第29話 覇王祭の景品は
「それでは、今から冒険者について説明する。既に知っている者も居るかもしれないが、この学院の卒業条件の一つに、冒険者ランクがCであるというものがある。」
冒険者ギルドにもどって
「ここでは詳しい説明を省くが、Cランクといっても君たちは学生。時間が取れないこともあるだろう。そのために、ジャンプアップ登録という制度がある。通常Aランク以上の誰かの推薦が必要だが、今回は特別にそれを免除し、魔法学院の学生ならジャンプアップ登録が推薦なしで受けられる。
ただし、当たり前だがジャンプアップ登録をするには相応の実力が必要なため、試験を突破しなければCランクへのジャンプアップ登録はできない。また、学校からの免除は一回限りだ。
地道に冒険者稼業をやるのも、ジャンプアップ登録でCランクという称号だけ持っておくのも自由だ。ただし、学院としてはしばらく冒険者稼業をすることを推奨する。自分の実力を過信して試験を受けないことだ。」
どうやら学院の免除制度によって受けられるのは一回限りのようだ。僕はかなり幸運だったようだ。冒険者のことを意識しなくてもいいからな。まあ、冒険者活動は続行するが。
「先生、私は栄えあるローレンス伯爵の息女ですわよ?そんな高貴な私たちにいじ汚い冒険者と同じことをしろというのですか?そもそも、この学院に平民が入っていること自体が烏滸がましいのに、特待生としての入学、ましてや名誉ある七魔戦に出場させるなどという愚行をこの学院はしたばかりだというのに、まさか高貴な血を引く私を魔物などとい雑魚と戦わせようとは全くお優雅でもありませんし、そんなことは平民どもにやらせておけばいいのですわよ?オーホッホッホ」
「その通りですわね、ミラ様」
「全く、この学院の一番はミラ様だというのに…。あんな雑魚の平民を増長させて…」
「ようやくこの学院が覇者の地位を取り戻したのだから、不必要な平民など切り捨てればよいものを…」
クラスメイトのミラさんが発言した。ここまで来ると笑えてしまう。ミラさん、いいのか?そのままだと断罪ルートに入るぞ?まさか現実に悪役令嬢が居ようとは…。しかも伯爵とは、なんともビミョーな…
「えーっと、ミラさんとその愉快な仲間たちさん?この学院が覇者になれたのはテト君がいたからっスよ?」
アクセル君、庇ってくれるのはうれしいが、もう少し周りを見ろ。お優雅なお嬢様(笑)が殺気立っているぞ?
「はっ、落ちぶれた男爵ごときが私たちを評価しようとは。底が知れますわよ?それに、あんな平民がいなくとも生徒会の方々がいらっしゃれば簡単に勝てましたわよ?」
「いや、でも、それってあなたたちの評価には関係ないっスけど…」
アクセル君、素なのか?その空気読まないスタイルは。面白い人だな。
「そこまでにしておけ。ミラ伯爵令嬢。そもそもこの学院内で身分は全く関係ない。あるのは魔法の実力だけだ。魔法の実力に関しては学年試験でわかることだ。それに、身分の話を持ってくるならテトはテト=スプライト魔法伯爵。国王に直接意見できるという意味では公爵と同等だ。」
そういえば、僕って爵位を授かっていたのか。自分でも忘れていたな。
「それに、お前たちは入学試験で不正をした可能性があるとの報告を受けている。学年試験でわかることだが、気を付けることだな。」
なんかクリスタ先生怒りモード。まあ毎日毎日こんなことをやらされれば怒るよな。
「さて、話がそれたな。先ほども言ったが、自分の実力を過信して試験に挑まないように。このSクラスなら純粋な魔法の腕を考えれば簡単にCランクになれるはずだが、魔法の腕が勝敗に直結するとは考えないことだな。次に、学年試験に関してだ。」
この学院にも試験があるのか。生徒がざわつき始めた。
「ああ、もうすぐすべての説明が終わるから落ち着け。学年試験については告知だけだ。じきに試験が行われる。内容については例年通り魔力量の測定、それとお前たちが入学試験時にやった的を破壊するものだ。ただし、入学時よりは結界が強い。授業にしっかりでて成長できているものは問題ないはずだ。もちろん、授業の出席率は試験には関係ないがな。それと、もう一つ試験がある。ただし、この場では明かせないな。公平性を保つための措置だ。」
まああの試験ならそこまで苦労しないだろうが、最後の意味深な言葉が気になる。例えば、公平性を保つとだけ発言していたことだ。つまり、この「公平性」とは
