも読める文字や言葉で書くこと。
提出期限は一週間。
僕の秘書に直接手渡しするように。
期限を守れない人は単位がつかないかもよー。
あ、そこの君。
代筆させてもばれるからね。
僕の秘書、なめんなよ。
おおまけにまけてのレポート1枚程度。
君たちの本気を聞かせておくれ。
じゃあ、今日の授業を始めまーす。
テキスト開いてねー。
今日は光と闇の平等性について。
その、バランスとは?
ひそひそ。
ざわざわざわ。
… 今日も教授は絶好調。
真実の愛について述べよ。 帽子屋猫 @cat_hat-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます