第12話 決戦③

「英雄。親兄弟の盃を交わした途端に勝手なことされちゃあ困るんだ」


 遠藤組のオフィスにて若頭の坂島に詰められていた英雄ひでお


「申し訳ありません」


「学生に薬で骨抜きにさせたら楽に商売ができるんだよ」


「はい」


 若頭は煙草を吸いながらスマホをいじっている。こちらに目をくれやしない。


「で、損失分をどう補填するの?」


「関西のIR事業に一枚嚙めたらなと思っています」


「机上の空論を語ってんなよ」


「いえ。関西系の賭博組と協定の締結を水面下で進めています。ぜひ、ご期待を」


 坂島が英雄に一睨みする。


「どんな利益を想定している?」


「海外市場も参入しますので、軽く数兆円はうま味があります。財界や財務省にもでかい顔が出来ますよ」


「それが本当だとしたらそりゃあいいな。俺もお前も大出世だ」


「ええ。あっ、用事があるのでここら辺で。申し訳ありません」


 英雄は事務所から立ち去った。


■□■


 病室で昴は目を覚ました。横には皆家がいた。こくんこくんとうたた寝をしている。

「ずっといてくれたの?」


 皆家は目を覚まし、にこりと笑った。


「ああ」


「優しいんだね」


「普通だよ」


「あの……お父さんは?」


「ごめん。救えなかった」


 昴は涙が溢れ出るとともに、なぜか安心もしていた。その正体を知ってしまうと自分自身がおぞましく思えてしまうのでそっと蓋をする。


「ねえ。皆家は死んだりしないよね?」


「俺はまだ死ぬわけにはいかない」


「そっか。良かった……」


「……なあ、これは提案なんだが、俺の家に来ないか?」


「は?」


 自分の体が熱くなる。


「ほら、三歳の弟さんもいるし、俺の母さんも喜ぶよ。それに――」


「――?」


「まだ学生の君が子育てなんておかしいよ。周りのサポートがあったほうがいい。どうかな?」


「私、頼ってもいいかな?」


 声が震えてしまっていたことに後から気付いた。

 それでもそれを指摘せずにすべてを包み込んでくれた彼はどれほど優しいのだろう。



 どれほど優しいのだろう――

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