第5話 愚者が生きる証


 腐れはてた世界に、僕は生まれた

 ただ生きる事が辛かった


 この世は苦界


 僕たちは地獄に生み出された

 だから赤子は泣いて生まれる

 後悔して、絶望して、泣き叫ぶ


 死こそ救い

 だから僕は、誕生を祝う

 早く死ねると

 やっと1年、苦しみが減ったと


 そうだ僕は、早く死ぬことを願っていた

 願っていたはずだった


 人は単純なのだろう

 たったひとつのことで人は変わる


 ただそれだけで、苦痛は喜びに

 悦びが歓びになり、苦界は世界になった


 だから僕は誓う

「君は止めるだろうね……だけど僕は戦うよ」


 1本の枝が墓標の代わり


「だって君は、世界だったから……これは、僕と君が生きた証だ」


 さあ、行こう終わりを終わらせるために





 

 

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