俺を追い出したいのはわかったから方法を考てくれ!

黒薔薇サユリ

第1話親の再婚相手の子と同居!?

人生何があるかわからないものだ。何も考えずに宝くじを買ったら、偶然3億当たることだって、何の因果か推していて引退した元AV女優と同じ職場になることだってある。それは、俺にもあるもので高2の夏。母に酷い捨てられ方をし、軽い女性恐怖症になっていた親父が再婚をした。


「てことで、圭一けいいちこちら空星都そらぼしみやこさんと、その娘さん方」


昼の12時。親父が俺の目の前にいる4人の軽い説明をする。都さんは、見た目若く見た感じは物ごしが柔らかそうといった印象。


「圭一くん、だよねよろしくお願いします」

「お願いします」

「それで、この子たちが私の娘の――」

「いいよママ、自分で言うから」


都さんの話をさえぎり、3人の真ん中の獅乙しおさんが話し始めた。


「空星獅乙です、それでこの子が美乙みお

「よろしく」


獅乙さんが紹介した、美乙さんはやる気なさそうにそう俺に言った。というか、さっきからスマホいじってるけど、場違いすぎる。


「すみませんね、美乙ちゃんマイペースなもので」

「別に別に気にしてませんよ」


都さんから説明がはいり、親父が気にしなくていいと返す。少しは、気をつうとこな気もするけど。


「それで、私が獅乃しのです」


出席番号21番獅乃さんが、俺を見ながら自己紹介をする。


「それじゃあ、一応俺も高宮たかみや圭一です」

「ん?」


俺を見ていた獅乃さんが、俺が自己紹介をすると首をかしげだ。


「みんな知ってると思うけど、僕と都さんは再婚することになったんだ。だから、今日から皆兄妹だ」


届出はまだ出さないけど、と笑いながら言う親父。どうやら、出すのは俺ら4人が自立してからとのこと。


「再婚はわかったけど、住む場所はどうなるだ?」

「それなんだが、悪いけど子供達4人で暮らしてくれ」

「「「え?」」」


サラッと親父が言った言葉に、3人のが勢いよく立ち上がる。


「ママ嘘でしょ?」

「ほんとよ。康平こうへいさんとそう話してたもの」

「だって、私達のことママ知ってるでしょ」

「そうだけど。私達も新婚気分味わいたいじゃない」


ごもっともなのかもしれないが、なかなか受け入れにくいぞ。見たところ、美乙さんはわからないけど、この2人は何か抱えているようだし。俺は、まあいいかという感じで、割り切れなくはないけど。


「大丈夫、もし圭一が何かしたなら遠慮なく僕に言って。すぐ退去させるから」

「ちょっと待った、その場合俺の住む場所はどうなる」


聞き捨てならないことを聞いて、すぐさま疑問点をぶつける。


「おばあちゃん家だ」


ばあちゃんの家。今俺の住む家から、電車をそこそこな数乗り継げば行くことのできる田舎。もしそこに住むことになれば、学校の往復で時間がいっぱいいっぱいになって、遊ぶこともままならないだろう。


「空星さんの家は、どこですか?」

「圭一くんの高校まで、電車で30分ぐらいね」


よし、絶対にそこに住んでやる。なんなら、今の家より少し近いし。


「でも、ママ」

「いいじゃない、4人とも同じ高校で仲良く登校できるのよ」

「ああ、やっぱり!」


都さんが高校の話をすると、獅乃さんが声を上げ手を叩いて俺に指を指さした。


「圭一くんだ」

「獅乃ちゃん知ってるの?」

「うん。同じクラスでしょ。こんな偶然あるわけないと思ってたから、名前と顔見ても除外しちゃってたよ」


それはもう確定でいいだろ。


「しかも、出席番号2個後ろだしね」

「気付いてたなら言ってよ」

「獅乃ちゃんが知り合いなら、ちょうどいいわね」

「う〜ん。でも、私もちょっと」


俺のことに気づいても、反対は反対らしい。


「そうだよママ、男女が同居だなんて、何があるか」


獅乙さんが顔を赤くしながら、講義をする。


「少し我慢してくれないかしら。もし怖いなら、圭一くんを去勢するしか」


冗談なのはわかるけど、サラッと怖いこと言うから、背中ながゾワッとしたぞ。


「賛成!それ賛成!男は去勢すれば、そういうことしにくくなるって聞いたし」


詳しいな。


「それは冗談よ」

「わかってるけど」

「大丈夫よ。圭一くんのことは、康平さんからよく聞いてるから。そういうようなことする子じゃないわ」


獅乃さんと獅乙さんの手を取り、2人を安心させようとする都さん。聖母のような母性を感じる。


「ママがそこまで言うなら」「お母さんが言うなら」


都さんの説得に2人も心を決めてくれたようで、胸をなでおろした。


「美乙ちゃんもいい……寝ちゃったわね」


話もつき、全員が美乙さんの方に視線が向く。そうすると、美乙さんはすやすやと眠ってしまっていた。ほんとにマイペースだ。



唐突な再婚の報告から数週間ほど、あれよあれよと話は進み、引越しも完了。いやいやそうながらも、作ってもらったご飯は美味しかった。都さんの使っていた部屋を貰い、大きなコルクボードも設置したし今日はもう寝よう。


「け、圭一」


そろそろ寝ようと軽く準備していると、部屋の扉がノックされた。声の主は獅乙さんだろう。


「どうかし――」


扉を開け獅乙さんの姿を目に入れる。扉のすぐ前にたっていた獅乙さんを見て、俺は言葉を失った。なんせ、獅乙さんはレースの薄いキャミソールを着て、立っていたからだ。


「は、入るぞ」


顔を少し赤くした獅乙さんは、俺が何も言わない中部屋に入ってきて、部屋の明かりを消した。その代わりに、カーテンを開き月明かりという照明を付けた。


「えっと、なんの御用で」

「す、好きにしていい、ぞ」


後ろ髪を掴み顔を隠しながら、俺にそう言い放った。つまりは、そういうことだろう。獅乙さんは、俺を追い出そうとしている。夜這いという方法で。ここで俺が手を出せば、即刻退去辛い学生生活の始まりだ。


「とりあえずこれ、被って」


獅乙さんのやりたいことがわかっていても、どうしても推定Cカップの上乳が目に付くため、深呼吸をしてタオルケットをかける。


「な、何もしないのか?」

「何か、とは?」

「その。何でもしていいと言った私を、あれやこれやな手を使って、朝まで揉みくちゃにした後、行為中に撮影した写真で私を脅して、学校でもそういうことを」


なかなか、ハードなプレイを想像しているようで。


「何もしないよ」

「遠慮しなくていいんだぞ」

「遠慮とかじゃなくて」

「べ、別に私は気にしないぞ、お前がそのフライング気味でも」

「ちげぇよ」


偏見をぶつけるようで悪いけど、獅乙さん女子だよな。さっきから話が、下ネタチックだぞ。このここから言えるとすれば、獅乙さんはムッツリの可能性があるな。


「い、一応言っておくがこれは、私がされたいとかしたいって訳じゃないぞ。仕方くだ、仕方なく。2人のためにも」


嘘と本当が混じってる気がする。というか、何も言ってないのに保身するあたり、ムッツリ確定でいいかもしれないな。まあいい。


「風邪ひくから、着替えた方がいいんじゃない?」

「い、いや引かないぞ」


ムードぶち壊しだな。ずっと居座られても、困るし都さんには申し訳ないが手を取らせてもらおう。


「おい。圭一、何してるんだ」

「暑いから冷房の温度を下げようかと」


冷房のボタンを連打して、温度をどんどん下げていく。そうすると、さっきまで静かに空気を流していた冷房は、すごい音を立てて稼働し始めた。


「お、おおい。温度どうにかしろ、電気代が高くなるだろ」


タオルケットを体に巻き付け、震えながら俺に言っている。


「でも、この部屋2人だと暑くて暑くて」

「わ、わかった。おぼえてろよ」


そう捨て台詞を吐いたムッツリ獅乙さんは、俺のタオルケットと共に部屋を勢いよく出て行った。


「持ってくなよ……」


しょうがない寒くしたのは俺だし。今日は、冬用の上着でもかけて寝よう。ダンボールの中から、冬用のダウンジャケットを取りだし、冷房の温度を下げ布団に入った。まさか、獅乙さんがムッツリだったとは、追加追加。



