第2話 葛藤
今日も自転車を漕ぎながら出勤する。
最近のガラガラの交差点とは真反対に
脳は渋滞、混雑、パンパンである。
ーーーー
"レンはさ、なんでそんなに
私のこと信じられないの?"
ーーーー
それは現在付き合っている彼女から
佐藤レン(僕)に向けて出勤前に
届いたラインである。
彼女とは付き合って2年弱が経とうとしている。
好きではあるのだが僕は彼女のことを信じていない。
それはただ単に僕が人間不信なのではなく、
ある日の出来事がきっかけとなっている。
その出来事以降も彼女とは会うし、
デートにも行くがどこか前ほどの燃え上がりは
なくなってしまいそれを彼女は感じていたのであろう。
それが今日の朝に来た1通のラインに
繋がったのだと思う。
"大抵、うまく行っていない時に
心惹かれる人は目の前に現れる"
友人のその言葉の意味がよく分からなかったが
今なら100%共感できる。
彼女がいるのにも関わらず他の女性に
うつつを抜かすのは良くないことは
理解しているし、自分自身一途が売りで
そこは自他共に認められているところである。
それが変わりかけてしまっているのは
東京に出て6年、色々なものに触れて
自分が変わってしまったのか、
今の彼女との例の一件で自分が
冷めてしまったのか
八百屋のあの子の魅力がすごいのか
答えは見つからないまま職場に着いた。
今日はランチが忙しい。
バタバタバタバタ時間に追われる。
おかげでそんなことを考えている余裕もなく
ランチとディナーの間の休憩に入る。
ディナーは予約がないためオーナーと
ゆっくり話をしながら賄いを食べる。
ふと、オーナーから
「今の緊急事態宣言とか終わって忙しくなったらバイト欲しいよね、なんか愛想が良い子知らない?うちで働いてくれそうな」
僕は八百屋のレジの新人の子の愛想の良さが頭に浮かべながら、それをしまい込んで
「僕は紹介できそうな子、、、、
いないですかねぇ」
と答えて
オーナーはもし見つけたら教えてといい
お昼寝に入った。
僕も食べ終わり忙しくて忘れていた
彼女から来た朝のラインのことを思い出し
返信をした。
"サキのこと信じてないわけじゃないけど、なんで家に帰ったって嘘ついたのかわからないだけ"
そう返信をした。
遡ること1ヶ月前の夜10時、、、、
サキ(彼女)の一人暮らしをしてる部屋へ
彼女の好きなイチゴのショートケーキを持って
次の日僕は休みだったので
たまにはびっくりさせてやろうと思い向かった。
合鍵を使って部屋に入る。
部屋は真っ暗だった。
まだ帰ってきていないだけか。
ここまでは良かった。
23時半、、、、
"やっと部屋ついた!帰宅したよー"
とラインの通知が鳴る。
彼女のいない部屋とそのLINE、
一瞬で起きた矛盾に
不思議と笑いが込み上げてきてしまった。
これが嘘ってやつか。
悲しいを通り越して笑えた。
終電ももう終わってる。
どーせなら帰ってきて彼女がどんな顔をするか見てやろうと思った。
それは彼女をまだ信じたい自分と
嘘が嘘だとバレている状態に瞬時に
立たされる人間は一体どんな表情をするのか
ハーフ&ハーフであった。
3時までは頑張って起きてたが知らぬうちに寝落ちしていた。
「ガチャッ」
ドアの開く音で目が覚めた。
朝の10時、堂々の朝帰りである。
彼女が夜の仕事をしていることも知っていて
それも僕としてはお金を稼ぐ手段として
悪いことだと思っていないし
それについてとやかく言ったことはない。
ただただ嘘をついたというのが気になった。
あ、やばいと彼女の顔には書いてあった。
申し訳なさと言い訳を探す顔。
嘘が嘘だとバレている状態に瞬時に
立たされる人間はこのような顔をするのか
また一つ勉強になった。
問い詰めるつもりだったが
それより先に彼女の言い訳と
僕の目から頬、顎へと水滴が垂れた。
左目から出た涙で
ハーフ&ハーフと強がっていたが
彼女を信じていたかったのだと
気付かされた。
経験しないで済むなら経験しないまま
一生を終えたかった。
そんな経験だった。
"アフターに行って始発には解散したんだけど、始発から電車に乗っては寝落ちしての繰り返しで行ったり来たりしてこの時間になった"
とのことだった。
それは本当なのかもしれないが僕は
どう考えてもそれも嘘としか思えなかった。
しかし、本当のことはその人にしか分からないとも思っていた僕はとりあえずそれを信じることにした。
信じる事にはしたのだが1ヶ月経っても
どうしても信じきれなかった。
その態度が気持ちが彼女にも伝わり
今朝のLINEを送らせるきっかけとなってしまったのは明白である。
1ヶ月前のことを振り返り
このままでいいわけないけど
どうしたら信じられるのか分からない。
好きな気持ちはあるけど信じられない。
疑い続けながら付き合うのも違うしきつい。
そんなことを考えながら
僕も休憩の昼寝に入った。
、、、、、、、、、、、、
ディナー営業1時間半前のアラームで目が覚めた。
予約はないがとりあえず営業準備を進める。
その途中、オーナーにいつもの
八百屋に買い出しを頼まれた。
昼寝前の嫌な思い出を中和させるように
今日もあの子に会えるといいな
そんなことを考えながら
八百屋へと向かった。
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