2章 ゔぇんざていこく

011 - こっきょうをこえた! -

011 - こっきょうをこえた! -



シリィの街に到着して今日で4日目だ、僕達はまだ国境を超えていない。


ミアさんは予定通り魔導列車に乗り込み国境に向けて出発した、ところが出入国管理所でトラブルがあったのだ。


管理所でミアさんが差し出したのはハンターギルド発行の身分証・・・でもミアさんは死亡扱いになっていて失効していた。


泣きながら魔導列車に乗ってシリィの街に戻るミアさんを眺めながら僕とロリーナは頭を抱えた。


街に戻ったミアさんが宿に入ったので僕はアイテムボックスの中に呼び出す。


「あの2人がギルドに死亡届を出していたのでしょうね」


「再発行はできないのかな?」


「本人がギルドに行って生存を証明すればもう一度発行してくれるわ・・・有料だけど」


「・・・うりゅ」


ロリーナの言葉にミアさんが涙目になる、もうお金が無いのか・・・。


僕はミアさんに金貨を1枚握らせた。


翌日ハンターギルドで身分証の再発行手続きをする、本人確認は思っていたより簡単で水晶のようなものに手と身分証を翳すだけで済んだ、ちなみに身分証を紛失している場合はもう少し面倒な事になるようだ。


ミアさんは本人確認の後でギルド長室に連れて行かれて何故すぐに申し出なかったのだと叱られていた。


ロリーナによると、ハンターの初回登録時に謎の水晶を使って魔力の波形を登録するのだとか・・・これは魔力紋といって人によって全員違うらしい。


ハンター身分証の再発行にはギルド本部との事務手続きが必要なので3日かかり、費用は銀貨5枚と凄く高額だった。





身分証の再発行が完了してミアさんは再び魔導列車に乗り国境の出入国管理所へ向かった、そこでまた試練が襲いかかる・・・。


管理所には前回とは違う中年の検査官が居た、ミアさんをいやらしい目で値踏みして怪しいところがあるからと個室に連れて行かれてしまった!。


「運が悪いとたまに当たるのよ、金銭を要求したり所持品検査だと言って女の身体を触る悪質な検査官・・・でも後々訴えられると都合が悪いから暴行や強姦みたいな事はされないわ」


「えぇ・・・」


僕とロリーナは涙目で個室に連れて行かれるミアさんをアイテムボックスの中で眺めている事しかできない・・・。


最初ミアさんは検査官から金銭・・・いわゆる賄賂をを要求されたようだ、それを拒否すると出国検査と称して全裸に剥かれて隅々まで調べられた。


「あの手のクソ野郎は屈強なハンターや後で訴えられそうな家族連れにはやらないわ、狙われるのは若い女性の一人旅ね、ミアのように弱そうな駆け出しハンターなんて美味しい獲物だわ」


検査官が泣いているミアさんの貧相な胸に手を伸ばそうとするのを見て僕は我慢出来なくなり個室に「箱」を仮置きしてミアさんを回収した。


もちろん検査官の男もアイテムボックスの別の空間に時間を止めて放り込んでいる。


「えぐっ・・・ひっく・・・ぐすっ・・・」


「ミアさん泣かないで・・・」


「わぁぁぁん!」


「ロリーナ、どうしよう」


「私に言われても・・・」


「ぐしゅ・・・恥ずかしかったの・・・お尻の穴まで見られちゃった」


僕はミアさんの頭を撫でて落ち着かせる。


「この場所にあのクソ野郎を出せるかしら」


ロリーナが僕に尋ねる。


「できるよ」


「じゃぁ私達の姿を見られないように後ろ向きで出して、私が魔法で眠らせるわ」


「うん」


僕は別の場所に入れてある男を目の前に出した。


「なっ、ここはどこだ!」


「・・・スリープ」


どさっ!


ロリーナの魔法陣に身体を包まれて男が膝から崩れ落ちた。


「個室に戻ったら服を着て外の誰かに助けを求めなさい、男は急に倒れたと言って適当に誤魔化して・・・それから貴方の下着を手に握らせておけば面白い事になるわよ」


こくり・・・。


まだ涙目のミアさんが頷いた。


「じゃぁ頑張ってね」


・・・


僕はミアさんと男を個室に戻し、仮置きしていた「箱」を回収した。


ミアさんの様子を確認すると・・・パンツ以外の服を着た後部屋の外に出て他の検査官を呼んだ、男が持っている下着や自分の胸を指差して服を脱がされ胸を揉まれそうになったと訴えている。


