パンツ見たいよね?

 俺は迷っていた。いや、犯人はどう考えても苺だけどさ……言うべきなのか、ここで。俺の彼女がお前のパンツを盗みました……いやいや、アホかと!!


「そ、そうか……災難だったな。でも、どうして俺に話してくれたんだ? 一応俺、男だぞ」

「下北君は友達だし、それに……」

「それに?」

「飯津さんの彼氏さんでしょ? あんな可愛い彼女いて、下着泥棒なんてしないだろうと思って」

「……」


 すまん星野……その可愛い彼女が犯人なんだ。まあ、苺は男女問わず人気あるからなあ、疑う奴はそりゃいないわな。


「ちなみに星野、ちゃんと戸締りとかはしたのか?」

「うん、こんな予告状貰っちゃね。部屋の鍵も家の玄関の鍵も、万全だったよ」

「鍵が壊されたとか?」

「ううん、そんな形跡はなかったよ」


 いや……マジでどうやったんだ? 俺の貧しい脳じゃ、いくら考えても分からん……いっそのこと本人に聞いてみるか? いやいや、犯人が自らトリックばらすわけが。


***


『ピッキングだよ♪』


 周りに聞かれるのはまずいので、LIPA(ライパ)を送ってみたんだが……教えてくれるんかい!!


『ピッキングって……あのピッキングか?』

『うん、カチャカチャって。で、玄関から入ったの』


 ……そんな簡単にできるモノなのか、ピッキングって。


『てか、予告状出すなや』

『怪盗が予告状出すのは、お約束でしょ?』


 いや、だからお前下着泥棒だろうが。どっかの大きな宝石ばかり狙う、キザな怪盗じゃないんだからさ。


『ちなみに、下着の柄は星だったよ』

『バラすな!!』

『星野さんらしい、素朴で可愛いチョイスだよね♪』

『分かる!!』

『見たい? 写真、あるよ』

『……』


 そりゃ……見たいよな、男として。星野可愛いし、苺と違った真面目ゆえのっていうか。


『見せてあげないよ、キャン♪』

『どっかのスナック菓子か!!』

『美味しいよね、今日帰ってから星野さんのパンツ見ながら食べようかな』

『変態か!!』


 何ということだ……俺の自慢の可愛い彼女が、こんな高レベルの変態になってしまうとは。


『とにかく、星野にパンツ返せ』

『いつかは返すよ、今はダメ』

『なぜ?』

『大いなる目的の為』


 いやいや……パンツが必要な大いなる目的って何だよ。それっきり、苺とのLIPAはその日は途切れてしまった。


***


 翌日、俺はまた一人で朝早く登校していた。苺は基本、すぐにLIPAの返事をくれる奴だ、なのに昨日はそうじゃなかった。また何か変なことを考えているんじゃないかと気になって、目が早く覚めてしまったのだ。


「おはよう」

「下北―、覚悟おおおお!!!!」

「うおっ!!」


 教室に入るなり、高速の平手打ちが俺を襲ってきた。何とか避けると、そこにはクラスメイトの猫目ねこめがいた。快活でちょっと乱暴なところがある、さっぱり系美人だ。


「何だよ、急に」

「白々しい……乙女の秘密を奪っておいて!!」

「はあ? どういうことだよ」

「あんた……私のパンツ盗んだでしょ!! あ……今はちゃんと履いてるからね?」


 何でその反応だけ頬を染めて乙女チックなのか、とツッコミたいところだが……苺、またやったのかよ。一日一善ならぬ、一日一パンツか!!


 ピコン♪


 丁度スマホのLIPAの着信音が鳴ったので、見てみると……苺からだった。


『猫目さんのパンツの柄は猫だったよ、実は動物好きで乙女な猫目さんらしいよね♪』


 ……なるほど、猫目にはそういう一面が。多分また写真撮ってるだろうから、後学の為にも見せてもらって……じゃねえよ!!


『もちろん、見たいよね?』

『見たい』


 やはり、苺が猫目のパンツを見せてくれることはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る