第15話 スタンピード

 冒険者ギルドから戻った俺は、ママと、ルミエル、ワンダに事情を伝えた。

 三人は、俺みたいな子供の話でも疑うことなく聞いてくれた。


 俺たち四人にも必ず冒険者として、お呼びがかかるはず。

 今日は体を休めて、次の日四人でマイッツアーに会いに行くことにした。


 次の日、冒険者ギルドに来た俺たちは、早速マイッツアーに様子を聞きに行った。


「タケルか。ちょうど良かった。諸々の通達は済んだが、王国騎士団は派遣されるまで早くても三日はかかる。教会からの神官の派遣もいつになるか」


 マイッツアーの言葉に俺は少し引っ掛かることがあった。


「もしかして、王城の関係者に調べたのが俺だって言った?」


 すると、急にマイッツアーは目を逸らした。


「どうだったかな~」


 あちゃー。

 俺は額に手を当てた。


「王城には、俺の事を嫌ってるやつもいるんだよ。俺の名前を出すと余計に信じてもらえないよ」


 特に騎士団長とか。

 俺は記憶が戻る前、騎士団長の直接指導を何度もすっぽかしてた。


 ママは俺の肩に手を置いた。


「あんたのこれまでの行いが招いたことや」


 なんかこいつに言われるとムカつく。

 お前のせいでもあるからね。


「坊っちゃま」


 声を上げたのはルミエルだ。


「ここは、私たちが瘴気の発生源に向かい、少しでも魔物を減らしましょう。神官が来たら、すぐに浄化してもらいますが、それまでに時間を稼ぐのです」


 ルミエルの意見に誰も反対意見はなく、俺たち四人といくつかの冒険者パーティーは森へ向かうことになった。


 森に潜る冒険者パーティーが一同に会して、情報共有が行われた。

 その中にはグレンジャーのパーティー、鉄華団もある。


 鉄華団は最近見事にCランクに昇格したらしい。

 

 ギルドから出ようとすると、小さな女の子が走ってきた。


「お兄さん、ありがとう」


 そう言って、俺に玩具のお面をくれた。


 何のことだ?


 すると、カエラが寄ってきた。


「シルバーオーガの角で無事、薬が作れたようです。この子のお母さんも助かりました」

「ああ、あれか。役に立ってよかった」


 俺は、女の子の頭を撫でた。


「どういたしまして」


 俺は何となくお面を頭に掛けた。女の子が笑った。

 さあ、スタンピード止めてくるか。




 森に入って進みだすと、程なくして魔物に出くわした。

 

 すると、グレンジャーたちが前に出た。


「高ランクのパーティーが先に前に進んでくれ。ここは俺たち鉄華団が受け持つ」


 この辺りでは絶対見ない狼の群れ。

 俺は心配になり、グレンジャーを見た。


「デュストス、心配するな。お前のおかげでCランクになったパーティーの実力を信じろ」


 グレンジャーの目は死を覚悟した目ではない。


 何故、俺のおかげでCランクになったかは知らないが、俺は彼らを信じて前に進むことにした。


 同じような状況が続き、最後には俺たちのパーティー四人になった。


 どうやら今王都に残っているパーティーでは俺たちが一番高ランクになるらしい。

 

 俺とママはCランク、他にもCランクパーティーはいるのに、何故なんだ?

 そもそもルミエルとワンダってランクは何なんだ?


 じぃーー


「何か?」

「いや、何でも」


 今はスタンピード対策に集中だ。


 魔物を倒しながら進む。


「どうやら坊ちゃまの言っていたことは本当のようですね。出てくる魔物が瘴気を帯びております」


 言いながら、ルミエルは冷静に切っていく。


「バット、坊ちゃま、シルバーオーガは一人では危険ですよ。子供にいい顔を見せたいからと無理をしないでくださいね」

「お、おう、分かった」

「ワンダの言う通りやで。息子はそういうとこあんねん」


 ワンダは珍しく厳しい。

 ママはどうでもいいけど。

 別に子供にいい顔を見せたかったわけでもないし。

 

