第30話 天叢雲剣と魔剣レーヴァテイン
「さて、じゃあやろうか。」
「ええ、早くしましょう」
日が暮れ始めた山奥の、木を伐り土地を開いたところに紗奈と二人で立つ。
界雷剣と紗奈の切り札、紅蓮剣を取り出す。そして___
「懐かしいな、この家。」
「これを見るのは久しぶりな気がしますね。そこまで時間は経っていないはずなのに。」
「一ヶ月も経っていないからな。」
先ほどの先生の覇王祭の説明の後こんなところに来たのは、剣を鍛えるためだ。今回は前のと違い本格的に作り直すので、設備が必要なのだ。
「それじゃ、入ろうか。」
扉を開けて中に入り、奥の部屋の扉を開けると、中から鉱物の匂いが漂ってきた。
電気を付け、溶鉱炉の前に立って燃料の
溶鉱炉に火が入ったところで、剣を中に入れる。
「どっちからやる?」
「誠くんからでいいですよ。」
「それじゃお言葉に甘えて」
界雷剣を溶鉱炉へとぶち込む。ちなみにこの溶鉱炉はそれ自体が立体魔法陣で、全ての熱を中心部に集めることで局所的には紗奈の
「そろそろかな。」
中で
この状態で精神集中をする。ネアンライトはとても希少なので、失敗は許されない。剣のみに意識を集中させる。
そして、
魔化させた魔雷化ネアンライトを取り出してこれを先ほどの溶鉱炉に突っ込み、一気に最高出力へと切り替える。溶鉱炉の蓋は閉じているはずなのに、部屋を尋常ならざる熱気が包み込む。
少しずつ融解していく魔雷化ネアンライトが完全に融けきるまで待ち、第二溶鉱炉に入っている
その隣で魔雷化ネアンライトと魔力線をつないだ状態で界雷権能と風系、さらに音系の魔法を順番に放っていく。それがネアンライト本来の性質によって最適化・強化され、その強化された魔法の魔法陣となる。さらに、魔雷化ネアンライトの最適化に合わせて自分でも更なる強い魔法を求める。
―――
新たな魔法が出来上がり、魔法陣として刻まれる。魔雷化ネアンライトを芯として持ち、
僕と紗奈の体から三センチのところに真空層、そしてその中に空気を詰め込む。そして溶鉱炉の扉を開ける。その瞬間、摂氏十億度が解放された。真空層によって熱の伝導と対流を遮断し、目以外のすべてを銀の服で覆い隠すことで放射熱すら99%遮断しているのに、体を圧倒的な熱が覆う。
即座に地球で言うタングステン、融点がクッソ高い金属でできた槌を振り上げ、打ち付ける。
金属の塊が徐々に剣としての形をあらわにしていく。熱した研磨剤と研磨機により、剣の形を整える。
そして、焼き入れ。それを極低温の過冷却水に浸ける。刃を奥まで入れた瞬間瞬時に水が氷となり、一気に剣が冷やされて硬くなる。
しばらく冷やした後、氷を割って剣を取り出し、今度は細かい温度調整のための第三溶鉱炉へと入れる。
焼き戻し。ゆっくりと加熱し、ある程度まで加熱ができたらゆっくりと冷ましていく。
「ふー。」
「なんとか成功ですね。」
後は剣を常温になるまで冷やせば終わり。その間に、次の仕事にはいる。
「それじゃ、次。」
紗奈の紅蓮剣を取り出し、第一溶鉱炉へと入れる。先ほどの熱がまだ生きているのですぐに融けるだろう。
「融けたかな?」
融けた
十分に融解した魔焔化ネアンライトを先ほどの二つと合わせる。そして、溶かした状態で紗奈が魔焔化ネアンライトと魔力線をつなぎ、紅蓮権能の魔法を使う。
僕の界雷権能と同時期に出来たにもかかわらず、今まで紗奈が徹底して使わず、授与式ですらも別の魔法をアレンジするという形をとることで見せなかった紅蓮権能。それは、あまりにも火力が高い。
「紅蓮権能・攻撃術式・蒼星焔輪、絢爛劫火、八熱地獄、炎渦灰燼、etc...」
溶鉱炉に向けて超火力の魔法が吹き荒れる。火力だけなら、
それらが魔焔化ネアンライトによって最適化・強化される。それが剣に刻まれる。魔焔化ネアンライトの芯、魔焔色金と
二人の体の周りに空気の膜を作った後、本日二回目の第一溶鉱炉の扉の解放。またも熱が吹き荒れる。しかも、先ほどの紗奈の魔法によってさらに熱されている。
即座に紗奈が槌を振り上げ、打ち付ける。剣の形に造形したそれを、焼き入れとして一気に過冷却水に浸けて凍らせて冷やす。
さらに焼き戻しとして氷を砕いて取り出したそれを第三溶鉱炉へと入れて温度を調整すると同時に、先ほどの天叢雲剣を取り出す。
既に常温状態に冷やされているそれに刃を付ける工程に入る。超微細に並べられた
そして、最後の工程。銘入れだ。これは単なる文字を入れるわけではない。文字に魔力を込め、神話としての剣の想像を実現するために最も大切なものだ。
言霊。文字には力が宿る。だからこそ、この工程こそが最も大切なのだ。
手元に全魔力をかき集め、文字を彫りながら魔力を込めていく。銘の部分から剣の全体へと魔雷化ネアンライトを通して魔力が広がり、剣が洗練されていく。そして、制作者名としてテト=スプライトを彫る。最後の文字を入れ終わった事で剣が完成し、同時に魔力を使い切った。
「あー、魔力切れた。久しぶりだな。こっちはできたよ、紗奈。」
出来上がって顔を上げると、ちょうど紗奈が第三溶鉱炉からレーヴァテインの原型を取り出すところだった。
「誠くん、なにこんなところでふらつかないでください。危ないですよ?」
紗奈に心配されているが、さすがにこのクソ暑いところに紗奈だけ残して他へ行くは無理。紗奈のレーヴァテインが完成するのも見たい。
「紗奈が終わるまでは待つよ」
紗奈が顔を赤くした。ホント可愛いな。
「もう、誠くん。今、集中しているんですから。」
剣を削る研磨機から全く目を離さずに答える紗奈。
「よし。最後に、銘を入れれば、完成です…」
剣身に銘レーヴァテインと、ルナ=フレアナイトの文字が刻まれる。そこには紗奈の全魔力が込められ、剣全体へと魔力が行き渡る。
「完成、しまし、た。」
紗奈がふらついている。剣の前に倒れそうになっていたので咄嗟に走り寄り、剣に触れて
「紗奈、大丈夫?」
「大丈夫です、誠くん。魔力切れが久しぶりで…」
「僕が運ぶからそのままでいいよ。僕の方は魔力が回復してきてる。」
紗奈をお姫様抱っこし、溶鉱炉の電源を落として道具を片付け、部屋から出る。
紗奈を二階の部屋へと運んでいき、ベットに寝かせた。
「疲れたな。」
自分の部屋に入って独り言ちる。今日はすごく忙しかった。
「おやすみ。」
隣の部屋に挨拶をした後、ベットに倒れこんで瞼を閉じる。すぐに意識が、なくな、って…。
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