第4話

「アレス達、コトリ様。冒険者登録が完了しました。こちら、二人の冒険者の証明書となります」


「あっ、ハイ。ありがとうございます」


「……どうも」


 アレスとコトリが話していると、アレス達の冒険者登録を完了させた受付嬢が二人に話しかけて冒険者の証明書である二枚のカードを差し出した。受付嬢から受け取った二枚のカードは、それぞれアレスとコトリの名前と十桁以上の冒険者の登録ナンバーが記入されているだけの簡単なものであった。


「随分とあっさり冒険者登録ができましたね?」


 冒険者組合の建物に来るのは今日が初めてであったアレスはやや拍子抜けしたように呟く。


 ダンジョンから様々な希少で有益な資源を回収する冒険者というのは六芒星銀河で知らない者がいない有名な職業で、それを取りまとめている冒険者組合という組織は一つの星間国家に匹敵する巨大な組織だ。そんな巨大組織に加入するからには面接や審議といった複雑な手続きが必要だと思っていたアレスに何者かが話しかけてきた。


「ダンジョンは毎日のように人が死ぬ危険な場所だから冒険者は何人いても足りないからね。ダンジョンに潜って資源さえ集めてくれれば、ソイツがどんな奴でも構わないのさ」


 アレスに話しかけてきたのは鋼鉄製の水着のような装備に革製の頑丈そうなブーツと手袋を装着した金髪の女性だった。金髪の女性は二十代くらいの見た目をしており女性にしては長身で、四肢や腹部に視線を向ければ鍛え抜かれた筋肉が見えて、その姿は昔の物語に登場する女戦士そのものであった。


「ティオだ。アイツもここに来ていたのか……」


「あのネェちゃんがあの有名な……?」


「ああ、アイツが持っている武器、間違いねぇ……」


「何でティオが新入りの冒険者なんかに声をかけているんだ?」


 アレスの耳に周囲の冒険者達の話し声が聞こえてくる。金髪の女性の格好は、他のビルにいる女性の冒険者達の格好と大差はないのだが、周囲の冒険者達の反応からすると金髪の女性はこの辺りで名前の知られた冒険者なのかもしれない。


 周囲の冒険者達の会話を聞いたアレスが改めて金髪の女性を見ると、他の女性の冒険者にはない魅力のようなものが感じられ、加えて言うと彼女の手に持っている武器も周囲からの目を引いていた。金髪の女性はアレスと同じように右肩に自分の背丈くらはありそうな武器を担いでおり、その武器は鋼鉄製の柄から複数の機械が繋がった動物の背骨のようなパーツが伸びていて、更に背骨のようなパーツの先には人間の胴体くらいの大きさの鉄球が繋がっているという異様な武器であった。


「……誰ですか?」


 金髪の女性がアレスに近づこうとすると、コトリがアレスを庇うように彼の前に進み出て、警戒するように目を細めながら金髪の女性に何者かと尋ねる。


「私の名前はティオ。この星をメインに活動している冒険者で怪しい者じゃないよ。ちょっと懐かしい相手を見つけたから声をかけてみたってわけ」


「……懐かしい相手?」


 金髪の女性、ティオが微苦笑を浮かべて言うとコトリは首を傾げる。


「そうよ。……ここで立ち話をするのも他の皆の邪魔になるし、何処か別の場所で話さない?」


「……アレス様、どうしますか?」


「……そうですね。せっかくですから話だけでも聞いてみましょうか?」


 ティオの提案にコトリがアレスに意見を聞くと、ティオに興味を覚えていたアレスは、話をしていれば途中で彼女からこの星にあるダンジョンの情報も聞けるのではと考え、ティオの提案に頷いた。

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