「……くん。圭一くん」

「あ、おはようございます」

「おはよう」


朝、7時30分。獅乃さんに優しく体を揺さぶられ、静かに目覚めた。


「ところで獅乃さん」

「なぁに?」

「その、箱は一体……」


俺が指したのは、さっきから獅乃さんが前かがみになって持っている、「?」マークの書かれた箱。


「気づいた?手、入れてみてよ」


俗に言う箱の中身はなんだろな、てやつか。なぜこの家にあるのか、気になるとこだ。まあいい少し怖いけど入れ――

一点だけ、不可解なところに気づき俺の伸ばそうとした手が止まる。


「獅乃さん」

「どうしたの?」

「なんで、右側の服だけ上がってるの?」


というか、箱の上に服が乗っかっている。


「チッ……気づくなよ」

「え?」

「あ、ああなんでもないよ。ほら、早く手入れちゃって。この中の物がなにか当てたら、ご褒美あげちゃう」


なんかよもや、あの獅乃さんから聞こえるとは思えない声が聞こえたけど。


「さ、早く入れてよ〜。期間限定だから、終わっちゃうよ?」

「やめておこうかな」

「チッ!」

「んー?」


明らか今の獅乃さんは、悪そうな顔をして舌打ちをしたぞ。もしかして、いやないない。クラスでも、お姉さんキャラとして立ち回っているあの獅乃さんだぞ。


「お前みたいなのは、馬鹿正直に手突っ込んどきゃいいのになんで勘が鋭いんだよ」


あ、ここまでされちゃ間違えようがない。獅乃さんもしかしてくても、と言うやつかもしれない。


「えっと、獅乃さん?」

「なんでもないよ。そっか、圭一くんは見ないんだね。もうこんなチャンスないからね」


最後にたたみかけるように、ラストセールみたいな感じで、俺の興味を引く獅乃さん。とはいえ、何となくこの箱の中身は予想付いている。手を入れた瞬間、俺の負けが確定する中身だ。そして、推定Hカップだ。


「あと、起こしてもらってで悪いんだけど、着替えたいから部屋出てもらっていいかな?」

「わ、分かったよ。ケッ!」


ここまで来たらわざとだろレベルの言葉を残し、獅乃さんは消えていった。腹黒確定でいいな。とはいえ、あの優しい獅乃さんが腹黒か、人ってわからないな。


「おお!結構うまいな」

「それはどうも」


俺の作った料理に獅乙さんが、舌鼓をうつ。


「ところで、何も入ってないだろうな」

「俺をなんだと思ってる。何もねぇよ、獅乙さんが一番わかってるでしょ」

「一応、な」


4人分ともなると、少し骨を折ったけどお眼鏡にかなったようで何より。


「にしてもお前、なんでこんなに料理が上手い」

「作ってたからな。前の家で」


いつからかは忘れたけど、仕事帰りの親父が料理に手を焼いてるのを見て、できるだけ手伝ってやろうと思って、料理の勉強を少しづつ始めたのは覚えている。それもあって、家の料理当番は俺の割合が高かった。


「ところで、こん中だとどれが一番美味しい?」


俺が作った料理は、甘めの煮物と味噌汁によだれ鶏計3つだ。


「私は、煮物だな甘い味付けが好みだ」


獅乙さんは、甘い味。


「私はこの鶏肉のやつかな。結構、やみつきだから」


獅乃さんはおそらく旨味。


「美乙さんは」

「全部おなじ」


美乙さんは、不明。


「急に怖いな。データ収集か?」

「い、いやそんなんじゃないけど」

「舌から取り入ろうたって、私達はお前を信用しないからな」

「それは知ってる」


昨日の夜朝といい相当嫌なのは、嫌でも伝わってくる。



「ふー」


それなりに料理にも満足して貰えたし、満足満足。


「圭一、くん」

「えっと、美乙さん?」


なんのとなく理由はわかる気もするけど、美乙さんが来るとは。俺の見立てだと、美乙さんも俺のことはよく思っていないながらも、触れる気がないからそういうのは2人任せかにするものかと思っていたから、俺の部屋に来たのは意外だ。


「はいはい。どうかした?おお」


部屋の扉を開け美乙さんと話そうとしたら、美乙さんはずかずかと部屋に入ってきて、俺のベッドに飛び込んだ。


「それで、なにか?」

「好きにしていい、よ。私、何もしないから」


欠伸をしながら気だるそうに、俺へそう伝えてきた。


「美乙さん、ほんと?」

「お姉ちゃん、達が嫌そうだし、私も少し嫌、だから」


思惑伝えちゃってないか?


