第3話 王都から少ししか離れていないけれどボロボロ
「わたくし、初戦でボロボロですわね……」
スライムとの初戦闘を終えて、街道を歩いていく俺。
運がマイナスのために起こった出来事のために、次の街へ着くまでにボロボロになっていた。
ドレスはボロボロで、雨で濡れている。
ヒールで歩きながらさっきの疲労を感じていた。
裾が雨で濡れたせいで脚に貼りついて、なんとも言えない不快感がある。
それに胸が揺れるせいで、重心が狂いそうになって、四度目の転倒が起こらないか不安になる。
「わたくしがこんな事に……」
王都がさらに遠ざかるにつれ、孤独感が出てきてしまう。
もう誰も頼れないからな。
「あんなに強すぎるなんて」
ゲームだったらスライムなんて雑魚だろ。
窒息させて命を奪おうとするって、凶暴すぎる……
ただ現実だから、ゲームとは違っているのかもしれないが。
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◆グローリア・ルイーザ・ネウム(好摩修次)
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レベル:1
HP:22/28
MP:12/12
力:4
知性:17
器用:7
運:-13
スキル:
真偽解析
特殊視界
魅了無効
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「体力が減っていますが、どうしようもないですわね」
回復手段を持っていないし、パンはさっき食べてしまった。
とりあえず村か町まで行って、宿屋休むしかないだろう。それか薬草を手に入れるか。
マップを見て、矢印の方向に進んでいく。
この先何があるのか分からないから、不安でしかない。
歩きにくいヒールでも何とか歩いていく。
追放されて一日も経っていないのに、こんなに疲れるなんて。
高校生の時には何とかなっていたのにな……
でも今は、悪役令嬢グローリア。体力なども違っている。
経験値でも積んで、何とかしないとな。
「またですの!?」
王都から離れているから当たり前だと思うんだけれども、個人的にツッコんでしまった。
この旅は序盤で大変だったから。
目の前には緑色の魔物が現れた。棍棒を持っていて、明らかに打撃の力が強そう。
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ゴブリンがあらわれた
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悪い目をしていて、俺を殺そうというつもりみたいだ。
そのまま殺されるわけにはいかないが、打開する方法は少ないと思う。
「わたくしは殺されませんわよ」
短剣を持って、応戦体勢を取る。
さっきのスライムは何とか倒せたけれども、果たしてこのゴブリンは倒せるのだろうか。
「グフフ」
悪い笑いを出しながら、こっちに向かってくる。
躱さないといけないがこの身体や服装では、上手く立ち回るのが難しい。
「きゃっ……!?」
棍棒が俺の身体に当たってしまう。
そのまま弾き飛ばされて、草の上に落ちる。
頭は何とか無事だ。
「負けたくないですわね……」
そう口では言っているけれども、状況を打開する考えが見つからない。
どうすれば……
「あれは、使えるのかしら」
重すぎる旅人の杖。
それを持って、ゴブリンに戦う。
ある程度長さがあるから、間合いだって取れる。
「行きますわよ……!」
重いものの、何とか前世での事を思い出しながら振り回していく。
明らかにボロボロの令嬢が錯乱しているような光景だが、仕方が無い。
「グアッ……!」
振り回した攻撃が、ゴブリンに当たった。
多少の打撃が当たっているみたいで、ダメージを負っているようだった。
これはいけそう。
「うっ……」
ゴブリンもバカじゃなかったみたいで、石をこっちに投げてきた。
当たってしまい、ぶつかった場所から血が出てくる。
ダメージが大きい気がする。
ちょっとクラクラしている。
でもここで止まっていられない。
「いけぇ!」
俺は思いっきり振り回し、ゴブリンの後頭部に命中させる。
それによって、その場にゴブリンはその場に崩れて倒れてしまった。気絶しているのだろうか。
この隙に通り過ぎればいいが、もし起きたときに俺を恨んだら反撃で死ぬ可能性がある。
俺はチャンスだと思って、短剣を取り出してゴブリンへとどめを刺した。
「やったわ……」
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ゴブリンを倒した
レベルアップ
レベル1→レベル2
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「レベルアップね……」
多少能力が上がった気がする。
このポップアップを見ると、この世界がRPGみたいだって思えてくる。
でも、はっきりと現実。
「す、進まないと……」
俺は倒れたゴブリンを後に、進んでいこうとする。
でも身体が動かない。
さっきは火事場の馬鹿力で動けたが、戦闘が終わって一気に疲労感が出てきた。
「はぁ……はぁ……」
しかもさっきのダメージで、かなり体力が消耗している。
回復しないと危ない。
足が震えていた。
たった二戦でこのザマなんてな。
「……わたくし、こんなので魔王が倒せますの?」
視界の端ではHPが真っ赤に点滅していた。
まるで”このままでは死にますよ”と警告しているようだった。
「……でも、立たないと」
ヒールのかかとが泥に沈んで、足首が痛む。
雨で重くなったドレスが肌に貼りついて気持ち悪い。
「グローリアお嬢様!」
後ろから、俺を呼ぶ声がする。
どうして王都から離れているのに、はっきりと俺の名前を込めて呼ぶのだろうか。
誰が呼んでいるのかと振り返ってみることにした。
「ルーチェ!?」
そこには屋敷でメイドをしているはずの、ルーチェ・ネレトヴァが。はっきりと彼女の名前は覚えていた。
絶対に王都を離れるはずがない、彼女がどうしてか俺を追ってきている。
「どうしてこんな場所に来ているんだ!?」
「お嬢様と一緒に旅をするためです」
ルーチェは平然と答えていた。
まるでそれが当然であるかのように。
(……バカじゃねえのか。俺と来たら死ぬって分かってんのかよ)
楽観的に考えていられるようなものじゃない。
「帰って! お前まで死ぬことになる!」
悪役令嬢として俺としての口調が混ざったようか感じで、彼女に言い放つ。
でもルーチェは決して動じなかった。
「いいえ。決めましたから、もう戻ることは出来ませんので」
「わたくしはもう二回くらいは、死にかけているんだよ! 次も死なないって限らないから!」
「それでも私は、お嬢様と一緒に行きます」
ルーチェの言葉、はっきりとした意思を感じさせていた。
でも、本心で言っているのだろうか。
俺はUIを確認する。
「正常だわ……」
ルーチェの発言には、”虚偽”といったものが出てこない。
はっきりと彼女は真実を言っていたのだ。
俺と一緒に行くつもりで、ここまで追いかけてきたという訳だ。
「お嬢様、お身体が……」
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ルーチェはキュアとクリーンを唱えた
グローリア:体力が回復・状態異常が解除・身だしなみが修復
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ルーチェは魔法を使って身体の傷を癒していく。さらには、汚れている服や身体さえも綺麗にしていた。
高かったドレスもはっきりと形が戻っている。
「凄いわ……貴女、魔法が使えたのね」
「ええ。ネウム家に仕えるためには、これくらいはありませんと」
微笑みながら俺をはっきりと見ている。
こうなったら仕方ない。
彼女だって、ハーレムに入れられる。むしろ好感度高いから、攻略出来そうだ。
侍らせたって面白くなりそうだしな。
「仕方ありませんわね。ここまで来たからには、もう責任を取ってもらいますから」
「はい! また、よろしくお願いします」
「……じゃあ行きますわよ」
こうして一人目のパーティメンバーが加入したのであった。
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