地下鉄で迷子になった日
小松たね
第1話
※このエッセイでは、文章推敲の一部に生成AI(ChatGPT)を利用しました。
本文は作者が作成しています。
地下鉄で迷子になった日
冷たい風が吹く 2025 年、金曜日、ハロウィンの日。
その夜には MLB ワールドシリーズ第 6 戦 ― トロント・ブルージェイズ対ロサンゼルス・ドジャース ― が午後 8 時から始まる予定だった。
ブルージェイズのジャージ姿の人々と、ハロウィンの衣装をまとった人たち。
その奇妙な組み合わせが、地下鉄や球場の最寄り駅であるユニオン駅にあふれていた。
私は観戦にも仮装にも参加せず、ただ VÍA で 1 時間ほど離れた息子家族の家へ向かう夫を見送りに来ただけだった。
ただそれだけのはずだったのに、このあと思わぬトラブルを起こしてしまう。
駅構内では観戦客の流れとは逆方向に進む必要があり、ぶつからないように歩くだけでひと苦労だった。
見送りの報酬としてお寿司を買って帰るつもりでいた。正直に言えば、お寿司を買いたくて見送りに来たのかもしれなかった。
フードコートが見当たらず、雑踏の中にいた紺色のユニフォームのセキュリティガードに尋ねた。私は方向音痴なのだ。
「このまままっすぐ行くとコーヒーショップがあるから、そこを右へ。あとはずっと進めばいいよ」と教えてくれた。
教えてもらったようにそこまで難なく行けた。
案内板で事前に確認していた寿司ショップを頭に浮かべながら、適当に歩いていると、運よく見つけることができた。
サーモン多めのお寿司を買い、紙袋の中でひっくり返らないように注意しながら帰路についた。
この日はストーリーを書いている最中で、私はメインキャラクターの気持ちになりすぎて、頭はずっと物語の中にいた。
その状態で地下鉄に乗ってしまったことが、トラブルの始まりだった。
トロントの地下鉄には、アルファベットの U のように南北に走る路線(南北線)と、その U 字を横切る東西線がある。
VÍA の駅は、その U 字の下の丸い部分。
南北線と東西線が交差する駅は 2 つあり、ここでは便宜的に A 駅と B 駅とする。
私はユニオン駅から北へ向かい、左側にある A 駅で乗り換えた。
そこで東西線の「西行き」に乗ったつもりだったが、頭が物語の世界にあったため、実際には「東行き」に乗ってしまったようだ。
アナウンスを聞いた瞬間、背中に冷たいものが走った。
交差駅から 2 つ離れた駅で、私はようやく乗り間違いに気付いた。
パニックになり、「ついに私はボケてしまったのか」とさえ思った。
ただ一つだけ理解できたことは、「このまま乗っていると家からどんどん離れてしまう」という現実だった。
まず地下鉄を降りる。それしか頭になかった。
そして「これは西行きか」と何度も確かめて、ようやく乗り直した。
道中では、どこで間違えたのかばかり考えていた。
普段は分析が得意だと思っていたのに、実際は大したことはなく、パニックには驚くほど弱かった。
やっとユニオン駅から、正しく東西線に乗り換える駅に戻ることができた。
振り出しに戻った気分だった。
混乱した頭のまま、ようやく家にたどり着いた。
夫のいないアパートの鍵を開けて中に入る。
無事に帰れた安堵と、精神的なショックが入り混じった気持ちで、お寿司を食べた。
これからは外にいるときには、ストーリーのことを考えないようにしよう。
地下鉄に乗るときは、路線図だけを考えることにすると決めた。
地下鉄で迷子になった日 小松たね @marplecci
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