「とりあえず、好きにしていい、よ。眠りを、邪魔しなければ」


仰向けになったパジャマ姿の美乙さんは、欠伸をしてから寝ようとそのまま目を瞑った。寝られると俺が困るんだけどな。とりあえず、これだけは言えるな。


「打ち合わせをしろ!」

「うるさい……」

「昨日見たんだよ」

「AV?」

「違う!」


美乙さんの反応からして、3人の中で俺を追い出そうという話し合いをしたわけではないみたいだ。


「とりあえず美乙さん、出てって。俺、寝れなくなるから」

「じゃあ立たせて」

「何も無い?」

「面倒なだけ」


美乙さん、マイペースではあるけど、無気力系の1歩先を行ってるな。ここまでとは。


「じゃあ触るよ」

「なにも、言わないよ」


面倒くさがりな美乙さんをお姫様抱っこで持上げ、そのまま立ち上がらせる。


「ありがと。ところで、これ、なに?」


立ち上がった美乙さんは、俺の部屋にある布をかけたボードに近づいた。


「なんで、布かけてる、の?」

「触るな!!」


美乙さんが布に手をかけた瞬間、俺は即座に大きな声が出た。それに美乙さんは、驚いた顔をし猫が逃げるように壁に引っ付いている。


「……ごめん」

「俺こそ大声出してごめん」


まじとっさだったから、腹から声が出た。それには美乙さんも、すっかり萎縮してる。


「と、とりあえず部屋からご退出お願いします」

「グラビアブロマイドは、黙っておくね」

「勘違いです」


美乙さんの考え方的にこれは偏見な気もするけど。


「それじゃ、おやすみ美乙さん」

「うん」


眠そうに目を擦りながら、美乙さんは俺の部屋を出ていく。

この三姉妹は、相当な男嫌い、けれども俺はばあちゃんの家に住む訳には行かない。自由な放課後のためにも、負ける訳にはいかない。ま、あのずさんさだと、暫くは大丈夫そうだけどな。


*

大きなコルクボードの前に立つ圭一は、ボードに貼られた明らか正規の方法で撮られてあいであろう写真と相関図を眺め自慢げな鼻息を漏らす。


(たった2日でこの情報量、もともとあの三姉妹には目を付けてたけど、予想以上だ。ちょっと斜め上すぎたけど)


相関図を見る。相関図に貼られた、三姉妹の写真にそれぞれ情報を書き込む。


空星獅乃:高校では、みんなの頼れるお姉さん。素は腹黒。

空星獅乙:正義感の強い子で姉妹思い。めちゃムッツリ。

空星美乙:マイペース。極度の面倒くさがり。あまり掴めない。


「こんなとこだな」


(とはいえ、さっきはヒヤッとした。美乙さん見ようとするんだもんな。やっぱり、これはやめた方がいいか。前の家じゃ、父さんと2人だけだったけど、今は問答無用で部屋にはいられるもんな)


ボードの前で考える圭一は、ニヤリと笑う。


(まあ、雰囲気が壊れるぐらいなら安いものだ。それにスマホなら、書き込みがしやすい。とりあえずコルクボードは、早めに処理をしてしまおう。ああ、人って面白い)


ニヤケ顔で笑う圭一は、コルクボードの写真を撮り布をかける。


高宮圭一:趣味、人間観察。好きなモノ、人の周りに取り巻く環境、個人情報。癖、目をつけた人に対して、ストーカーに近い行動をし探偵ばりにその人の情報を収集する。


(あの三姉妹は、おそらく過去に何かあって今みたくなっている。これは、深堀しがいがある。都さんに聞くのは、最終手段として、しばらくは俺の力で収集だ。ナイス!親父)


浮き足立つ足取りでベッドに入る圭一は、幸せな顔をして眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺を追い出したいのはわかったから方法を考てくれ! 黒薔薇サユリ @kurobarasayuri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画