「あの男は良くて謹慎か減給、上司がまともならクビになるかもしれないわね」


その後ミアさんは別の検査官によって手続きを済ませ無事に出国が認められた。












・・・


「長い旅だったね・・・国境を越えたら報酬とは別にミアさんに何かお礼をしないと・・・」


「甘やかしちゃダメよ・・・」


「でもいくらなんでも可哀想過ぎるよ」


「・・・確かにそうね、リーナがしたいのなら好きにすればいいわ」


ロリーナの許可が出た、お礼は何にしようかな?。







出入国管理所を出た魔導列車はミアさんを乗せて国境に向かっている、ロリーナによるとあと1刻もすればヴェンザ帝国に入るそうだ。


メルト帝国とヴェンザ帝国は特に国同士の仲が悪いわけではないけれど国境には広い無人地帯がある。


時々衛兵が見回るくらいで建物も高い塀も無いゆるい国境・・・そのかわり出入国の管理は結構厳しい。


無人地帯を越えると点在する建物の様子が変わってきた。


白い石壁に茶色い屋根のメルト帝国とは異なり白い石壁は同じでも屋根は青系統が多く、すぐ近くに見える蒼い海との対比が印象的だ。


「綺麗な所だね・・・」


「そうね、昔1年くらい滞在した事があるけれどここは住みやすくていい街よ」


魔導列車の走っている丘から海までは緩やかな斜面になっていてそこに張り付くように家やお店が建っている、坂や階段がやけに多い街だ。


「ミアが宿に着いたら私達も外に出る準備をしましょう」


「まだメルト帝国の国境に近いよ、大丈夫かな?」


「スキナンジャー商会は領地の中では大きな力を持っているけれど他国で好き勝手な事は出来ないわ、それにフードで顔や耳を隠しておけば大丈夫よ」







・・・


「何で私までリーナと同じ格好をしなきゃいけないのよ!」


「だってこの格好で歩くの恥ずかしいし、2人・・・ミアさんを入れて3人なら大丈夫かなって」


「私は大丈夫じゃないわ!」


ヴェンザ帝国東端の街、ヴロックに着いたミアさんが魔導列車を降りて宿に入った後、僕達は宿の部屋に「箱」を仮置きして街に出る相談をしている。


今僕が着ているのはミアさんが買って来てくれた高級斥候服一式だ、あれから一度も脱いでいないけれどアイテムボックスに出入りする時やお手洗いの後に汚れを分離して不法投棄の谷に捨てているから清潔だ。


