下っ端ゴブリンの話

メタボの骨

第1話 下っ端さん頑張る。とある朝の一幕

 「融合異世界ファンアーク」ここはファンタジー溢れる世界。

 剣と魔法、SFが混ざった神様達が意見を出し合い作られた世界。

 そんな世界の一角にいる下っ端ゴブリンさんのお話。



 下っ端ゴブリンさんの朝は早いです。身を清め、身嗜みを整え作業開始です。


 まずは魔王城の清掃からです。


 魔法で水を水桶にため、薬草数種をすり鉢で潰し合わせてよく混ぜあわせます。


 するとどうでしょう。浄化された爽やかな香りがする聖水の完成です。


 下っ端さんは完成した聖水に満足し頷くと

 辺りに聖水を撒いていきます。


 なんということでしょう!血飛沫で汚れた壁や天井、砕け散った床があっという間に元通りに!


 昨日のドンパチ跡を全て綺麗にした次の作業は果樹園の作業です。


 

 アスラゴーレム(Level.950…勇者一行全滅不可避のモンスター)の破片を魔法で熱し、すぐ瞬間冷凍魔法をかけて粉々にし果樹園に振りかけます。


 これだけで世界樹の領域並の植物が量産できます。

 今日は黄金リンゴが収穫時なので必要分のみ収穫します。乱獲ダメぜったい。


 おや、一部植物の調子が良くないようです。


 月下薔薇の花びらとジェノサイドビー(Level.810…勇者一行壊滅のモンスター)の蜜を混ぜ合わせ水と一緒にして吹きかけます。


 一気に回復を通り越して進化してしまいました。

 

 これには下っ端ゴブリンさんは後悔しましたが…、良くなったのでヨシッとしました。上層部の発狂待った無しの所業です。



 次は食事の準備です。下っ端さんは本日は魔王様と奥方様の殺戮の天使アリア様の食事当番のようです。

 魔王様はカイザーハンバーグとミルキーコーンスープと輝きサラダと極上ご飯を所望のようです。


 奥方様の殺戮の天使アリア様はアークカウのミルクとヘブンブレッド3種とジェノサイドビーの蜂蜜と輝きサラダを所望されていました。


 魔法を駆使してあっという間に完成手前にします。後は給仕に任せます。出来立ては給仕の仕事です。


 その時間僅か30分!なんという速さ!

 下っ端さん的にはそれが普通と思っているようです。変な自作の歌を歌っています。

 「下っ端〜✕2!とは何ぞや?ただこなすだけさ〜♪」



 ご夫婦を起こす当番が怪我で休みの様です。致し方ありません。下っ端さんがご夫婦を起こしにいく事に。


 夫婦の寝室前で下準備をします。


 まずは浄化玉極じょうかだまきわみ

 (ご夫婦の営みの臭いを綺麗さっぱり消し心地良い香りにします。香りは多種あり)


 本日は爽やかミントの香りをアイテムボックスから取り出して用意します。


 次に洗濯マジックポーチ(どんな汚れた服、下着、シーツも綺麗にして、極上の肌触り極上の香りを付与する)をアイテムボックスから取り出し魔力が

貯まっているか確認します。


 昨夜のご夫婦の燃え上がった営み後の水分補給に奥方様の殺戮天使アリア様には「花妖精姫のはなようせいきのしずく」をご用意。


 魔王様には死者でも飛び起きハイテンションに動き踊り狂える「社畜・奴隷御用達のエナジードリンク」と「過剰な営み後に必飲マムシハイパーEX」それぞれ3本ご用意。


 後は真っ暗闇くん(視界完全遮断用目隠し)で目隠しをしていざ!


