第7話 吸血鬼について

 ……なんか思っていた以上にルルアもフォールのトップもヤバい吸血鬼らしい。

 というか……。


「とりあえず、疑問に思ったんですが、なんで吸血鬼って噂とかフィクションでしか出てこないんです? 普通に考えて……というか、なんか吸血鬼の歴史って長そうですし、存在を隠し通す事は不可能なんじゃ……?」


 そうだろう。

 メディアが気づかない筈が無い。


「お! そこにまずは質問か。それはな、人間側に協力している世界で二番目に吸血鬼になったヤツがな、千年間自分ので全世界ほぼ全ての人間に吸血鬼はそんな噂やフィクションの中での存在って、洗脳してんだ」


 へー。

 …………思ってた百倍くらい凄まじい話だった。

 てっきり、情報規制をしてるとかそのぐらいにしか。

 ってか……。


「……吸血鬼って、能力とかそんなファンタジーなもの使えるんですか?」

「ああ、使える。っても、大体の吸血鬼は体内の血を武器に変えるのだけ、だがな……しかも、変化できる武器限定されてるしな」


 なんか、イレクとゼルゼが嫌な顔をしている。

 それに比べてラノはどこか誇らしげだ。


「ま、イレクのおっさんにゼルゼは落ち込むな! うちは能力も天才だから、そんじょそこらの血を武器に変えるとかなまちょろいもんじゃなかっただけだからな! はっはー!」


 ……どうやら、イレクとゼルゼは血を武器に変える能力らしく、ラノは違うらしい。


「でたよ、ラノの能力いじり……」


 ゼルゼはため息をつく。


「ほんと、うぜぇよな」


 イレクもため息をつく。

 なんか、かわいそう。


「リリちゃんは能力が武器でも落ち込まないでね……ラノの言葉なんて無視でいいから」


 ゼルゼがリリの肩に手をポンと乗せて、そう言った。

 その声色は本当に『落ち込まないでね』の気持ちが伝わる優しい声色だった。


「あ、そういや……なんで、ルルアのヤツ来なかったんだ?」


 ラノが思い出したかのように、ふと言葉を紡ぐ。


「確か、『ホントは行きたいんだけど、今日はリースとの大事な会議があるから』ってルルア様、言ってたね」

「“リース”?」


 ゼルゼの言葉に反応するリリ。

 というか、初めて聞く単語だ。

 いや、もしかして人名かも?


「そういえば、まだ名前は出してなかったね。多分、リリちゃんの脳がパンクしないようにって、ルルア様は気をつかわれたんだと思うけど……。えっと、リースっていうのはナイトメア家が協力している組織の名前で、『人類と吸血鬼の戦いを無くす』を大目標に掲げる、人間と吸血鬼が手を取り合う組織だよ」


 へー、なんかまだとんでもないものが出てきた。

 一応、リリは師匠に勉学は教わっていたが、学校に通ったことは無いので、なんか頭がオーバーヒートしそうだった。


「ほへー……」

「うんうん、そうやって少しずつ学べば……ってリリちゃん!? 頭から湯気出てるよ」


 あ、もう手を遅れだった。

 さらば、我が生涯。

 


 こうして、リリの長い生涯はあっけなく幕を閉じ、この物語は終わる。

 『レッド・ヴァンパイア』完。

 


 って、待て待て!!

 終わらすな!!

 こんな終わり方ある意味伝説になるわ!!

 ……まあ、では場を戻し、続きをどうぞ。



「ふーふー!! 起きてリリちゃん!!」

「はっ!!」


 ……ふーふーしてくれたお陰で目が覚めた。

 なんか、よく分からない事を言ってる人が頭に浮かんだ気がする。

 ま、いいか。


「これでオーバーヒートするとかお前、だいぶヤバいな……」


 ラノからドン引きされた。


「俺でもそうはならねぇな……」


 イレクからもドン引きされた。


「……すみません。落ち着きました。あの、ありがとうゼルゼくん。というか千年ぐらい吸血鬼は存在してるみたいですが、まだ、人間と吸血鬼は手を取り合えていないんですか?」


 するとイレクは心配そうにこう言った。


「おい……説明してまた、オーバーヒートしねぇだろうな?」

「大丈夫ですよ。僕、オーバーヒート一回したら一時間ぐらいは大丈夫なので」

「なんだ、その特殊体質…………。まあでも結論から言うとそうだな。十三の吸血鬼でもリースに協力しているのはルルアだけ。それにフォールみたいな、人間とって邪悪で、確かフォールは……あ、そうそう。『吸血鬼が支配する社会を』大目標に掲げているからな。とはいえ、千年間で変わった事も多い。いわゆる中世の時代に真祖は誕生し、何度も人間と吸血鬼は大きな戦争を行ったが、ここ数十年は人間側の吸血鬼も増えまくって、もう戦争なんて起こる気配は無いな」




 

 


 


 






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