パンツな名前
「さあ、返しなさい下北!! 今から半殺しで済ませてあげるから」
「ダメじゃん!! てか、どうして俺なんだよ」
「決まってるでしょ!! クラスの人気者な苺とあんたみたいな冴えない男が恋人同士なんてあるわけないもの、絶対に卑怯な手段を使ったに違いない!!」
「どんだけ失礼な理由なんだよ!!」
つまり、そういう卑怯な男なら下着泥棒くらいやるだろうって話かよ……そういえばこいつ、苺とそれなりに仲良かったな。友達を心配していると言えば聞こえはいいが……
「大体名前からして怪しいのよ、下北(したき)って」
「下北(しもきた)だっての!! 下北敬(しもきた けい)!!」
「それはそれで、下ネタ系って……」
「もう何でもアリだな、おい!! 大体な、それを言ったら苺はどうなるんだよ。飯津(はんつ)だぞ、パンツそのものだろうが」
「はあ? 苺が下着泥棒ですって、もっとまともな嘘つきなさいよ!!」
……その前にお前の頭をまともにすべきだと思うんだが。ちなみに名誉のために言っておくが、苺の名字は飯津(いいつ)だ。
「とにかく、俺はやってねえ。何で苺っていう可愛い彼女がいて、他の女子のパンツ盗まないといけないんだよ、リスク高すぎだろ」
「それは……そうかもしれないけど」
「だろ? 大体、お前のパンツなんか興味ないっての」
「それはそれで失礼ね!!」
「どうしろと!!??」
本当に面倒臭い性格だな、こいつ。まあ、本当は興味あるんだけどね……何だかんだでこいつ美人だし。苺の言うように乱暴な性格に反してパンツの柄が猫っていう乙女チックなものなら、見て見たいのが男ってもんだ。
「でもあんたじゃないなら、誰なのよ。何か【怪盗パンツ】とかいうわけわかんない奴から予告状も来たし」
「それ……筆跡とか分からないのか?」
「PCで打ってあったから、無理よ」
そういうところは頭が働くんだよなあ、苺は。ああ見えてテストの順位は上位の方だし。
「何はともあれ、あんたも気を付けなさいよ」
「いや、俺男なんだけど」
「何であんたのパンツ盗まないといけないのよ!! 苺よ苺、あの子あれだけ可愛いんだから、狙われるかもしれないでしょ」
「いやー、ないんじゃねえか? あいつのパンツ子供だぞ、苺柄」
「い、苺柄……良い!! 愛でたい!!」
……実はこいつが星野のパンツ盗んだとかないよな? いや、自白してるんだから苺で間違いないんだろうが。
「苺の苺パンツがあんたの毒牙にかかっていると思うと……やっぱり半殺しにする!!」
「誤解だ!! 俺と苺はプラトニックな関係だっての」
「え……何、じゃああんたって苺とエッチしたことないの?」
「ないけど?」
「……ねえ下北、余計なお世話かもしれないけど……あんたと苺、近いうち別れるかもよ?」
「はあ?」
猫目は何を言っているんだ? 俺と苺が別れる? あり得ないだろ、今これだけラブラブなのに。あ、苺が警察に捕まって物理的に離れるのはあり得るかもだけど。
「どういうことだよ、プラトニックな関係なのがそんなにいけないのかよ」
「そうじゃないけど……苺も本当にそう思っているのかって話」
「……」
「ま、何にせよ話し合うことね。親しいってのは諸刃の剣よ、言わないと分からないこともあるんだから」
そう言って、猫目は去っていった。何だよ、偉そうに……でもあいつは苺と親しいし、何だかんだで友達想いだ。無視するのも、な……
ピコン♪
そんな時、スマホのLIPAの着信音が鳴った。苺からだ、内容は……
『次は桜井さんのパンツを盗むね、お楽しみに♪』
……やっぱり苺が警察に捕まって物理的に離れる方があり得るんじゃねえか?
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