第15話 春風の吹く
私は坂本さんに誘われて坂本さんと放課後にデートする事になった。
まあデートじゃなくて...買い物だけど。
でも坂本さんは「デートだな」と表現していた。
私は苦笑いを浮かべながら坂本さんの下に向かう。
坂本さんは「おう」と言った。
「じゃあ行くか」
そう話す坂本さん。
私は恥じらいながら笑みを浮かべた。
すると鮫島くんが聞いてきた。
「どこ行くんだ?お前ら」という感じでだ。
そんな鮫島くんに坂本さんは「あ?どこでも良いだろうが?」と怒りながら言う。
鮫島くんはかなり厳ついその顔に「お、おう」となる。
それから顔を引き攣らせた鮫島くんに「ったく」と坂本さんが言ってから向く。
「デリカシーがねーぞ」
「デリカシー...」
「そうだ。女子同士。伊藤とで遊びに行くんだ。邪魔すんな」
「オイ...邪魔しているのはお前じゃないのか」
「は?殺すぞ?」
めちゃくちゃ怒られた。
私はそんな姿に「ゴメンね。鮫島くん」と謝る。
鮫島くんは「いや。まあ交渉の上なら問題はないんだが」と言ってから私達を見てくる。
それから何かを言いかけたが黙る。
「鮫島くん?」
「...いや。なんでもない」
それから苦笑する鮫島くん。
そして鮫島くんは「なら気を付けてな」と言う。
私達は「うん」と頷きながら鮫島くんと別れてから歩き出していると「ねえ」と前から声がした。
それはアイツだった。
「何だ。河本」
「アンタらいつから仲良くなったわけ?それからあんな暴力男と付き合うなんて正気?」
「彼は...」
そこまで私は不愉快げに言うと手で坂本さんに遮られた。
それから坂本は薄ら笑いを浮かべながら「それはテメーがあくまで悪いだけだろ。河本。なんつーか悪い臨界点を超えたんだ。それでビンタが飛んだ。...自業自得だな」と苦笑した。
河本は「は?」とキレ気味で私達を見る。
そして眉を顰める。
「調子に乗んな。売女の癖に」
「売女だろうがなんだろうが構わねぇよ?アタシは売女と同じくらいのクソみたいなドブ不良だしな」
「...」
河本は「...あんな暴力男のどこが良いんだか?」と肩をすくめてから歩き出す。
それから河本は私達に「私はアンタ達を不愉快に思ってるから。どうなっても知らないから」と言う。
私は不愉快な顔で河本を見る。
「アニメオタクなんて心底キモい」
「知らんようだがな河本。この日本はアニメオタクに支えられている部分もあるぜ。テメーみたいな論外は死ねよ」
「...」
さぞ不愉快なのだろうけど。
河本は眉を顰めてから私達を睨む。
私は坂本さんを見る。
坂本さんは口角を上げてから「今から悔い改めな。その性格をよ」と言い放つ。
河本は「めっちゃ腹立つね」と吐き捨てて去って行った。
私はその姿を見てからあっかんべーをした。
「つうか腹立つのはお前だっつー話だ。じゃあ行こうか」
「あの」
「ああ。大丈夫か?」
「...芽郁。大丈夫」
「が?」
私は芽郁を見上げる。
すると芽郁は「な、な、な」と動揺する。
その姿にクスクスと笑う。
それから芽郁に「貴方も。下の名前で」と笑みを浮かべる。
芽郁は「何を名前で...」と動揺しまくっている。
「あた、アタシは良い。つーか名前は止めろ。むず痒い!」 「止めない。私、貴方が気に入った」
「名、名前で呼ぶなって!うわ!抱きつくな!?」
芽郁は慌てていたが嫌がる事はしなかった。
私はそんな姿にニコッとしながら芽郁の手を引いた。
それから駆け出して行く。
芽郁は足をもつれさせながらも付いて来る。
「...なあ!伊藤...」
「何?芽郁」
「伊藤!アタシは...」
「私の名前は春風」
その言葉に芽郁は「...あのな。アタシなんかを名前で呼んでも...」と言いながら俯く。
私は立ち止まる。
それから踵を返してから芽郁を見る。
芽郁は「?!」と私を見てくる。
私は芽郁を真っ直ぐに矢で射抜く様に見る。
芽郁は私をジッと見る。
「私は...良い奴じゃないんだ。そもそもが間違ってるんだ」
「...」
「だけどそんな私でもお前は...春風は...」
涙を浮かべてから唇を噛む芽郁。
私は「芽郁って良い名前」と告げる。
芽郁はゆっくり顔を上げた。
それから「叔母さんが付けた」と言う。
芽郁は私をジッと見る。
そして仕方が無さそうな感じで「分かった」と答えた。
「私はお前を春風と呼ぶ。お前が呼べって言った」
「それで良し」
「で。春風。アタシに付き合ってくれるか」
「それは私の為。あ、終わった後。私の家に来て」
「は!?あ、アタシなんかを招く気か!」
「杏奈ちゃんも」
「話を聞け!アタシは...」
「...髪色とかピアスとか?」
「そうだ。アタシは...」
私は「気にならない」と言ってから「芽郁。私の姉も昔は不良だったから」と告げる。
芽郁は「は?」となる。
「私の姉は...不良だった」
「...今はどうなんだ」
「今は違う。不良を引退した。そして私を守ってくれる」
「...」
芽郁は私の言葉に「まさかその姉とやらはお前の事を守る為に不良になっていたのか?」と聞いてくる。
私は頷いた。
それから私は「姉は私を守る為に犠牲に全ての犠牲を重ねた」と言ってから芽郁を見る。
芽郁の手を握る。
「私、貴方は認める友人」
「...」
「お姉ちゃん泣く。多分」
「...アタシなんかが見られたら外見で幻滅されないかな」
「されない。寧ろ...私は貴方を。杏奈ちゃんを紹介したい」
「...分かった。アタシの負けだよ」
それから芽郁は私を見る。
真っ直ぐに信じる様に。
そして笑みを浮かべてから苦笑した。
私はその姿にニコッと笑んだ。
初めてのお友達。
それも私の大切な。
だからお姉ちゃんに紹介したいって思う。
心から。
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