第3話 緑黄色な心
彼女とのこれからに悩みながら
八百屋へと自転車を漕ぐ。
あの子に会えたらこの気持ちも中和
されるかもしれないが
今の気持ちのまま八百屋で
あの子に会ってしまったら、、、、
きっと正常な判断ができない、
感情がさらに乱れてしまうんだろうな。
そう思った僕は八百屋近くの
CDショップに少しだけ寄ることにした。
"今日暇だし寄り道でもしてゆっくり
行ってきていいよ"
というオーナーの言葉に感謝だ。
僕は昔から心が顔に出やすい性格だ。
気付かないうちに悩みが顔に出ていたのだろう。
そんな反省をしながらCDショップへ入る。
店内には今流行っているだろう
アーティストの曲や売り出し中の曲
とそれに関してのポップがあったり
様々な音とポップとで視覚と聴覚が
掻き回される。
悩んでいる時はあえて色々なものを
感じて整理するタイプなので
この空間が一番整うのである。
サウナは好きだが水風呂が苦手で
整うまで到達しないのである。
断然こちらの方が僕は整う。
そんな中
「少し前の私と話ができるなら こんなこと想像していたかと口を滑らせてしまう」
というメロディに乗った歌詞に耳を奪われた。
初めて聴く曲だった。
緑黄色⚪︎⚪︎というアーティストの
"幸せ"
という曲だった。
八百屋に行こうとして緑黄色。。
これも何かの縁(えん)かと思った。
歌詞を見れば見るほど整えるはずの心が
逆に乱れる。考えさせられる。
整えるはずが悩みは膨らんだ。
しかし、いつまでも寄り道はしていられないので
深呼吸をして八百屋へと向かう。
感情の中和を期待して
八百屋へ向かっていたが
頼むから今日はいないでくれ。
そんな感情にいつしか変わっていた。
ーーーーーーーーー
駐輪場から店内が見える。
今日もあの子は八百屋にいた。
ただレジをしていたのでレジに当たらなければ話すこともないし、
そもそも俺のことなんて覚えてないだろうな。
カゴに野菜を入れてレジ待ちをする。
レジ待ちがかなり並んでいてその子に
当たるか当たらないか予想もつかない。
心の中でこのレジであの子に当たらなかったら
もうこのなんともむず痒い気持ちは
綺麗さっぱり忘れて、彼女を信じよう。
そう決めて順番を待った。
そんな時に限ってその子に当たってしまう。
この気持ちは忘れないでいいらしい。
レジを通す機会音を聞きながら
前回領収書をお願いした時のことを思い出す。
はち谷の谷の漢字を伝える時に
谷間の谷と伝えた反省を生かして。
今日は普通に谷で伝えよう。
そんなことを考えている最中、、、
「"はち谷(はちや)"で良かったですよね?
はち がひらがなで
や が谷間の谷で」
その子の口からその言葉が出てきた。
僕はその子が覚えていてくれたことに
驚きと嬉しさが同時に押し寄せた。
「え、、あ、はい、ありがとうございます。」
この返事をした時に顔に出やすい僕は
どんな顔をしていたのだろうか。
お会計を終え予想外の出来事に
心を躍らせながらレジ袋に野菜を詰めていると
さっき聞いたばかりのあの曲が流れる
「少し前の私と話ができるなら こんなこと想像していたかと口を滑らせてしまう」
緑黄色野菜を買って
緑黄色⚪︎⚪︎の曲が流れる。
想像してなかったなーと心の中で
1人呟きながらスーパーを後にした。
ーーーーーーー
「おかえり!ありがとね!
、、、、、、、、
なんかいいことあった?」
オーナーからの鋭い一言。
「え?顔に出てますか?」
そんな会話をしながら
予約はないがフリーのお客さんに期待して
準備を進める。
結局世の中が大変なことになっているため
ノーゲストで営業を終えた。
さて帰ろうとスマホを見ると
彼女(サキ)から1通のライン。
それを見るや否や彼女の家へと
向かうことにした。
1人でモヤモヤ考えてても答えは出ない。
顔を見て話したらこの心の
つっかかっりも八百屋で芽生えた
この気持ちにも踏ん切りがつくかもしれない。
そんなことを思いながら。
"俺も会って話がしたかった"
そう返信をして、
踏み出したペダルの重さに、
自分の迷いを感じながら
夏にまだなりきれない生ぬるい夜を急いだ。
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