 それに、さすがにAランクの魔物は俺もビビったよ。

 あんな戦いはもうしたくない。

 ただ、Aランクにしては弱かったと思うのは気のせいだろうか。


 俺たち四人は、森の深部まで来ていた。


「ここは坊ちゃまがシルバーオーガを倒した場所よりも大分深いです。そろそろ、瘴気の発生源があっても不思議ではないのですが」


 ここに来るまでに、高ランクの魔物もいたが、四人で連携すると、それ程苦戦せず倒せた。

 俺たちのチームワークも良くなってきているのだろう。

 

 だが、やはり疑問に思う。


「なあ、ルミエル、ワンダ、お前たち、俺が苦戦したシルバーオーガを余裕で倒しているけど、実はかなり高ランクなんじゃないか?」


 ルミエルはぎくっとした顔をしてワンダを見た。


「ノンノン、坊っちゃま、女性にランクを聞くことは、年齢を聞くことと同じくらい失礼なことです。

 それに、坊っちゃまがシルバーオーガと言っている魔物、実はあれは、シルバーウィードオーガと言ってBランクなんですよ」


 そ、そうなのか。

 女性にランクを聞くことは失礼だったのか。

 冒険者の常識って難しいな。


 しかも、Aランクと思っていた魔物がBランクだったとは。

 俺もまだまだなんだな。


 ワンダの言葉にそんなものかと俺は納得した。

 いや、ちょっと待てよ。


「じゃあ、ルミエルには聞いてもいいってこと?」

「坊っちゃま、私がランクを教えると、ワンダのランクも推測されてしまいます」


 そ、そうか。ランクってそんなに教えたくないものか。

 グレンジャーは初対面で普通に教えてくれたけど、男だしな。

 今後気を付けよう。


 因みにシルバーウィードオーガはママも余裕で倒している。

 ちらっと顔を見ると、笑顔でピースをしてくる。むかつく。


 俺があんなに苦労したのに。


 それから少し歩くと、先頭を行くルミエルが歩を止めた。


「どうした?」


 俺は聞きながらルミエルと見ると、さっきより緊張感の増した顔をしていた。


「どうやら、ここのようです」


 俺とママとワンダも歩を止めて、前の様子を窺った。

 良く見ると、黒い靄が出ている空間がある。


「どうやら瘴気を出す魔道具が置かれているようだな」


 俺の言葉にワンダが目を大きく開いた。


「坊ちゃま、そういった話をご存じなのですか?」

「あ、ああ」


 原作知識です、とは言えない。

 ママは知らんふりをしているが、わざとらしい。

 もっと、ポーカーフェースを学べ。


「とにかく、あれを破壊するぞ」


 俺たちは辺りに置かれている瘴気を出す魔道具を虱潰しに破壊していった。

 ほぼ、等間隔で置かれている。

 こんなことをする奴に俺は覚えがある。


 次の場所に移動する前に一息つこうとしていたとき、これまでとは比べ物にならない瘴気を感じた。


 瘴気の方に目を向けると、離れた場所からでも分かるほど大きい靄が立ち込めている。


「まずい、魔道具が破壊されたら作動するしくみだったのか!?」


 きっとあの瘴気からは、今までとは比べ物にならない程強い魔物が出てくる。


 冷汗が垂れる。


 恐怖で身体が震えた。


 俺はゆっくりとママとルミエル、ワンダを見た。


「息子よ、落ち着いている暇はないようや。行くで」


 ママはいつになく真剣な表情だ。


 ママが走り出した。


 くそ、お前は一応、魔法職扱いだから、前を行くなよ。

 

 ママを追いかけるように、俺とルミエル、ワンダも走り出した。




 俺はママの背中を見ながら考えていた。


 魔物を間引いていれば終わると思っていたスタンピード。

 

 ところが雲行きが怪しくなってきた。


 誰だ、今日の運勢悪い奴は!!






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