第16話 坂本芽郁の過去
☆坂本芽郁サイド☆
どうしてコイツという奴は。
そう思いながらアタシは...春風と歩く。
春風を見ているとか一緒に居るとムカつくというか。
心がもどかしく訳が分からない感情になる。
どうしてなのか。
「芽郁」
「な、なんだよ」
「これ可愛い」
「...ああ。爪のネイルな。可愛いだろ?」
春風はデコられたピンク色のそのネイルを見ながら「可愛い」と言いながらニコニコする。
アタシはそんな姿を見ながら周りを見渡す。
そこに可愛らしいアクセサリーがあった。
春風を見る。
「春風。ちょっとこっち来い」
「え。何」
「良いから」
それから春風を引っ張りアタシは鏡の前に立たせる。
そしてアタシは「女の基本。男に好かれるには内面も外面も必要だが基本的に全てはやりすぎない事な」と話す。
春風にアタシはネックレスを選ぶ。
そしてアタシは「お前にゃ可愛いネックレスが似合いそうだ。つーかアタシより可愛いしな」と言う。
春風は「ありがと」と言う。
「気にすんな」
「うん。あ、せっかくなら一緒の物、買いたい」
「ああ...は?一緒?」
「ん。一緒のおそろい」
「バカ言え。恋人じゃねーんだぞ」
「違う。私は友人としておそろいが欲しい」
「...!」
「そんな事に時間使うとかウザいわ。友人より大切なん?」
おそろいとの言葉に。
アタシは嫌な記憶が蘇る。
春風は別物。
だがアタシは...。
「どうしたの」
「!...いや。なんもねーよ」
「凄い汗」
「...気にすんな。昔の事を思い出したんだ」
その言葉に「?」を浮かべる春風。
そうだ。
この記憶には蓋をするべきなのに。
毎回毎回ウザいぐらいに復活してはアタシを...暗闇に落とす。
地獄の世界に叩き落とす。
「私は」
「...?」
「当時は私は貴方を見る事しか出来なかった」
「...ああ」
「...だけど当時とは違う」
それからアタシの手を握る春風。
アタシは驚愕して顔を上げる。
そして春風を見る。
春風はアタシを見ながら「...話、聞く。貴方の...辛い事、共有」と真剣な顔をする。
アタシはその姿に「...アタシは別に」と言う。
春風は「私じゃ頼りにならない?」と困惑する。
違う。
「違う。春風。...アタシは...」
「何があったの」
「...笑わないか?この強迫観念を」
「笑わないし絶対に馬鹿にしない」
「...アタシさ」
ネックレスを見ながら「この店は...前に友人と来たんだ」と話しながら鏡を見る。
その言葉に「うん」と頷く。
春風に「だけど杏奈との件で忙しくて色々と喧嘩して最終的に棄てられたんだ」と話す。
「ガキっぽいだろ?」
「...今日は杏奈ちゃんは」
「ああ。学童だな」
「...それはおかしい事じゃない」
その言葉にアタシは春風を見る。
春風は「それは相手が悪い」と怒る。
アタシは「...杏奈は当時はまだ子供だった。だから友人としての時間が取れなくてな」と話す。
それからネックレスを見てから苦笑い。
「多分、アタシが狂い始めた、不良になったのはその頃からだな。ガキはアタシだ」
「...でも貴方は障がい者を理解した」
「?」
「私は貴方は素晴らしい人だと思う」
その言葉に自然と泣いていた。
涙が止まらなくなってしまう。
春風はアタシを連れて外に出た。
それからベンチに腰掛けてから抱きしめてくる。
マジに抱きしめるな、良い加減にしろ。
そう言いたかったが。
出来なかった。
「私」
「?」
「実は将来の夢がある」
「それはどういう夢だ」
「私、アニメの専門保育士になりたい」
その言葉にアタシは目をパチクリして鼻を鳴らしてから「似合ってるじゃねーか」と言いながら春風を見る。
春風は「...貴方は?」と聞いてきた。
アタシの夢...?
「アタシは夢なんかねーよ。不良が夢見たらおかしいだろ」
「...じゃあ一緒に保育士にならない?」
「!」
「私、杏奈ちゃんの件もある。貴方はそれなりに似合っているって思ってる」
春風はそう言いながらアタシをジッと見る。
アタシは「...そうだな」と笑みを浮かべてから「サンキューな」と言う。
すると春風はニコッと微笑んだ。
それから「私、貴方に出会えて良かった」と春風は言った。
アタシは「ああ。アタシも思う。アンタに出会えて幸せだ」と言いながら春風に笑みを浮かべた。
「じゃ、戻ろうか」
「...ああ。全て途中だったしな。戻るか」
それからアタシはゆっくり立ち上がる。
そして春風の手を握りゆっくり立ち上がらせた。
そうしてからアタシは春風に笑みを浮かべてから一緒に店に戻ってからネックレスを選ぶ。
その際に春風が「私、貴方のネックレス選びたい」と笑顔になってからアタシを見た。
アタシはその言葉に「ああ。サンキューな。じゃあアタシに似合いそうなネックレスも買うか」と柔和になる。
もう大丈夫だ。
アタシには春風。
そして鮫島も居る。
杏奈も居る。
仲間達が居る。
昔と違ってこうして分かち合えれて本当に幸せだ。
「芽郁」
「なんだよ」
「さっきより満足のある笑顔になった」
「...そうだな。どこぞの誰かのせいでな」
「どこぞの誰か...?」
「お前だよ。気付けよ」
「あ...えへ」
「あ、お前!わざと言わせたろ!超絶に恥ずかしいんだからな!」
「言わせた」
「お前な...」
ったくこのクソ馬鹿野郎め。
恥ずかしさMAXだからな。
マジに恥ずかしいんだからな。
言わせんなよ。
でもまあ嫌な気はしない。
コイツと一緒だからだろうけどな。
大丈夫。
アタシは生きていける。
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