第10話
季節は巡り、春が来た。
大学卒業してから1年、私は何か変われただろうか。
実感はないが、ありがたいことにバイトから正社員へならないか、と勤務先の店長から打診があった。
一も二もなくなります!!と返事をし、今年度から念願の正社員だ。
両親は喜んでくれた。
転校生にも連絡すると珍しくお祝いをしよう、との返事が。
正直、悪い気はしない。あいつとも長い付き合いだ。
お店はあいつが決めてくれるらしい。
楽しみだ。
当日、指定された待ち合わせ場所で待ってるといつか私と選んだ服を着たあいつがやってきた。
待ち合わせの30分前なのに律儀なやつだ。
あいつは車でくると言ったが私が断った。せっかくなら一緒にお酒でも飲みたいからだ。
タクシーで目的地まで向かう。
車を断った手前、タクシー代を出すと言ったが、あいつはお祝いだから、と言って譲らなかった。こういうところは昔から頑固だった。
予約してくれたお店はネットでも評判のお店だった。
もちろん料理も美味しいしお酒も進んだ。
あいつは就職おめでとう、と言ってくれた。
会話も弾み、思い出話にも花が咲く。
思い出とはいつまでも色褪せず、振り返るからこそ色づく物だ。現在より、未来より、過去の方が鮮やかで美しい、そう思っていた。
あいつに告白される今日までは。
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