第5話:掌の上で転がされるセンパイ
撮り終えた後、ソウヤは言った。
「カホ、このまま手錠して歩こうか?」
「いいですよ。センパイといい感じだし」
「センパイ罪人似合うし…」
そう言ってから、カホはニヤリと笑って余計な一言を付け足した。
「センパイのエロ心を満足させてあげます」
「……一言、余計なんだよな」
ソウヤが苦笑すると、カホはすかさず挑発的に言い放った。
「何言ってるんですか。刺さないカホはただのブタです!」
ソウヤは思わず吹き出した。 なんかどこかで聞いたセリフだが、自分のことをブタよばわりする潔さがカホらしかった。
結局、手錠はそのままつけて歩くことにした。
「なんか、いろいろ振り回すカホも、ちょっと照れてるカホも、どっちもかわいいな」
するとカホは真顔で言った。
「センパイには、いろいろなカホを知ってもらいたいです!」
その言葉に、ソウヤはマジでドキリとした。
「マジでドキリとした」
そう伝えると、カホはさらに笑って言った。
「これからもっともっとセンパイのこと、ドッキリさせてあげますから。期待してくださいね!」
そして、お約束の一言を言い放った。
「エロエロ大魔王のセンパイも大満足です!」
ツンで振り回されるカホも、デレで素直になるカホも、どっちのカホも悪くない。 カホといると楽しいし、退屈しない。ソウヤはカホと2人ですごすことで、これからの生活が一気に楽しくなりそうな予感がした。
江の島を満喫した二人は、帰路についた。 まだ手錠をしたまま歩いたので、江の島大橋を渡っている時も、ドキドキは続いていた。
「カホ、なんか今日ものすごくドキドキしているんだけど」
「カホもドキドキしています…」 カホは赤くなって、もごもごと返事をした。
「センパイ、カホをこんなにドキドキさせたんだから…責任とって下さい」
と、上目づかいにソウヤの顔を覗きこんで、いつものいじわるな顔に戻って――
「今の、ドキとしました?惚れました?」と、にやりとした。
「最後に夕日見ようか?」
そう言って、江の島大橋を渡りきる手前で東浜の西側に降り、二人は並んで座った。
「なんか、今日、ものすごく楽しかった。また来ような」
「センパイから誘ってくれるんですね…うれしいです」
「カホと会ってまだそんなに経ってないけど、カホとは相性いいと思う」
「あたりまえじゃないですか!カホはいい女なんです!」
カホはいつもの調子に戻ってきた。
「私をこんなにドキドキさせたんだから、やり逃げしたら海に沈めますから」
そう言って、カホはニヤリと挑発的に笑った。
(まあ、まだ、なんにもしてないんだけど・・・)
今日も、雲ひとつなく、オレンジ色から赤みがかった夕日が空を彩っていた。 1回目のデートの夕日もきれいだったが、2回目の夕日はカホとの距離が近づいて、忘れられないものとなりそうだ。 ――たぶん、カホもそうだろう。
夕日が沈むと、少し寒くなってきた。
「そろそろ帰ろうか」ソウヤが言うと、カホもこくりとうなずいた。
「あっ、手錠外さなくちゃ」 カホがカギを取り出して、手錠を外した。
外す瞬間、カホは「なんか、手錠外したくないな」と言った。
「俺も…」と口にすると、カホはまた、うれしそうな顔をした。
そしてニヤリと笑って挑発する。
「手錠を外しても、センパイの心はもうカホのものです!」
ソウヤは来た来たと思いつつ、
「もうカホなしには一秒も生きられないです」 と言うと――
「今日からはカホの掌の上で転がらせてあげますから、覚悟してくださいね」 と、言い放った。
ソウヤは思わず吹き出しながらも、心の奥では本気でドキリとしていた。 冗談ぽく言っていたが、ソウヤの心もすっかり本気モードにシフトしたことに、 本当は自分も気づいていた。
今日のデートで二人の距離が一気に縮まったことは、 二人とも口には出さなかったがお互いわかっていた。
完
後輩のウザ絡み女子に振り回された江の島2回目デート ―乙女のカホと暴虐のカホ― のら坊 @norabou
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