第4話 ルーチェとの初共闘
「ルーチェ、ここまで王都から遠くないけれど、無事だったのね」
俺だって苦戦していたのに、いや死にかけていたが、メイドのルーチェが無傷でいられたのだろうか。少なくとも俺よりも非力なはずだ。
悪役令嬢な俺が言うのもなんなんだが。メイドとして体力があるのかもしれないが。
記憶を思い出す限り、ルーチェは色々と動いていたけれど。
「そうですね、あはは……」
よく見てみると、足元は泥だらけで、手袋には血が滲んでいた。
そして注目的だったのは、ルーチェのトレードマークであるエプロンドレスが裂けていた。明らかに無事ではなかったみたいだ。
しかも荷物が少ない。
「貴女、何で自分よりも俺を優先するんだ!?」
俺はそれに気がついたら、感情的になっていた。
だから男の口調が出てきてしまっていた。
「お嬢様……?」
「何でもいいから、魔法で綺麗にしろって!」
ルーチェは俺が男の口調になっているのに気がついていたが、俺は構わずに命令する。
流石にこんな状態でこのまま旅をさせられないから。
「良いのでしょうか……?」
「勿論だって!」
「……畏まりました」
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ルーチェはキュアとクリーンを唱えた
ルーチェ:体力が回復・身だしなみが修復
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「それでいいのよ」
冷静になって、口調はグローリアに戻る。
この変化、気をつけないとな。
変なタイミングで男の口調になったら、大変な事になりそうだから。
まあ、男みたいな口調で詰め寄るっていうのも面白いかもしれないが……
「お気遣い恐縮です」
ルーチェは微笑みながら、頭を下げていた。
「実は私、急いできましたので……」
「い、急いでって……」
自分の事よりも、俺を優先しようと考えながら来たという訳か。
「お嬢様が……いなくなるなんて……私……」
ルーチェは顔を伏せながら、悲しそうな表情をしている。
どうやら俺の事……グローリアの事を想っていたんだな。
「ああ……! もう追いついたから大丈夫よ」
「はい……ですので、ご一緒に」
「ええ、一緒にね」
そういえば、ルーチェのステータスはどうなっているのだろうか。
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◆ルーチェ・ネレトヴァ
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種族:人間
職業:ネウム家直属メイド
レベル:2
HP:32/32
MP:24/48
力:6
知性:22
器用:15
運:2
スキル
・家事魔法
・救護魔法
・補助魔法
グローリアに対する好感度:65
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微妙に強いのか。
むしろこれくらいが頼りになりそうな感じだ。
「お嬢様、何を見ていらっしゃるんでしょうか?」
「何でもないわ」
やっぱり、俺以外には見えないみたいだ。
じゃあこのまま見ていても、変に思われる。
「では気を取り直して、行くわよ」
「はい、お嬢様」
という事で俺達はマップを頼りに進んでいく。
これで一応はパーティらしくなった。
(彼女もハーレムに含めていいのだろうか)
ずっと屋敷で働いていたルーチェだが、綺麗だから候補に入れて良いかもしれない。
好感度も高めだから。
「お嬢様、ゴブリンです!」
そんな事を考えていると、目の前にゴブリンが出てきた。
この辺りはゴブリンの生息地みたいだな。また出てくるって事は。
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ゴブリンがあらわれた
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ただ、連続でスライムとゴブリンに出会っているから、多少疲労が出ている。
これがグローリアの身体なのか。
「なにこれ?」
変なポップアップが出てきた。
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◆協力戦闘チュートリアル
・仲間と連携し行動補正を獲得できます
・”真偽解析”は仲間の行動意図も読めます
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へぇ、便利だな。
もしかしてルーチェが支援してくれるのか。
そうだとすれば、ありがたいが。
「一緒に戦いましょう」
「わたくしも戦うのね」
メイドが戦うのが正しいのかもしれないが、俺の方がチートを使用できるから、こっちの方が良いかもしれない。
「前衛は危険です。ここは私が後ろから支援します」
「……わたくしもヒールで前に出るのは正直怖いけれど、旅人の杖なら何とか……」
俺はルーチェの前で戦うことにした。
後ろで彼女が助けてくれる。
「お嬢様、前へ! 右から来ます!」
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ルーチェ:【虚偽:なし/成功率:83%】
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嘘をついていない。
と言うことは、これを信じれば良いのか。
確かにゴブリンは右からやってきた。
「ルーチェ、ありがとう」
俺はゴブリンの攻撃を回避することが出来た。
「あの……お嬢様、その杖の握り方が武術のような……?」
(ヤベッ部活の時の癖が出た!?)