 まずはノック3回します。


 「起床のお時間です。失礼します。」


 ドアの隙間から浄化玉極を放り込み30秒待ちます。


 目隠しした状態でひざまずき下を向き魔法で脱ぎ捨てられた服、下着、シーツを回収して洗濯マジックポーチに全て入れる。


 「魔王様、アリア様。本日の衣類の香りはいかがなさいますか?」

 

 同時にトレーに魔王様、アリア様それぞれに用意した飲み物を浮遊魔法で持って行く。


 どうやらアリア様が先に起床される模様。飲み物を呑まれ「ふぅ」と溜息をつきました。

 

 「いつもご苦労様。下っ端の飲み物の選択は良い。香りは月光花で頼む。」


 お褒めの言葉があり下っ端さんは恐縮する。


 「恐れ入ります。賜りました。アリア様。」


 と答え更に頭を下げ奥方様の服、下着の香りを設定する下っ端さん。


 そして奥方様に恐る恐る質問する。


 「すみません、アリア様…。魔王様、今日使い物になります(生きてます?)?」


 魔王様の返事がない。疲れ果てた呻きが聞こえるだけだ。


 アリア様は笑いながら答える。


 「久方ぶりの夫婦の時間であってな、非常に滾ってしまってな。ふふ、あと10分は起きれまい。私は先に行く。旦那は頼んだぞ。」


 アリア様は魔王様にキスをして侍女を連れ出て行かれた。ドアが閉まってから目隠しを外し魔王様を見るとそこには……。


 魔王様のやつれ切って変わり果てた姿が!


 下っ端さんは恐る恐る魔王様に尋ねます。


 「魔王様生きてますか?今日の業務大丈夫ですか?」


 魔王様の朝イチの一言…。


 「俺、生きてる……………?」

 

 下っ端さんはその一言を聞き目から涙を流しました。


 「生還おめでとうございます!よくぞお戻り下さいました!さぁ気付けに一杯どうぞ!」


 魔王様に浮遊魔法で浮かしたトレーを移動させ「社畜・奴隷御用達のエナジードリンク」と「過剰な営み後に必飲マムシハイパーEX」を進める。


 魔王様は震える手でまずマムシハイパーEXの3本を一気に飲み干しました。15秒後ようやく緩慢な動きで立ち上がる魔王様。


 「あ~、五臓六腑に染み渡るぅ。」


 少し情けない声で魔王様が呟きます。


 下っ端さんはふと思いました。


 (この調子だと次回は1ダース必要かも知れません。大丈夫かなぁ。)


 「魔王様、次をどうぞ。」


 魔王様は「社畜・奴隷御用達のエナジードリンク」を見た瞬間死んだ目で恨めしそうに言いました。

 「悪夢の始まりだ…。」


 本来、食事前にエナドリなど言語道断なのですが魔王軍運営の為に許可されているのです。


 魔王様死なないで。我々の明日がかかっています!


 魔王様の服、下着などを回収中に魔王様から質問がありました。珍しいですね。


 「下っ端、なんでいつも目隠しているんだ?オマエと俺達夫婦の仲だぞ別に裸を見られても気にせんぞ?」


 どうやら魔王様はまだオツムが覚醒されてないご様子ですね。


 「魔王様、まず第一に親しき仲にも礼儀ありです。」


 それに、私は下っ端……。まずあり得ない事柄なんです。それにまだお伝えしなくてはなりません。


 「そして、伴侶の裸を他人に見せるものではありません。大切になさらくてはなりません。」


 しかし、魔王様は苦笑いしながら言います。


 「俺達夫婦を繋げて、命も救ってくれた恩人には遠慮はいらんだろう?そもそも下っ端、ゴブリンの癖に変に身持ちが固いだろうが。」


 (はて、何やら魔王様がおかしな事を仰りますが?)

 

 「清く正しく礼儀を持って節するのが普通なのでは?」

 

 作業をしつつ首を傾げて返答します。


 魔王様は呆れたジト目で仰いました。


「そんなゴブリン何処に居んだよ…。」


 失礼なあなたの目の前に居るではないですか!解せません。



 そんな下っ端ゴブリンの話。


 




 





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