第4話 愚者の王


 錬金術は技術ではなく、思想だ。

 それも善意に満ちた……いや善意があった筈だ。


 だが、世界とはそんなものだ。

 善意が悪意に。愛が否定に。理想が堕落に。


 ある時、ひとりの愚者が思った。


 愛が憎しみになるなら、きっと人間は素晴らしい存在だ。だって人間は死を歓びに変えられるのだから


 そして、愚者は進み始めた。

 愚者ゆえに歩みは遅く。迷い。願い。否定し。気づき。愛した。


 きっと、人間とはそんなものだ。

 低きに流れて腐れ堕ちる。

 それが、道理で真理の理屈……

 だが、稀に高みに流れて腐れ生きる者もいる。


 問題は、それは果たして

 どこまで……いつまで

 人だったのかという話。


 そう、これは人は

 どこから来て、どこに行くかという

 簡単で退屈な話。


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