第2話一等星②

「お〜い!星!!」


一輝に声をかけたのは天野焦斗と学童野球の

チームメイトだった御手洗奏汰みたらいかなた


全国屈指の快速であり、パワーもある遊撃手。

170後半の焦斗と並ぶと小学生と高校生くらいに見える。


「また野球できんな!お前のいないチームは

うるさくは無いけど退屈だったわ〜」


からかい気味に言う御手洗に焦斗が冷めた目で見ながら話をする。


「こいつ一輝がいなくて入団してからめっちゃ俺に話しかけて来てきたんだよ。今日から交代な」

「そうだったのか。ごめんな〜御手洗〜?」

ムカつく顔でからかい返す一輝。


「んなわけねぇだろ!バカ言うな面長!

ニヤついてんじゃねぇ野球バカ!」


ニヤニヤする2人を軽くあしらいながら続ける。

「んなことよりよぉ〜星。

お前先輩たちからだいぶ目つけられてんな〜」

「あ〜まぁいきなり入団した奴が

いきなり一軍とか俺でも疑問に思うもん」

「まぁ先輩達はお前の実力あんま知らないから

無理ねぇな。これから見せていけばいいんだよ」


そういう焦斗に御手洗は顔を向ける


「天野、お前こそ今年は投げれるのか?

肘の状態、ぶっちゃけどうなんだ?」

「もう完全に回復してる。今から100球投げても

明日も投げれる。」


根拠なく話す焦斗。


「そうか。まぁいいや。星2年の仕事教えるぜ」


その時、ボールが飛んでくる。

パシっ。一輝がそのボールを掴む。


「おい2年坊主共!何ぺちゃくちゃ話してんだよ

整備終わったんか!?お?」

「...」


2人の上級生が話しかけてきた。

先輩風を吹かしているのが

エース日野陸ひのりく

隣にいるぼーっとしている男が

正捕手の多田翔真ただしょうま


「なぁ?御手洗?

2年でレギュラーなのがそんなに偉いのか?

天野ぉ!投げられん奴が喋っててもいいんか?

新人の...星つったか?もう入団してんだから

お客様じゃねーんだよ。テキパキやれよ?」

「...」


偉そうな態度に御手洗が言い返す。

「すんません日野さん。でも整備も終わったので

これから星に2年の仕事を教えるところです。」

「あ?口答えか?デケーツラでグランドで話してんじゃねぇーってんだよ。」


明らかに敵意むき出しの日野に対し、御手洗も熱くなる。


「分かりました。

このボール片付けるんで、いいですか?」


焦斗が落ち着いてそう話すと


「おーそうしろそうしろ。

グランド内でケタケタ笑うのなんて10年速ぇ。」


日野にイライラする御手洗と焦斗

今にも手が出そうな2人だったが、一輝が口を開く


「日野さん。すいませんでした。これは僕が片付けるので日野さんは練習に戻って頂いて大丈夫です!」


一輝が遮るように話す。

だがそんな一輝を見て、話を終わらせる態度が

気に入らなかった日野が続ける。


「お前1年くらい野球から身を引いてたらしいじゃねぇか。うちの練習について来れんのか?

小学生の時全国制覇しただかしんねーけど

親父が死んで引きこもってたらしいじゃねぇか」

「!」

「てめぇ!いい加減にしろよ!!」


御手洗が叫ぶと

焦斗が日野の胸ぐらを掴みながら凄む。

これには日野も一瞬驚いたような顔を見せるが、直ぐにニヤケヅラになり言葉を放つ。


「全国大会優勝経験者だかなんだか知らねーが、所詮小学生レベルだろ。そんな奴がいきなり一軍とか納得できねーんだよ。」

「焦斗、御手洗。もういいよ。」

「良くねぇよ!何も知らねー奴が知ったこと言うのが俺は1番許せねぇんだよ!」

「日野さん。あんたそんなに一輝の実力を信じられねーなら、練習終わりに勝負すればいいんじゃないですか?なんなら俺が投げたっていいですよ。」


殺意の籠った目で言う御手洗と焦斗。

日野は相変わらずのニヤケヅラで返す。


「おぉ。いいぜ。星、おめー練習終わり天野と

第2グラウンドに来い。御手洗も球拾いで来いよ。俺と多田のボール拾いに。」



「今日はここまでだ!自主練習する者は

第2グラウンドか室内練習場を使うように!

ダウンも忘れるなよ!以上。解散!」


コーチの高島がそう言い、グラウンドを離れる。




-第2グラウンド-


練習終わりの1年生がざわついている。

3年のエース日野と正捕手の多田がキャッチボールを

している。


「もしかして日野さんの投球練習みれる?!」

「多田さんデケェ〜。キャッチング柔らかいし

投げやすそう〜。」


1年生が話していると、一人の1年生が口を開く。



「あのサークルでバット振ってる人誰だ??」

一同の視線がその男に注目される。

身長は170前後、中学生ではやや高い身長だ。


ブゥン!! ブゥン!!


とても170cm前後、中学生が出す音では無い。


「ほぉ〜、中々いいスイングするじゃねぇか。

2年坊主にしてはな。」


「日野さん。胸を借ります。

よろしくお願いします」

「やっぱ鼻につくなお前。

中学のレベルを教えてやる。3打席勝負だ。」


深深と頭を下げる一輝に日野は言う。

一輝が打席に立つと同時に、焦斗と御手洗が外野へ守りに入る。


「おいおめぇら!外野じゃなくて内野を守れ!

それとも俺が打たれると思ってんのか!!」


少しイラついたような日野が声を荒らげる


「チッ。舐めたガキどもだ。現実見せてやるよ」


そう言い振りかぶる日野、右腕から放たれるボール、

「「ズバン!!!!」」

130kmは出ているであろうストレートが、

ホームベースの真上アウトコースいっぱいに

決まった。そのボールをガッチリ掴むミット。


「は、速ぇ!!!」

「何km出てんだ?!」

「これがエースのボール!!」


(身体が反応していない。手が出なかったようには見えないが、一球様子を見たか??)


多田がそう思ったのと同時に日野が口を開く。


「チッ。嫌な見逃し方しやがって。

見切っていますってか??」


(おぉ〜、すげー球だ...一球見ようとしたけどビタビタに放ってきた。これが桑山のエースの球か...)


2球目。

先程より速いボールが、半個分外に行く。

球をもう一度見逃す一輝。

取られてもおかしくないコースだが、日野は

「ボールだな。1-1だ。」と冷静に言う。


「どうした全国制覇のキャプテンよぉ。

ビビって手が出ねーかぁ?!外に出なかったから

バットの振り方も忘れたんか?!」


その発言に明らかに怪訝な顔をする外野手が2人。

バッターボックスにいる一輝は目を瞑り、2年前の

事を思い出す....

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