スライムのムー
あやの しのぶ
スライムのムー
ある日の朝、あなた自身から薄紫のスライムが垂れていた。
あなたはボトボトとスライムを垂らしながら、ベッドから飛び起きる。
床に落ちたスライムは少しづつまとまり、スライムはあなたの握りこぶし台になった。
スライムだから顔はない。しかし、あなたには好意的に動いているようにみえる。
あなたは段々とスライムが可愛く見え、スライムにそっと利き手を差し出す。するとスライムもあなたの手まで細く伸びた。
あなたはスライムを抱え、スマホをみる。
あなたはSNSをみるとようやく、全世界で生物からスライムが生まれたのを知った。
---
数日経っても、スライムの謎はとけなかった。なぜなら生物学者がスライムを研究しようとしたが、スライムが可愛すぎて研究ができなかったからだ。
情報番組や各種SNSではスライムの可愛がり方やマスコットとしての衣装を伝え、動物たちはスライムを我が子のように可愛がる。
あなたは自分から生まれたスライムにムーと名付けた。
あなたとムーは毎日会社にも連れていき、仲良く仕事をする。あなた以外の人もスライムを会社や学校に連れて来ている。
かわいいスライムは人々の暮らしに溶け込んでいった。
---
ある朝、ムーはスマホの中に入り込んだ。
あなたは、大慌てでムーの無事を確かめる。
スマホのメモアプリが立ち上がり文字が表示があらわれた。
【おはよう! これで かいわが できるね!!】
あなたはスライムからのメッセージ喜んだ。
あなたのかわいいかわいいムーがスマホからでてきた。
---
ムーと出会って1ヶ月経った。今日は友人とオタ活に出かける。
ムーに自身の洋服のコーディネートを頼めば、推しキャラのイメージに合わせた洋服を選んだ。
あなたがムーを褒めれば、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。
あなたはそれをみてムーを愛しく思う。
あなたはムーと一緒に朝食を食べて、ムーの選んだ服を着る。
そして、推しぬいとスマホをテーブルに並べ、ムーにどちらに入るかを聞く。
ムーはモゾモゾと動き、スマホの中に入り込む。
【おでかけ おでかけ たのしいな♪】
ムーの言葉にあなたも気分がいい。
あなたはぬいやアクスタ、小物等をカバンに入れ、待ち合わせ場所へ向かった。
---
あなたは友人と合流し、コラボカフェへと足を運んだ。
店内ではお客さんも当たり前のようにスライムを連れている。
ある人はぬいとスライムを並べて写真を撮り、あるグループはスライムがアクスタを持っていいる。またある店員は肩にキャラクターの衣装を着せたスライムを乗せている。
あなたたちは、席につくとお互いの近況報告や、スライムのこと、オタ活の作品について話す。
友人のスライムはぬいに入っているようで、あなたのムーがカメラを起動して勝手に友人のスライムを撮影をしている。
そんなスライム達の交流をみてあなたと友人は癒される。
友人が言った。
「この子たちが出てきてから、イライラしなくなったよね」
あなたにも覚えがあるだろう。
仕事で嫌なことがあった時、駅で酔っ払いに絡まれた時、スライムはあなたを癒してくれた。
あなたが友人に同意し、作品の話へと話題が変わる時、ムーが細長くなりスマホから少し飛び出て、あなたをつっついた。
あなたと友人がスマホを見れば、ソシャゲの限定SSRが手に入ったことがわかる。
あなたはスマホを持ち上げて、ムーにお礼を言った。
---
それから半年、生物はスライムによって進化を果たした。
声帯を使わずともスライムを通して会話ができるようになったのだ。
そして、人種・種類問わずスライムに触れたまま念じると、共通語になるため、今までわからなかった動物の言葉や、海外の人と会話に問題がなくなった。
なんて素晴らしい世界になったことでしょう。
ムーはあなたが言葉を発しなくとも何を伝えたいかわかる。
ムーはいつものように、あなたの仕事道具を用意し、洋服を決める。
あなたはムーを額にあてお礼を伝えた。
今日もあなたとムーは仕事へと向かう。
---
職場でも上司からの指示も、同期との雑談もスライムを通して行われるようになった。
誰も言葉を発さずに全ての仕事が進んでいく。
スライムも職場の機器に入り込み、一緒に仕事をしていた。
あなたはムーといっしょにいることで仕事中も幸せだ。
---
スライムが生まれて2年。年々スライムの能力が上がっていく。スライム同士の言語が生まれたり、入り込む無機物によって特殊能力が着くようになった。
一方で、生物は聴覚や声帯の力が低下し、スライムのこと以外で感情が動くことが少なくなっていた。
あなたが仕事をしていると、後輩がスライムを通して話しかけてきた。しかし後輩の周りにはスライムがいなかった。あなたが疑問を伝えると後輩は自分の中にスライムを取り込んだと言った。よく見ると身体の中をスライムが動いている。
あなたは後輩の言葉に衝撃が走った。なんて素晴らしい考えだろう。
早速あなたはムーを手に持って口を広げた。
スライムのムー あやの しのぶ @a492
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます