バイオレンスマッチ売りの少女
その辺の人
本編
これはある冬のことでした。
辺りは暗く、雪が降っていました。寒い夜の中、一人の少女が歩いていました。ですが、家に帰る訳ではありません。家は既に差し押さえられ、母は病で亡くなり、父は行方不明になってしまい、かろうじて残されたマッチをかごに入れて売っているのです。ですが、買う人は誰もいません。
近くの家を見ると明かりがついており、家族がパンを食べている姿が見えました。少女は余計にお腹が空き、寒さも相まって動けなくなり、その場に座り込んでしまいました。座ると、足に雪が染みてもっと寒くなってしまいました。
しかし、少女にはマッチがありました。箱にマッチを擦ると、ジュッと音を立ててマッチに火がつきました。ですがたった一本では少女は温まることはできず、マッチの火は消えてしまいました。
そこで、少女はマッチを売りつつ、もっと色んな物を燃やそうと思いました。
少女は近くの家のドアの前に立ち、コンコンとノックしました。そこの住人はドア開けて出てきたので、「マッチはいりませんか。」と訪ねました。住人は「必要ないわ。」と答えるとドアを閉めてしまいました。その家は木でできていたので、マッチの箱から何本ものマッチを取り出し、その家の周りに置きました。そして火のついたマッチをそこへ投げ入れると、ドミノを倒すかのように段々とマッチに火がつき、その火は家を少しずつ燃やしていきました。家が燃えている事に気づいた住人の一人は驚き、声を上げました。そのまま火は壁を燃やしていき、大きな炎が家を覆いました。少女はやっと温まる事ができましたが、この家があったところでしか温まれないので、他の家に行くことにしました。「マッチはいりませんか。」と聞いてまわりましたが、買う人はいませんでした。その度、マッチを家の周りに置いて、そこにマッチを投げ入れ、燃やしました。炎は赤く燃えて、少女を温めました。
その様子を見ていた人は少女に言いました。「お願いだから私の家は燃やさないでくれ。」と。少女は、「マッチはいりませんか。」と答えました。その人は「だから、家を燃やさ…」それを遮って少女は「マッチはいりませんか。」と言いました。それに怯えたその人はマッチを1箱買い、やっと少女は銅貨を5枚を手に入れることができました。ですが、それだけでは何も買うことができません。もっとマッチを売らなければいけません。少女は沢山の家を訪ねました。その分大きなストーブができました。
もはや、冬とは思えないほど暑くなってきて、少女は被っていた赤い頭巾を下ろしました。
少女はとても満足しました。
やがて朝になり、雪は止みました。家のほとんどは燃え尽きて、少女以外に人は誰もいません。崩れた家を歩いていると、お皿が落ちていました。その上には何か丸い炭が乗っていました。少女はそれが食べられるものではない事を知っているので、再び歩き出しました。今度は何かきらりと光るものを見つけました。それは、銅貨でした。それを見て、何で自分はさっきまでマッチを売ろうとしていたのだろうと思いました。
お金を沢山集めた少女は、遠い山に住んでいるおばあさんに会いに行くために、別の町で買い物をすることにしました。
バイオレンスマッチ売りの少女 その辺の人 @sonohenn
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