第10話 一喝
それからというものゆっくり時間は過ぎていきそのまま4時間目になった。
俺は立ち上がりそのまま伊藤さんに近付く。
すると伊藤さんは俺の姿に理解した様に立ち上がった。
その時だった。
いきなり男子生徒が歩いて来てから伊藤さんを押し飛ばした。
伊藤さんはまさかの事に受け身になれず蹌踉めく。
「ああ。すまんw」
伊藤さんに対して男子生徒はそう平謝りする。
俺は「お前、わざと過ぎるだろ」と怒る。
すると男子生徒は「は?謝っただろうが」と怒り出した。
俺は怒り混じりに「あ?」となる。
「謝ったって言ってんの」
「ざけんな!」
俺とそいつで言い争いになる。
騒ぎになる教室。
すると伊藤さんが「待って」と制止する。
それから俺達を見る。
伊藤さんは「喧嘩駄目」と言った。
こんな奴の味方をする気か。
そう考えながら俺は伊藤さんの言葉に引き下がる。
だが教室はあまり良さげな感じに見えない。
すると関口が「なにしてるの!?」と騒ぎが起こっているこの教室に入って来た。
関口は怒りの眼差しをしている。
俺は関口に事の有り様を説明すると怒りながら「先生呼ぶから」とキレた。
だが「伊藤さんが悪いな。色々と調子に乗ってるからさ」とクソ生意気な感じで関口に言った。
「そうだそうだ」
「調子に乗るんじゃねーよ」
ふざけた奴らだ。
そう考えながら俺は全員を見渡す。
すると不良っぽい奴が一喝した。
「るっせえぞてめーら!」という感じでだ。
俺達は「!」となり不良の彼女を見る。
この不良...確か名前は坂本芽郁(さかもとめい)だったか。
「何だようるせーな!ちまちまちまちま!陰湿だぞ!」
「な、何だよ。坂本」
「つーかテメーら金玉ついてんのか?男だろ!寄ってたかって弱い者イジメすんじゃねーよ!」
「...」
黙る男子達。
俺はその姿に坂本を見る。
坂本は「苛つくわ。陰湿な行為をしてるテメーら見てると」と言う。
金髪のギャルだが。
出来る時は出来るんだな。
そう考えながら坂本を見る。
解散する男子達。
「坂本さん。ありがとう」
関口がそう言う。
すると坂本は「別に。スマホの操作の邪魔になったからな」と回答した。
俺達も「坂本。ありがとな」と言う。
坂本は俺を見た。
それから「...しっかりしろ。テメーの彼女なんだろ?」と俺を見据えながら言う。
「...アタシは陰湿なもんはすげー嫌いだ。だがな。女を守れない奴は更に嫌いだ」
「...坂本...」
「テメーの彼女だろ。しっかり守れや」
そうぶっきらぼうに言いながらスマホに視線を落とした。
坂本が何故こんな真似をしたのか分からなかったが。
後に聞いた噂で「成程な」と言ってしまう。
それはどういう噂かというと。
坂本には発達障害を持つ妹が居るらしかった。
☆
そんな事件の後。
俺達は屋上にやって来た。
それから俺は伊藤さんに聞いてみる。
「大丈夫か」と。
すると伊藤さんは笑みを浮かべた。
「君、格好良かった」
「俺じゃない。坂本だ。半分以上の手柄はな」
「坂本さん...なんで助けてくれたのかな」
「分からんな」
それから俺は伊藤さんお手製の弁当を食べる。
伊藤さんは笑みを浮かべながら俺を見る。
俺はそんな顔に「美味しいな。伊藤さん」と柔和な顔で伊藤さんに向いた。
伊藤さんは「美味しい?良かった」と俺を見る。
「私、今のクラスが好きかも」
「え?」
「関口さんも助けてくれる」
「...確かにな」
伊藤さんは俺に顔を向ける。
それから伊藤さんは「またお礼を言わないと」と言った。
俺は「優し過ぎるよ。伊藤さん」と苦笑いを浮かべた。
そして伊藤さんを見る。
☆
「おい」
「は?!」
いきなり目の前にいきなり坂本が現れた。
俺を険しい顔と目つきで俺を見下ろしている。
何だコイツ。
これまでにコイツから話しかけられた事はないぞ。
考えながら「な、何だ」と返事をする。
すると坂本は「ちょっと面貸せ」と言った。
「え」
「良いか?」
「いやまあ...時間は有るが」
「なら面貸せ」
それから俺は廊下に連れて行かれる。
そして俺は「アンタさ」と聞かれる。
俺は「?」を浮かべて坂本を見る。
坂本は「障がいってもんをどう思う」と聞いてきた。
俺は「障がい?」と驚く。
頷く坂本。
「アタシは障がいを馬鹿にする奴らは嫌いだ」
「...俺に聞くのかよ」
「ああ。だからアンタの回答次第ではアンタをぶん殴る」
「ひっでぇなそりゃ」
俺は坂本に苦笑する。
それから俺は伊藤さんを見てから坂本に向く。
「お望みのご回答だが...俺は障がいは特性だと思う」と回答する。
坂本は「!」となってから俺を見る。
俺はそれを見ながら「特性だ。個性的な色鉛筆の様なものだ」と言った。
坂本は俺を見据える。
「俺は個性的な色。つまり...障がいは誰にでも個性的な七色を発揮するって思ってる」
「...そんな回答は初めて聞いたな。...アンタはアタシの妹を馬鹿にしないか?」
「は?どういう意味だ」
「私の妹は発達障害がある。挙句の果てには家がすげー貧しくてな」
その言葉に俺は「そうなんだな」と坂本に話す。
坂本は「だからアタシは...障がいを馬鹿にする奴らは絶対に許さないから。そういうのはマジに嫌いだ」と言う。
俺は無言で坂本を見る。
それから坂本は顔を上げた。
「...アンタの事、多少は見直したよ」
「は?」
「...機会があればアタシの妹に会わないか」
その言葉に俺は坂本を見る。
坂本は俺に少しだけ笑みを浮かべた。
俺はその姿に驚く。
それから直ぐに厳つい顔に戻ってから「何だよ」と坂本は思いっきり俺を睨んだ。
俺はそんな姿に苦笑しながら「なんでもねぇ」と肩をすくめ笑みを浮かべた。
ったく素直じゃないね。
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