ダイヤモンドスター
オカピ
第1話一等星①
親父が言っていた。
「土や泥にまみれて初めて男は1人前になる」
「1番輝くには1番泥臭くなれ。」と...
「お弁当持った〜??」
「持ったよ!時間ギリギリだからもう行くわ!」
母親からの問に眉に切り傷のような物がある少年が叫ぶ。
「朝日のおじぃさんによろしく伝えておいて!」
母のその言葉に軽く手を振るのは、
今年中学2年生になった少年、
家の玄関を勢いよく飛び出し階段を下っていく。
勢いよく階段を降りると
マンションの管理室にいる老婆が声をかける。
「かずちゃんおはようー!
今日からチームに合流かい!!」
少年は一瞬立ち止まる素振りを見せるが走りながら
「おばちゃんおはよう!今日からだよ!
時間やばそうだからまた帰ってきたら話すよ!」
と言い手を振る。
ゴマ粒になっていく一輝を見て老婆は一言呟く。
「本当に元気になって良かった。」
その目には一滴の雫が見えた。
4月。桜舞う町に住む男子中学生、星一輝は、
地元の野球クラブ「桑山ボーイズ」に今日入団する。
走りながら一輝は言葉を漏らす。
「先週の入団式に行けなかったから
少し緊張するな〜。でも楽しみだ〜!」
シャリシャリシャリ。
後ろから2台の自転車が迫る音が聞こえる。
「一輝〜。なんで走ってんだ〜?」
「また自主トレとか言って走ってるんでしょ!
焦斗後ろ乗せてあげなよ。」
声をかけてきたのは幼馴染の2人、
高身長でイケメン
お節介焼きの幼馴染の
「いやこれロードバイクだから乗せられん」と
真顔で話す焦斗。
「 焦斗!結!おはよー!
焦斗〜エナメルだけ乗せてくれ〜」
「だからこれロードだから無理だって!
自転車で来ればよかったのに!!」
「ウチが持ってあげようか〜」とニヤニヤする結
「結に借りは作りたくねー!」
とどこか嬉しそうな一輝。
「ついに一輝も入団か〜。
これでまた黄金バッテリーを見れるのね!」
目を輝かせる結に
「ほんとにな。ずっと待ってたよ」
と嬉しそうに笑う焦斗。
「待たせて悪かったな!また今日から一緒に野球できると思うと最高だ!」と拳を突き上げる一輝。
走るスピードは全く変わらず、
そのままグラウンドに到着。
「桑山ボーイズ」8年前に設立された比較的新しい
ボーイズチーム。
3期生が全国大会ベスト4に輝いたことをきっかけに全国大会常連になった強豪ボーイズチーム。
現在3年生21人、2年生19人、1年27人の計67人の
ボーイズチームである。
「集合!!」
長い髪を後ろに纏め
野球用ズボンにジャージを羽織った
20代半ばの男が声を掛ける。コーチの
2.3年生40人が一同にグラウンド準備の手を止め「「おはようございます!!」」と挨拶。
そして高島の元へ駆け寄ってきた。
「先週の入団式で新1年生が27名入った。
3年生は最上級生として下の者たちの手本に、
2年生は1年生の面倒を見ながら3年生のサポートそして全員がレギュラー、全国制覇を
目指して今年度も戦っていく!」
「「「はい!!!!」」」
怒号とも取れる声がグラウンドに響く。
「それと、先週の入団式に参加出来なかったが
本日より皆と全国制覇を目標に戦う新人を紹介する。」
一同が少しざわめく。
「1年生か?俺らを集めてまで紹介?」
「1年生は別グラウンドで体力測定からじゃ?」
「いきなり1年生が上がってきたのか??」
「他チームからの引き抜きか??」
などと色々な憶測が生まれる。
そんな彼らを見て高島は続ける。
「今年度よりチームに参加する星...えーと
星一輝(ほしいっき)だ!」
完全な読み間違えである。
「お世話になります!星一輝(ほしかずき)です!
2年生からとなり、少ない時間かもしれませんが、
皆さんの力になるように頑張ります!!
ポジションは主に捕手をやっていました!!
よろしくお願いします!!」
40人全員に響き渡る声で自己紹介をする一輝。
一輝の声になのか、コーチの読み間違いをスルーしての自己紹介をしたことなのにかは分からないが、全員が堪えるように肩を震わせていた。
「えー。今紹介にあったように、2年生からという
途中からの加入だが、仲間になる事に変わりはない。全員、この一輝(かずき)と早く打ち解け
チーム一丸となって戦っていこう。」
まるで読み間違いをしたのが無かったかのように
話す高島に更に笑いが込み上げてくるチーム。
もはや罰ゲームの域である。
「そして、星は今日から一軍のメンバーと練習をしていく予定だ。全員そのつもりで頼む。」
「「「!!!」」」
空気が一瞬ピリッとした。
さっきの笑いを堪えていた集団とは思えないほど
全員の視線が一輝に集まっていた。
その視線に一輝も唾を飲むが
構うことなく、負けないという大きな声で
「よろしくお願いします!!」
と深深と頭を下げた。
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