ロリーナは透けている感じが無くなって人間と見分けがつかなくなっている、あとはすり抜けずに物に触れられるようになれば完璧だ。


僕達が話し合っているのはロリーナの服装について・・・自由に見た目を変えられるロリーナだけど今の格好は上が僕とお揃いのフード付きの上着で下はハーフパンツだ。


僕としてはお揃いの格好で出かけたいと主張したのだけどロリーナが身体にぴったりとした服は恥ずかしいから嫌だと言う。


「たまには僕のお願いを聞いてくれてもいいと思うの・・・お願いロリーナ!」


「っ・・・」


僕は上目遣いでロリーナを見る、もう少し押せばいけるかな?。








「やはり恥ずかしいわ」


「大丈夫、可愛いよ」


今僕とロリーナ、ミアさんの3人はヴロックの街の大通りを散策している。


僕とロリーナはフードを目深に被っているから顔は分からないしエルフ特有の尖った耳も隠れている、ミアさんはいつも通りのえっちな格好だ。


「ここはどうかしら、貸店舗の看板が出ているわ」


「大通りの一等地だよ、建物も大きいし目立ち過ぎるかも」


「そうね・・・別のところを探しましょう」


僕達は大通りを歩きながら拠点になる家を探しつつお買い物を楽しんでいるところだ。


ミアさんにも銅貨を渡してあるし、実体化できたらロリーナはハンターギルドで首を落とした魔狼を換金したいと言っている。


もちろん僕と一緒に行動して魔法を教えてくれたお礼としてロリーナには金貨を沢山渡すつもりだ。


「ここに入ろう!」


大通りにお店を構えるハンター専門の武器屋があったのでミアさんの手を引いて僕は中に入った。


「すごいねー」


お店の中には武器や防具が沢山飾ってあった、更に奥へ進むとハンター用の衣装が置いてあるのは事前にロリーナに聞いていたとおりだ。


「今からミアさんのお洋服を選びます、僕とお揃いの服にしましょう!」


「え・・・でもこんな高いお店で・・・」


「今までお世話になったお礼です・・・あ、この棚が僕のと同じブランドかな?、ミアさん好きな色を選んでね」


「・・・本当にいいの?、私このブランドの服ずっと欲しくて・・・遠慮しないで選んじゃうよ」


「もちろん、お金は僕が全部払うから安心してください!」


「うりゅ・・・」


ミアさんが泣き出したよ!。









「それでいいの?」


「うん・・・」


ミアさんが選んだ服は僕と同じ斥候服の色違い・・・ミアさんは僕みたいな幼児体型と違って胸は貧相だけど手足が長くてスタイルがいいからこれを着たらとてもエロいだろう。


ミアさんは欲しかった服が手に入ってご機嫌だ。


「他に欲しいものは無いです?」


僕はミアさんに尋ねる。


「あの・・・防具を買っても・・・いいかな?」


ミアさんは遠慮がちに聞くけれどこの店は高級店だ、商品に付いている値札に遠慮が全く感じられない・・・でも僕には駄女神がくれた金貨が大量にある!。


「もちろんいいですよ、好きなのを選んでくださいっ!」


小走りでミアさんが防具コーナーに向かっているのを見送り、僕は斥候服を選んでいる。


「そのいやらしい服をまだ買うの?、普通の服もあるわよ」


ロリーナが呆れたように呟く。


「僕のじゃないよ、ロリーナとネリーザの分も買っておこうと思って・・・3人お揃いで可愛いと思うの」


「ちょっと待って!、どうして私も着なきゃいけないのよ!」


ロリーナが凄い勢いで僕に抗議する、そんなにこの服着るのが嫌なの?・・・。


「実体化したら着られるよね、精霊化したい時にはアイテムボックスに入れておけばいいし」


「私はともかくネリーザは貴族令嬢でしょ、着るわけないし周りが止めるわよ!」


今度はネリーザを盾に購入を阻止しようとする、でもこの服は見た目がえっちな事を我慢すれば動きやすいし快適だから僕は気に入っている。


とたとたっ・・・


「お待たせしました、これっ!」


防具を見ていたミアさんが戻ってきた、手には高そうな革の防具と短刀を持っている、本当に遠慮する気がないようだ・・・。


「じゃぁ支払いに行って来るね」


僕とミアさんはまだ何か言いたそうにしているロリーナを置いて会計に向かった。


お金を僕が支払い隣ではニコニコとご機嫌なミアさんが立っている、目の前のカウンターでスキンヘッドのいかついおじさんがチラチラと僕の手首に嵌められた枷に視線を向けながら会計してくれた。


「金貨4枚と銀貨8枚、銅貨の端数はおまけしてやろう」


「わーい、おじさんありがとう!、大好き!」


僕は満面の笑顔でおじさんに言った、フードをかぶっているから口元しか見えないけどね・・・。


「幼女に好かれてもなぁ・・・」


おじさんが照れたように呟く、この街でしばらく滞在するのだから愛想よくしておいて損は無い。


ミアさんはお店の試着室を借りて買ったばかりの服に着替えていた・・・予想していた通りミアさんが着るととてもえっちだ。





・・・


「日本円に換算すると190万円ちょっと・・・高いなぁ」


お店を出た僕は思わず呟いた、斥候服3着が代金の殆どを占めているとはいえハンターの装備はかなり高価だ。


「装備に命を預けるのだから値段が高いのは当然よ」


僕の後ろでは抵抗を諦めたロリーナが答える。


ミアさんの荷物は僕が預かり、次に実家に戻る時に持って行く事にした。


この街の近くには森や危険な魔物が出る場所が無いので街の人達は誰も武装していない、ここで革鎧なんて着けていたら悪目立ちするだろう。


賑やかな大通りを抜けて路地に入ると美味しそうな匂いが漂ってきた、この辺りは飲食店が多いようだ。


くぅぅ・・・きゅるる・・・


ミアさんのお腹が豪快に鳴った、どうやら空腹らしい。








アイテムボックス(0)(駄女神管理)

金貨:沢山

食料:沢山


アイテムボックス(1)

リーナが作った部屋:1

中二病くさい剣:1

下着:2組

ミアさんの家から貰ったソファ:1

剣士と魔法使いの服、剣、財布:1

強盗の服、財布:1

ミアさんが買った防具、短刀:1

ミアさんが着ていた服、靴:1

斥候服(ロリーナとネリーザ用):2


アイテムボックス(2)

リーナのう⚪︎こ:少量

ゴミ:少量


アイテムボックス「箱」

1:メルト帝国、大森林(不法投棄用)

2:ミアさんに貸出し

3:メルト帝国、大森林の野営広場

4:メルト帝国リーシオの街、ミアさんの部屋

5:メルト帝国ズィーレキの街、路地裏

6:メルト帝国シリィの街、駅の近くの路地

(仮置):ヴェンザ帝国ヴロックの街、宿の部屋







近況ノートにイラストを投稿しています。


https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/822139841772831106

ミアさん(新しい服)


https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/822139841772862998

ミアさん(新しい服+眼帯)


https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/822139841772914370

ロリーナさん(新しい服)


https://kakuyomu.jp/users/hkh/news/822139841374492748

リーナさん(包帯)

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