第28話 シドとサリーの冒険者登録‐④

声を掛けられ後ろを振り向くと、アイリスさんが立っていた。


「アイリスさん?」

「やっぱりテト君だあ。」


こんなところで会うことになるとは。


「テト君、冒険者登録しに来たの?」

「いや、僕の登録は終わってるから、シドとサリーさんの冒険者登録と、レオのパーティー登録をしに来たんだよ。」

「へー。じゃあまだFランク?」

「いや、ジャンプアップ申請をした。昨日もらった勲章を使ってね。」


どうやらあの勲章は結構すごいものらしい。


「あはは、濫用は良くないよ。そうだ、ボクをそのパーティーに入れてくれない?」

「え?アイリスさんのパーティーは?」

「私はソロでやってきたからね。ちなみにAランク。」

「すごいね。ソロでAランクか。」

「俺は”聖守護天使”アイリスをパーティーに入れるのは賛成だ。光魔法でも治癒ができるなら治癒師ヒーラーがいたほうがいいだろう。ただでさえこのパーティーは盾役タンクがいないし、単純に”聖守護天使”アイリスは強いからな。」


非常に理にかなった意見だ。かなりメリットがあるな。みんなも特に異論は内容なので、パーティーに入れるとするか。


パーティー加入の申請をした後、適当な依頼を探す。


選んだのはAランクの依頼で、王都近郊の山で目撃された黒い影の調査及び可能なら討伐。報酬は調査なら金貨一枚、討伐なら金貨三枚。

受付に持って行って依頼を受理してもらい、ギルドから出る。


「それじゃ、飛ぶよ。」

「え⁉」

「大丈夫大丈夫。シドとレオ以外は丁寧に運ぶから。」

「「おい」」


シドとレオを無視して魔法陣を描き、最近作った複数人用の飛翔フライを発動する。


「さて、それじゃ森に入ろうか。」

「おーけー。」


緋璃刀を抜いて森に入る。


「サリーさんとかレオって得物持ってる?」

「私は持ってますよー。」


サリーさんが巨大な槌を取り出した。


「それ?本当に?」

「そうですよー。」


どうやらサリーさんの得物は巨大な槌のようだ。


「レオは?」

「俺は剣だぜ」


そういってかなり高そうな剣を取り出すレオ。よく考えれば僕以外だいたい金持ちじゃん。


「じゃあ行こうか。シドのそれは前の高周波ブレード以外だと、どうせレーザー砲とか銃になったり、爆弾が転がり出てきたりするんでしょ?」

「そこまで昨日はねえよ。まあレーザー出せるし、銃にもなるけど。」

「ったく、これだからチート野郎は…」


全く、科学の力を借りるなんて…。僕も魔法を作るとき科学的根拠を利用しているけど…


「ああん?どうせテトも使ってるだろ、科学。」

「くそ、そういわれると反論できない…」


「おいテト、そろそろ警戒しろ。」


レオに注意されてしまった。


「ねぇ、ちょっとやってみたいことがあるんだけど…」

「いいんじゃねぇか?まだ森に入って浅い。」


「それじゃ、」


魔法陣を描く。雷ではなく、の魔法陣。最近、新しい手札が欲しくなったため考えていたのがこの音魔法だ。音は空気の振動なので、かなり簡単に再現できそうだと思ったのだ。


今回使うのは、音を広がらせて帰ってきた音を拾って探査するという簡単なものだ。


音探査サウンドサーチ


森の隅々まで音を広げ、帰ってきたものをキャッチする。


「そこを右に曲がってしばらく進んだところに洞窟みたいなのがあるよ。」


僕が探査できたのはそこまでだ、洞窟の中からは音が乱反射して帰ってこなかったようだ。


「じゃあ、そこに行ってみようぜ」

「私は行ってもいいと思います。」


皆肯定的な意見だったので進むことにする。洞窟へと先導していく。


「ここだね。」


そこにあるのは、天然とは思えない、深い洞窟。底には光が差しておらず、全く底が見えない。


「アイリスさん、ちょっと照らしてくれない?」

「うん、いいよ〜。閃光球ライトボール


明らかに普通の光球ライトボールの明るさじゃないが、それは考えずに洞窟の中に踏み入る。


「何もいないな。」

「ああ、不気味なくらいだ。」


ただひたすら続く深い穴。


かなり進んできた。最早地上の光が霞んで見える。その時、音探査サウンドサーチが何かを捉え…


「全員、防御しろ!!紗奈!」


即座に僕が描いた魔法陣の上に紗奈の魔法陣が合わさる。さすが、名前を呼んだだけで理解するとは。


「「炎雷結界フレイムライトニング」」


同時に、魔法名を言うことでイメージを底上げする。


張られた結界に黒い、大量の土砂の混じったブレスがぶつかった。


何とかそれに耐え抜き、結界を解除する。


「おい、アイツ、大地竜グランドラゴンだぞ。まじかよ、よりによって竜種、その上位種じゃねえか。」


前を向いたまま聞き返す。


「レオ、情報は?」

大地竜グラントドラゴン。基本的に単独で過ごし、穏やかなものが多いが、稀に非常に気性が荒いものも存在し、気性が荒いものは格別危険である。上位種ともあって、非常に知能が高く、気性が荒くとも相手を誘い込んだりと搦手で攻めてくることがある。また、その鱗は竜種の中でも突出して硬く、生半可なものでは傷すらつけられない。」


「ナイスだ。僕と紗奈の2人で行くからフォロー頼む。レオは固定砲台として後ろから魔法を撃ってくれ。アイリスは僕たち2人にバフ掛けた後サリーさんと二人でフォロー、シドは遊撃を頼む。」

「いいぞ。」

「了解。」


僕と紗奈にバフが掛けられる。一気に体が軽くなった。


「行こうか。」

「わかっています。」


一度緋璃刀を鞘に収める。


「居合抜刀術–凍焔迅雷」


緋璃刀を電流によって加速する。大鬼オーガと戦った時の抜刀術の上位互換だ。名前をつけたのは、元々地球で僕がやっていた四条流の剣術と区別するためだ。

決して厨二心からではない。決して厨二心からではない。


キィーン


およそ生物とは思えない硬質な感覚が返ってくると同時に、僕の刀が弾かれた。

鱗を見ると罅は入っているが、大したダメージにも見えない。刹那の間にそこまで分析すると同時に即座に後ろに下がる。


それを追おうとする大地竜グランドドラゴンとの間に紗奈が割って入り、恐ろしい斬れ味を持つ黒銀刀を僕の太刀筋の通りに叩きつける。それは、またも弾かれた。


「テト、ルナさん、下がれ!」


見ると大地竜グランドドラゴンがこちらに足を踏み降ろそうとしている。だが、シドが僕たちに声をかけたのはそれが理由ではないだろう。


後ろに下がりながら、魔法陣を描く。


その間に、まずサリーさんが魔法を発動した。


「土よ、相手を飲み込み固めよ。大地監獄グランドプリズン


大地竜グランドラゴンが土に飲み込まれ、固められる。しかし、長くはもたないだろう。相手は土の支配者の大地竜グランドラゴンだ。相性は酷い。

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