第4話 親友はvtuber

 ◆


 ――帰宅してあたしは制服を脱ぎ、お風呂場に入った。


 浴槽の中で脚をぐっと伸ばし、今日あった出来事を思い返す。


( なんなのよ あの母親……。マリアと正反対じゃない……。マリアは虐待されてないって言ってたけど、怪しいものだわ…… )

 

 浴槽から出て、裸の自分を鏡に映す。


( ……でも、他人の家庭事情にずかずか踏み込むのは慎重にやらないと…… )


 決意を込めて、鏡に映る自分の姿を見つめた。


「もし、虐待されているなら あたしが救ってやるわっ!」


 ――あたしの大切な親友を――


 ◆


 自室で 濡れた髪を拭きながら、パソコン画面に映る『愛ノ原 はっぴぃ』の配信を視聴する。


 嫌いだけど 配信はちゃんとチェックしているのだ。

 まあ 敵情視察みたいなものね。別にファンって訳じゃないんだからねっ。


「 はぴぃ♡はぴぃ♡はっぴぃぃ♡ 」

 

 いつもの常套句。フっ、悪いわね、今日パクらせてもらったわよ。


「今日はみんなに聞いてもらいたいことがあるの。なんと……今日 学校でわたしに、初めて友達ができましたぁ♡」


 なにィー! あの、中身は人見知りを公言している ピンク女に……!

 ぼっち設定かと思ったけど ガチだったのか?


 コメント欄が爆速で流れる。


 ◆おめでとう 相手は誰? 性別は?◆


「相手はだれか? 女の子でぇーす♪」


 ちぇ。男なら人気が下ったかもしれないのに。


 そこからしばらく、興奮した様子で その友達について語り始める。


「彼女はとても漫画が上手で………えっ? どれくらい上手かって? 漫画賞で賞を取るくらい……あっ! あははっ! じゃ、じゃあ、次の話題は………」


 唐突な話しの切り替えに違和感を覚える。


 コメント欄に ◆これ特定できるんじゃない? 調べろ調べろ◆ と。


( ああ、身バレを防ぐためね。でも……へぇー……。今日、漫画賞をとった友達がねぇ………へぇー……んっ? 今日……漫画賞……友達……? ま、まさか……… )


「あッ、あたしッ!」


 いやいやいやいや――そんなわけ―――


 …………………………。


 あ た し じ ゃ ん !


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