八木郷局員の手記




本当にこの場所は、国が国のために、国民のために運営している場所なのか。


国立事象研究局。通称事象局。設立年は不明。過去の記録を漁ると、おれの権限で見れるものに限る場合、室町時代の記録が一番昔の記録。


少なくとも、室町時代には前任組織か事象局かは分からないが存在している。



事象局の構成員は局員と協力者に分けられる。

下記、自分用のメモ。


ケース1、一般人から入局

三嶋悠斗や神崎綾乃などが該当。

三嶋悠斗の場合は借金のカタにされ、金と引き換えに入局。神崎綾乃は協力者を提供し続けたことを評価され入局。

他ルートでの入局も確認済み。口減らしや事実隠蔽、無戸籍による社会的地位獲得方法の1つとして使用されていると推測できる。


ケース2、裏口入局

夏村花火などが該当。

分かりやすいよう、裏口というワードを使っているが想像する裏口入学のようなものではない。

身寄りのない子供を育成し、強力な対策班として配属する。子供は高校を卒業後、事象局に配属され仕事を行う。言わばエリートとして育成された人材。

人格に難のある人物が多い。事象局に対しての思い入れはなく、やるしかないからやっている、というスタンス。


ケース3、家系からの紹介

伊勢信三郎などが該当。神職、僧侶など、古来より自然や妖怪、霊や神に近い人間の血筋から排出される。長男は基本的には局員にならず、次男や三男などが局員として入局している。

対価としての要求は無く(本人の意思では無い)、人のために役立つことをしている。対策班にも配属されるが、裏口入局組のような工作はしない人が多い。



妖怪という呼称の通り、国立事象研究局が認定、発見するものは人智を超えた発生法や力を持った生き物のことだ。


事象局では妖怪というものは生き物では無いとされているが、その地に根付き、今も尚生活している謎の生き物の総称が、妖怪。

おれ個人の調査としては、妖怪という生物は、生物だと結論付けた。


人に知られないように、人が行ったこと、人が見間違えたことや聞き間違えた事にして、存在を抹消する。妖怪のせいで起きたものを人の仕業にして、認識を無かったことにする。


認識を無かったことにするためには、どんなことをしても良い、という文言がマニュアルには書いてある。


調査や検証、工作で行われる犯罪行為は黙認される。何件も見てきたが、自殺教唆、死体遺棄、放火、精神的苦痛や肉体的苦痛を与えることは普通にある。それで精神を病むやつだっているし、慣れ切ってなんとも思わなくなるやつもいる。



事象局員内では、平然としているやつの方がおかしい。



協力者というのは、他人から生贄として事象局に差し出されたやつのことだ。


小学生の時にイジメをしてた、子供の頃に小動物を殺した、闇取引、人の人生を壊して平然と生きている。要するに、人から恨まれているやつが事象局に来るタレコミによって選別され、どんなことをしても許される肉の素材になる。


偽装のための死体になることは当たり前、調査のために人命の犠牲が必要になった場合の犠牲者、大きな妖怪を鎮めるための贄としての役割なんかもある。

使われる時以外は普通の生活を送っている。仕事に行ったり、学校に行ったりしている中、必要になった場合、事象局に技術提供をしている人物によって連れてこられる(誰かは不明。要調査)。


周囲の人間への記憶処理も行われ、初めからいない人間として扱われるようになる。ただし、タレコミを行った人物と我々局員には影響が無い。



ここ事象局は外界とも断絶されている。ニュースやテレビなんかはあり、外の情報は入手できるが、外の人間とは会えない。東京都にある施設だが、山奥のさらに奥にある薄暗い場所だ。


外出にも許可証が必要で、GPSも付けさせられる。理由付けをするなら、いついかなる時に妖怪の被害に遭うかも分からないため、とはあるが、逃げ出すのを防ぐためだろう。

個室や待遇はいいが、囚人のような生活をさせられている。



あとは隔離所について。

閉じ込めている。それだけしか教えられていない。要調査。




最後に、局長の淡路裕史について。

プロフィール

淡路裕史、男、47歳。

都内有名大学進学、卒業。卒業後はすぐに当局へ入局の後、調査員として働く。実績が認められ、役職を着々と上げて局長へ登り詰めた。


淡路裕史の経歴には、おかしいところは何も無い。事象局局長はだいたい10年単位で変わっており、現在淡路裕史の継続勤務歴は4年。残り勤務年数は約6年と見られる。


ただ、過去の記録を漁ると、このという人間は、過去にも大量にいた事が確認された。


1873年から1881年、1934年から1943年、1987年から1999年、そして現在の淡路裕史の、計4人が確認されている。


世襲制や家系のようなものかも知れないが、おれの知る限りでは淡路裕史は一般人からの出であるはず。


さらに、他の過去の局長の情報も漁ると、何十年かに1回、同じ名前が使われている。名前をローテーションさせているように見える。



もしかしたら、国立事象研究局局長という役職を持つ人間は、過去に1人しかいないかもしれない。








記録確認者からのコメント

よくかけました。えらいこ。はなまるをあげましょう。


確認者:淡路裕史





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