はっきりと、前世の癖が出るなんて。
消せないもんだな、
「こ、これは……ええと……!」
言い訳が出来ない。
王都では、武術なんて習っていなかったから。
「とりあえず、行きましょう!」
「ええ!」
それ以上ルーチェは追及せず、戦闘に戻っていく。
とりあえずこれで戦うしかない。
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ルーチェはクイックステップを唱えた
グローリア:機動補正+15%
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ルーチェが魔法を唱えた途端、ヒールのままだったのに、歩きやすくなっていた。
これはかなりのバフになる。
「いきますわよッ!」
俺は令嬢と元々の口調が混ざったような感じで、かけ声を出す。
旅人の杖を持って、牽制する。
歩きやすさもあって、杖の重さはあったものの動きやすい。
「お嬢様、私も!」
ルーチェは横から光の矢でカバーしていた。
攻撃力はそこまで強くないものの、はっきりとゴブリンは怯んでいた。
「今です!」
「ええ、仕留めますわよ!」
俺達は同時にゴブリンへ攻撃をする。ルーチェも協力していて、大きなダメージを与えているようだった。
攻撃の威力はゴブリンの体力をオーバーして、倒すことに成功した。
「やりましたわ!」
「お見事です、お嬢様!」
はっきりとコンビネーションを感じさせる戦いだった。
本当にチュートリアルのような感じでもあったが……
「助かったわ、ありがとう」
俺はルーチェに微笑む。
こんな事、今まであったのだろうか。思い出しても、無かったような気がする。
それほどグローリアとしては、素行が悪かったんだな。
「いいえ、お嬢様の力があってのことです」
ルーチェも微笑んでいて、何か嬉しくなってきた。
ただ彼女の顔に少々疲労が見えている。
「あの……ちょっと休憩しませんか。連戦は難しいかもしれませんので」
「そうなのね」
まだレベルが2だもんな。
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ルーチェ・ネレトヴァ
MP:18/48
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かなり魔法を消費している。
どこかで休まないといけないな。
野営だと、後々大変になるが……どこかに宿があればいいのだが。
「私、まだ回復魔法の詠唱が遅くて……」
「大丈夫よ」
そういう俺も疲れが出てきている。
という事で、俺達は近くの石に座って休憩をすることにした。
MPは回復しないかもしれないが、疲労は多少回復するかもしれない。
「お嬢様、まだ熱が残っています」
「えっ……?」
ルーチェがそっと俺の手を握る。
冷えた雨の中を歩いてきたせいか、手の温度差がやけに鮮明で……
(うわ、近ぇ……いや”近いですわ”……!?)
俺の内心とは裏腹に、ルーチェは完全に”お嬢様”として接している。
手の温かさだけじゃなくて、顔も温かくなりそうだ。
「お嬢様、これからは二人です。一人で倒れる必要など、もうありませんから」
これから二人って……
考え方によっては、プロポーズっぽい。
(……こいつ、最高のヒロインじゃねぇか)
王子と結ばれようとしているエミリアより何倍も、ヒロインだ。
なんということだ、ヒロインは近くにいたという訳か。
「ええ、こちらこそ一蓮托生だからね」
俺は微笑みながら、ルーチェに言ったのだった。
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