第11話 決戦②
「やめてよ!」
椅子に縛り付けられている昴。何度も何度も水をぶっかけられて、目隠しもあり混乱していた。
父親の悲鳴が聞こえなくなってからたぶん三十分。いや、もう正確な時間も分からない。
お願い。誰か助けに来て。
すると遠くからサイレンの音が聞こえた。
明らかに男たちが困惑しだす。
「どうする? 裏口から逃げるか?」
昴はここぞとばかりに絶叫した。
「逃げるなんて許さないぞ! 私がっ、私が女だからって舐めやがって」
「なに言ってんだよこいつ」
「ここで死ね! 今すぐここで!」
「てめぇ。調子に乗りやがって!」
するとたくさんの靴の音が施設内に響いた。
「警察だ! 動くな!」
よかった。でもどうしてこんな所に?
目隠しが外された。
そこにいたのは皆家だった。
「良かった。いま救急車呼んでもらっているから」
「皆家……」
「君は――」
「ねぇ」
どうして彼にだけ許せてしまうのかは分からない。いや、本当は理解しているのかもしれない。
母親から娘なんか産みたくなかった。そんな勝手な考えで男の名前を付けられた。それが憎たらしくて。目を背けていた。
でも彼になら、ありのままの自分を受け入れてもらえる気がする。
「ねえ、昴って呼んでもいいよ」
彼は少し驚き、その後すこしはにかんだ。
「ああ。昴」
彼との距離が縮まったように思える。
□■□
悟はもう限界だった。
いつ倒れてしまうかもしれない状況で、気力だけが頼りだった。
そのとき、バイクのラッパ音が鳴り響いた。
そして一台のハイヤーが門の所に止まった。
降りてきたのは長身の優男だった。
「誰だ……あいつ」
一斉に空気が変わった。
皆が頭を下げ、「お久しぶりです!」と叫んだ。
「君が悟君かな?」
「……」
「失礼。俺は皆家
そこで初めて悟が頭を軽く下げた。
「迷惑をかけてすまなかったね。LSD事業は“いったん”引き下げてもらうよ」
その一言を残し、英雄はハイヤーに戻っていった。
そして先ほどまで死屍累々になりながら喧嘩していた奴が糸が切れたように去っていく。
すごい影響力だな、と思った。
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