堕天

天恋 水蓮

ss


悪魔がいたずらに遊びに来ても決して関わってはならない。

それがここ、天界で定められたルールである。いや、ルールだなんてそんな軽々しい言葉で片付けてはいけない。そう、これは天界で定められし掟。

掟を破ったが最後。真っ白な純白の羽は黒く染まり、頭上で金色に輝いている輪は朽ち果てる。


だから私も例に漏れず、立派な天使になるため、掟を守ってきた。

話しかけてくる悪魔は無視し、誘惑で釣ってくる厄介な悪魔には天罰を与えた。

清く正しく潔白に洗礼し自分を律して生きてきた。


しかし、恋という感情は厄介だ。

恋は一瞬で人間をダメにするが、それは天使である私にも当てはまる。

種族関係なしに恋というものは簡単に狂わされる力を持っていた。


恋はするものではなく、落ちるもの。同僚が言っていた言葉が頭を巡る。

その時の私はその言葉を信じていなかった。

私の中で恋は愛と同様育むものだと思っていたから。


でもその考えはあっさり崩されることになる。

同僚の言葉は正しかった。


一目見た瞬間、心臓の真ん中をズドンと撃ち抜かれた。

微笑みかけられた訳でもない。

優しくされた訳でもない。

話しかけられた訳でもない。

ゾクリと背筋が凍るような冷たい視線が、ただただかっこよかった。


そう思った時には、もう遅かった。もう既に引き返せないところまで落ちていた。

何故なら、私の自慢の真っ白の羽は黒く染まり、頭上で輝きを放っていたものは朽ちて無くなったから。


でも、それでも構わない。

夢を捨て天界を追われてもいい。

あなたとの恋が成就するのなら。

私は悪魔にだってなってみせましょう。


これが私なりの精一杯の愛し方なのだから。


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堕天 天恋 水蓮 @amgi_Suiren

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