第17話「転売商人、出禁になる」

 森の奥から、荷馬車の車輪が軋む音がした。

 やけにギラついた目をした商人風の男が、金貨の詰まった袋を抱えてやってくる。


「ほう……これが噂の“自動で品物が湧く魔の店”か。へへっ、こりゃ一山当てられるぞ」


 ツトムはレジ前で、嫌な予感しかしていなかった。


(あ〜……来たよ。絶対ろくでもない客でしょこれ)


 店の自動扉が開いた瞬間――


《いらっしゃいませ。スーパーマーケット〈テンガイ〉へようこそ》


 商人の身体がピタリと固まり、次の瞬間、棚の方へ吸い込まれるように歩き出す。


「お、おい……勝手に動くんじゃ……!?」


 強制買い物モードに突入したのだ。


 ツトムはため息をつきつつ、いつもの仕事モードに入る。


「カゴをお使いください……って言う前に、もう持ってるし」


 商人は棚の前で大量の品をカゴに詰め込み始める。

 砂糖、塩、コショウ、良く効く薬……とにかく手当たり次第。


「全部買い占めて転売してやる。へへへへっ!」


 その瞬間、天井スピーカーが低い警告音を鳴らす。


《警告。お客様のご利用目的に不正な転売行為が検知されました》


「な……なんだその声は!? 転売? 違う! これは商売だ、商売!」


《当店での転売目的の大量購入は規約により禁止されています》


 ツトムは驚いて固まる。


(規約なんてあったの!? 俺も知らないんだけど!?)


 商人はレジに向かおうとしたが――


《不正行為判定。お客様を“出入り禁止”に設定します》


「ちょ、ちょっと待て! 金ならある! ほら見ろ、この金貨を――」


 次の瞬間、店の床が淡く光り、商人の足元に魔法陣が展開した。


「うおおおおお!? や、やめろ! まだ買ってな――」


バチンッ!


 光に包まれ、商人は店外へと弾き出された。


 静寂。


 ツトムはレジカウンター越しに、自動扉の向こうへ吹っ飛んでいった商人を眺めた。


「……店、すごすぎでしょ。ていうか、出禁ってどうやって解除するの?」


 店内スピーカーが淡々と答える。


《解除は未実装です》


「未実装〜!? この店、本当にゲームみたいだな……!」


 ツトムは額を押さえつつ、今日もまたひとつ、この異世界スーパーのカオス仕様を知るのだった。



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