VS『シビリゼ』


両者向かい合う。

誰も動く気配はない。

息を呑む視聴者達は誰一人気付かない。

既に戦いは始まっている。


「炎よ、噴き出せ!我が敵に!」

「水よ、押し流せ。よこしまを!」


『シビリゼ』のメソトミアの炎と『アルジェント』のいい湯の水が拮抗して、蒸気が辺り一帯に広がる。

それを見る前にメメちゃんが矢を番えて、『シビリゼ』へと放つ。

その矢を追うようにプツ巻きとなっさんが飛び出す。

薄れていく蒸気の中でコウガの姿を捉える。

どうやら向こうもコチラに気づいたようだ。

コウガに斬りかかる直前に対面から槍が飛び出してくる。

ニヤリとするコウガにオレは睨むだけだ。

槍がオレに当たる寸前、鎖が槍の穂先に巻き付いた。

驚くコウガに、


「風よ、纏え。我が牙に!」


相棒を信じていたオレは風術で槍に風を纏わせる。

コウガはギリギリで顔を背けるが、風の刃で頬を少し切られる。

そのままコウガは後方へと下がる。

そしてオレに槍を突いてきた男はなっさんの蹴りを受けて、後方に下がらせられる。


「チィッ…、やっぱり厄介だなァ…」

「キミ達も中々の連携だね…!」

「嫌味かよォ…!」


メソトミアが詠唱する。


「炎よ、玉となれ!放て!」


その声を聞きながら、メメちゃんが矢を放つ。


「闇よ、回れ。吸い込め!」


『シビリゼ』紅一点のマヤが闇の玉を浮かべる。

その玉に放たれた矢が吸い込まれる。

メソトミアの放った火球が迫る。


「氷よ、螺旋となりて。回り穿て!」


ポムンとの放った氷槍が回転しながら、火球を打ち破り『シビリゼ』に迫る。

迫る氷槍も闇の玉で逸らして明後日の方向に追いやる。


「あの玉厄介ね…!」

「ウザったいわね…!あの女…」


経験の差はあれど拮抗しているように思われる。

オレはポムンとに雷術を、いい湯に水術をそれぞれ頼む。


「アァ〜!めんどくせぇ!!おい、インダースやれ!」


コウガは茶髪の男に命じる。

茶髪の男インダースは詠唱する。


「我らの肉体よ、枷を外し、その身を起こせ。」


そう詠唱すると、『シビリゼ』達の身体から威圧感が放たれる。

その雰囲気にスケルダンジョンのドラゴンを思い出す。


「さぁ!第2ラウンドの始まりだァ!」


◆◆◆


飛び出すコウガに魔術が放たれる。


いかづちよ、槍となり、敵を穿て!」

「水よ!広がり、押し流せ!」


コウガへと迫る波と複数の雷槍。

コウガは長剣を横に薙ぎ、波を断ち切る。

続けて、雷槍を避ける。

自分に当たりそうな物のみを剣で受け流そうとしたが、雷速の槍を捉えられず身体を麻痺させる。

その隙を逃すことなくプツ巻きが突撃する。

『シビリゼ』のメンバーがサポートに回ろうとしたが、なっさんの棒手裏剣が放たれ、援護に回れない。


「追風よ、我が身を、運べ!」


風を纏い速度を上げたプツ巻きの渾身の突撃が、コウガを捉えようとした時に、強引にコウガが麻痺した身体を押さえつけプツ巻きに剣技を放つ。

麻痺した身体では、ろくに槍を捉える事ができず空振りし、その身に槍の一撃を受けてしまった。


「クソがァッ…!!」


装甲を貫通しダメージを与えられたコウガは血を吐きながら飛ばされる。

立ち上がりながら、プツ巻きを睨みつけるコウガ。


息を吐かせぬ上位勢の戦いに視聴者達は目を離せない。


◆◆◆


荻窪セクトダンジョン第21階層


その配信を見る仮面の少年セト。

その周りには、3体の魔物。

リッパー・マンティス。

エノミティ・スパイダー。

ムソウカブト。

一人と三匹はゆっくりと階段を上がる。

悪夢はすぐ側まで近づいていた。


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