第27話 災厄級の魔物と暮らすためには……?

 災厄級の魔物を飼う、というかテイムしたら色んな人から警戒される――なんて、ルナをテイムするかどうか迷ったときに考えたことを思い出した。


 それが第一層や地上での『伝説級のテイマー』『強そうな魔物』などの好意的な意見ばかりを聞いていたから、認識がおかしくなっていた。


 この子たちは人間に敵意を抱いてない。

 だけど、紛れもなく災厄級の魔物なのだ。

 冷静に考えて、都市に置いてはいけない。

 何かあったら誰が責任を取るのか。それは私なんだけど……命をもってしても釣り合うことはないだろうし。


「お待たせいたしました~」


 そんなことを考えていると頼んでいた料理が来た。

 私はオムライスとサラダを食べて、ルナにはハンバーグをあげた。

 お利口なことに、ちゃんと待っているルナ。


「食べて良いよ、ルナ」


 ルナは一口でハンバーグをぱくり。

 よく噛んで味わうこともなく、すぐに呑み込んでしまった。

 食にがっつくのも可愛くて、とってもいい!


「やっぱりすごいわね……この子、ルナだっけ? テイムしてないのに言うことを聞くなんて。相当頭が良いのね」


 クラヴィスが感嘆したように言う。

 私はその言葉に思わず頬を緩めてしまう。


「でしょ~。うちの子たちはみんな頭良くて可愛いんだよ!」

「いいわね! 実家で飼ってた猫なんて言う事聞かなかったけど」

「猫はそういうもんじゃない? それが可愛かったりするわけだし」

「言われてみればそうかも!」

「うちのパトリシアも――」


 ごほん!

 うちの魔物たち可愛いトークしようと思っていたら、支部長が咳払い。

 彼を見ると、どうにも何か言いたそうな顔をしている。


「リベルテ君。話が逸れ過ぎです」

「すいません……つい」


 本当につい、って感じだった。

 でもしょうがない。馬鹿飼い主だから、懐いている子たちを自慢したいの!


「で、本題に戻りますけど……どうします? リベルテ君は、これから」


 これからどうするか。

 私の夢はテイマーになって魔物や生き物たちと暮らすこと。

 それだけのことだけど、私に懐いたのは災厄級の魔物たち。どうしても飼う責任が多大に生じてしまう。


 支部長の言う通り、都市ではこの子たちと一緒に過ごすことは難しいのだろう。

 

「これだけ大きい魔物たちと過ごすには、それなりの土地……或いは城のような巨大建造物を購入するのがベストですよね?」

「そうなってくるかと」

「……実は金目のものはあるんですよ。エルマ、ちょっとあの魔結晶だして」


 「ん」とエルマが持っていた魔結晶を出させる。

 深層から出る時に、『準備』として何か金目のものがないか探しておいたのだ。

 それが、この魔結晶。


「凄いですね……見たことのない透明度だ。まるで色付きガラスような」

「そうなんですよ。多分、とんでもない価格で売れると思うんで、地方の廃城や土地ぐらいなら買えると思うんです」


 魔結晶は、魔素が結晶となって表れたもの。

 稀にダンジョン等の魔素が濃い場所で生成される。

 その価値は透明度で決まるとされている。私が持っているのはほぼ透明で、凄まじい値段が付くと予想できる。


「ふむ。しかし、その土地なり城なりを誰から買います? 貴族や大商人からの紹介でもない限り、そもそも購買にアクセスできないと思いますが」

「ですよねえ……」


 そう、そこが問題なのだ。

 広大な土地や城をただの小金持ちには、売ってくれる場所を見つけられない。

 絶対に紹介が不可欠なはず……おそらく国や領主との手続きも必要だし。


 あ~、どうしたら良いんだろう。


 そんな時に今まで黙っていたエルマが口を開いた。


「マティアス。マティアス・シュタインドルフ……あれに頼みに行くのはどかな?」

「……まじ?」

「まじまじ」


 え、エルマさん! あいつが頼みを聞いてくれるなんて、あり得ないと思うんですけど!?

 

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2025年12月27日 12:02

奈落へ落とされた元ダンジョン案内人の激弱テイマー、深層にいる災厄級の魔物たちに懐かれたのでモフモフして暮らしたい 綿紙チル @menki-tiru

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