主人公、鮫島。
彼は生粋のアニメヲタクだった。
だけど、ある日。
屋上で、幼馴染の河本に浮気され、挙げ句の果てには
「アニメオタクってキモいと思う」
と心無いことを吐かれ、そのまま疎遠となった。
苛立ちとも、失望とも、なんとも言えないドス黒くて気持ちの悪い「感情」を押さえ込もうとしていたところ。
伊藤という美少女が鮫島に声をかける。
彼女は発達障害を患っており、クラスの男子からは腫れ物扱い。
さらには容姿だけを見ていた元カレにも障害のことを理由に別れを告げられていたと言う悲しい過去があった。
二人は何か共鳴し合う部分があって、自然に惹かれていくが……?
障害。
本作では障害について多く取り扱われており
「自閉スペクトラム症」
「ADHD」
など様々な生まれ持ってした病気を患っている人々が多く現れます。
今回は焦点をそこに当ててみます。
障害と聞くと、多くの人々は悪く思いますが、本作の主人公は障害についてこう語っています。
「障害っていうのは一種の特性で、色鉛筆のようなもの。それぞれが自分の色をもっていて、その色彩も豊か」
僕は、このセリフに強く惹かれました。
障害は障害だから、しょうがないよねで一括りするのではなく、障害は「特性」だからそれで輝けるものもあると。
主人公は皆が一人の人として接しています。
これは現代社会でとても大事だけど、できていないことが多い事象です。
ならば、みんなが特別な色を持つ色鉛筆だとしたら?
自分にしか表現できない一つの色。
誰かと一緒になって創り出される色。
使い道は自由。進み方も自由。その速さも自由。
これは一つの大きな絵画を完成させるために走る彼らが紡ぐラブコメディである。
捉え方は人それぞれ、少なくとも僕はそう感じました。
もどかしくとも、恥ずかしくとも。
きっとみんなでゴールに向かえる。
友達以上、でもまだ誰とも分かち合えない――
そして、物語は今、動き始める。
屋上で、幼馴染の関奈に告げられた。
「ごめん、他に好きな人ができたの」
楽しそうに笑う彼女と、孤独な僕の心。
風が冷たく胸を刺す――
放課後、ふらりと立ち寄ったアニメショップで、春風に出会う。
黒髪の長い髪。クールな表情。
でも瞳の奥には、言葉にできない孤独があった。
「私は…貴方とは分かち合える」
「私ね、自閉症があるの。人との距離が分かりにくくて、感情もすぐには理解できない」
「だから、急に感情的にされると怖くなる」
家に招いた二人きりのリビング。
親は不在。静かな時間。
「まずは友達として、一緒にいてくれる?」
「もちろん」
小さな笑い、赤面、微かな触れ合い。
不器用で、純粋で、でもどこか切ない時間――
日常の隙間に、確かに存在する特別な瞬間。
友情と自己理解の狭間で揺れる日々。
少しずつ、互いの違いを認め合い、歩み寄る。
でも、完全に分かり合える日はまだ遠い――
まだ始まったばかり。
春風と僕が、少しずつ互いの距離を知り、世界と自分を理解していく――
切なくて、でも確かな青春の物語。