「これで最後の連絡だ。今回の学年末試験や冒険者に関しては今回の本題ではない。どちらもこのSクラスに所属する生徒なら簡単にクリアできるはずのものだからな。」
横目でミラさんの顔が心なしか強張っているのを見ながら話を聞く。
「では、今回の本題についてだが…、それは、覇王祭だ。」
「覇王祭?それって、十年前に開催されたってやつっすか?」
覇王祭とは、知らないものが出てきたな。それにしても、アクセル君は相変わらず空気を読まないな。
「それを今から説明するんだ。黙って聞け。覇王祭について知らない人もいるだろう。まず、覇王祭は端的に言うと世界最強の決定戦だ。覇王祭が開かれる条件はシンプルで、SSランク冒険者三人以上が賛成するか四大強国の王のうちだれか一人が賛成することだ。」
世界王者決定戦、か。出てみたいな。自分の現在の立ち位置がわかるだろう。
「覇王祭の内容は、ひたすらのバトルだ。ちなみに魔道具や武器は持ち込み可能。トーナメント戦で全国から集まった猛者たちが競い合う。ちなみに開催場所は世界最大の都市プロメテウス。そこにある古代のコロシアムで行われ、中で受けた傷はコロシアムの外に出た瞬間全てなくなる。だが、中で傷が治ることはないし、死んでしまえば生き返ることはない。そして、覇王祭において相手を殺してしまったとしても罪には問われない。殺される前に降参しなかったものが悪いのだからな。だが、景品は破格だ。最低で白金貨千枚だ。賭けのレートによっては何倍にも膨れ上がるな。そして、次に、これが一番大切なのだがな、エーテルが授与される。」
エーテル?僕の知らないものが出てきたな。クラスがどよめいているが、何か貴重なものなのかな?
エーテル、か。火、土、水、風の四元素以外の、第五元素エーテル。詳しくは知らないが神の世界にあると言われてる。でも、この世界に神はいないし、単純に超強力な物質ってことか。
僕は最高級の金属である
ネアンライト。それは現在僕が見つけた魔法鉱物の中で最も貴重かつ優れた物質だ。前々から少しずつ魔力を流し込んで魔化しているのだが、このネアンライト、物質としても魔法金属としても密度が濃すぎる。魔力はある程度の圧力をかけないと浸透しないのに、密度に合わせた精緻な魔力操作が必要になってくる。唯一の救いは魔力許容量が存在しないかのようで、魔力の入れすぎによる飽和にならないことだ。そして、このネアンライトの本質はそこではない。ネアンライトは、周囲にある魔力を強引に奪うのだ。しかも、僕の魔力を吸収した状態で魔化したため、僕の魔法に共鳴するのだ。そして、
その作業がそろそろ終わりそうなので、界雷剣と紗奈の切り札を一から作り直そうと考えているのだ。
その剣は
ちなみに、紗奈が作るのは焔魔剣レーヴァテインだ。
「皆が知っての通り、エーテルは非常に貴重かつ素晴らしい物質だ。言うまでもなくお金で手に入る者ではない。それこそが覇王祭の真の景品であると言えるだろう。
この覇王祭の出場条件は、冒険者ランクAランク以上か、二つ名持ちか、推薦のどれかのみだ。ちなみに、この学校には推薦枠が三枠届いている。推薦についてはトーナメントの上位三名に与えられる。開催日は五月中のどこかだ。詳しくはまた。
それでは、話は以上だ。午後の授業はないため、寮に戻ってゆっくりするなり、冒険者ランクを上げるなり好きにしろ。それでは、解散。」
話を聞き終わった後もボーっとしていると、アクセルが話しかけてきた。
「なあ、テトもやっぱり推薦を目指すのか?」
「いや、僕は二つ名持ちってところに当てはまるから出ないよ。」
少し偉そうにも聞こえるが、仕方ないだろう。
「そうか。あーよかった。」
「どうかしたのか?」
「俺の家って男爵家だからさ、結構お金が足りないんだよね。だから、覇王祭に出たくて。」
「そうなのか。」
爵位って面倒だよなぁ……
「それじゃ。」
「ああ、またな。」
アクセルも大変だな。だが、このSクラスにいるということは、かなり才能があるのだろう。僕は科学の知識のゴリ押しだしな。
「テトくん、早く行きましょう?」
「あー、ごめん紗奈。今行く。」
後ろから紗奈に声を掛けられ、席を立つ。
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