第3話
「アレス様とコトリ様ですね。すぐに冒険者登録を行いますので少々お待ちください」
黒のトレンチコートの男、アレスと彼の側にいる女性、コトリが名乗ると受付嬢はすぐに二人の冒険者登録を開始する。そしてアレスが冒険者登録が完了するのを待っていると、コトリがアレスに話しかけてきた。
「何だか見られていますね。そんなにアレス様の姿が珍しいのでしょうか?」
「……いや、どちらかと言うと注目されているのは俺じゃなくてコトリの方だと思いますよ?」
コトリの言う通り、アレスと彼女がビルの中に入ってからずっと冒険者達と会社員達はアレス達に注目しており、その事に対してコトリが疑問を口にするとアレスは周囲を見回してから彼女の言葉を否定する。
確かに黒のコートを羽織って無反動砲を担いでいるアレスの姿は印象的かもしれないが、ビルの中にいる冒険者達はパワードスーツを装着している者もいれば大昔の騎士のような鎧を着ている者もいて、彼らと比べればそれ程目立つとは思えなかった。ビルの中の冒険者達を一通り見てからコトリの姿を見たアレスは、やはりここにいる者達が注目しているのは自分ではなく彼女だと再確認した。
コトリは健康的な褐色な肌と輝くような銀色の髪をした女性で、顔の下半分は鳥のくちばしのような仮面で隠されているが、それでも顔立ちが整った美少女だというのが分かる。加えて言うと彼女の服装は、素肌の上に袖がなく裾も非常に短いコトリの故郷に伝わる「キモノ」という服を一枚着ているだけであり、時折キモノの隙間から小柄な体格に見合わない豊かに実った乳房やキモノと同じく彼女の故郷に伝わる「フンドシ」という下着が見える姿は裸よりも扇情的で、周囲の視線を集めるのも当然だと言えた。
「そうでしょうか? 他の女性の冒険者の人達と変わらないと思いますけど?」
「いや、それはそうなんですけど……」
アレスの言葉にコトリは自分とビルにいる女性の冒険者の格好を見比べてから首を傾げる。アレスはコトリに、冒険者達と会社員達が注目しているのは格好だけではなく彼女が魅力的だからだと言おうと思ったが、何だか照れくさくなって言うのをやめた。
そしてビルには女性の冒険者も何人かいるのだが、女性の冒険者達はコトリの言う通り彼女と同じくらい肌面積が大きい格好をしていて、中には水着同然の格好をしている女性の冒険者の姿もあった。
普通に考えれば危険な生物が襲いかかってくるダンジョンに、水着同然の格好で挑むなんて自殺するのも同然だと思われるのだが、コトリやビルにいる女性の冒険者達がこんな肌面積が多い格好をしているのには理由がある。
冒険者はほぼ全員が特別な手術や訓練を受けて「スキル」と呼ばれる超能力を習得していて、そのスキルには身体能力を向上させる効果があるものもあり、熟練したスキルの使用者は生身でパワードスーツ以上の身体能力を発揮することができる。
そしてスキルを使用するには「エーテル」という、この宇宙中のどこにでもあって生物の身体からも作り出されている霊的エネルギーが必要で、男の冒険者の身体は体内でエーテルを生み出す機能に長けており、女性の冒険者の身体は素肌から大気中のエーテルを吸収する機能に長けていた。
つまり女性の冒険者に限って言えばパワードスーツのような装備で全身を固めるよりも、肌面積が多い格好をしてエーテルの吸収量を増やし常にスキルを使える状態にした方が強いということであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます