05.近い。近い近い!

 転生はともかく、私の高校生活が始まった。


「エミリ、おはよ」


 学校に着くと隣の席のリオンが手を振る。

 そこまではいいけど、そのあと私の方に椅子を寄せてくる。

 近いんだけど?

 背の高い黒髪のイケメンが微笑みながらくっついてくるの、対応に困る。


「離れて。半径五メートル距離置いて」

「隣の席だから無理」

「にしたって近いでしょ」

「一時も離れたくないんだ」

「うへ……」


 やめて、耳元でささやかないで……!

 背筋がゾワっとするから!!


「おい、リオン! 離れろ!」

「嫌だ」


 ホームルーム五分前になると、部活の朝練を終えたルイがやってくる。

 ルイは陸上部に入った。

 前世で散々剣を振ったから、今度は何の道具も使わないことをしたい……と言って、長距離走を始めた。


「ぎゃっ、リオン、抱きつかないで!!」

「ほら、エミリも嫌がってるじゃねえか!」

「ちょ、ルイ! なんでルイまで抱きつくわけ!?」

「リオンだけ抱きしめるのはズルいと思うんだ」


 うう、意味わかんないっ。

 毎朝、そうやってもみくちゃしている内に先生が来る。

 さすがに先生が来ると二人とも離れるから、先生にはずっと教室にいていただきたい。


 近くの席のユウキとアコは


「どっちかに決めちゃえばいいのに」

「選ばれなかったほうがヤンデレ化しそう」


 なんて、完全に野次馬だ。

 好き放題言って!!

 私だって野次馬したかった!

 アイリと火渡くんは付き合いたての初々しいカップルムーブ中で、見ていて微笑ましいけど、ルイとリオンが


「俺もエミリとあーんしたい」

「エミリ、僕も手をつないで帰りたい」

「どっちも嫌だ!」

「つれないなー」

「僕はそれを甘やかすのが楽しいんだ」

「マゾか……?」


 そんな感じで、四月が終わった。

 ……ギリ、平和の範疇だと思う。

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