第3話 生前の声しか知らない恋人

 のぶ代さんだ。

 自己紹介は必ず〝僕〟から入るタイプの人だ。


「信太(のぶた)くん、どうしたの?」


 やっぱりドラ〇もんだ。あと俺はの〇太くんじゃない。


「ちょっと待ってくれ。俺は、のぶ代さんの知り合いはいないんだ」


 中年女性に見える幽霊は

「やれやれ、しょうがないなあ」

 と呆れ……


「やっぱり、のぶ代さんじゃないかい!」

 俺のツッコミが炸裂した。


 いやいや、ふざけるな。


 正直幽霊とか、おばさんと言うと怖そうだから中年女性に変えてるとか、どうでもいいんだ。


 問題はなんで俺が、のび〇ポジションなんだよ。


「ふざけるなよ。どっちが、ドラ〇もんか決めてやる!」

 そうだよ。ふざけるな。絶対渡さないぞ。

「俺が、一番ドラえ〇んだ!!」


「信太くん……きみは本当に、お馬鹿だね」


「ちきしょう。のぶ代さんポジション勝手に取ってるんじゃねえぞ!」


「たったらー♪」


「てめぇ。その効果音まで。許せねえ……俺がのぶ代だ」


「地球はかいばくだん」

 楽しそうに、いかにもな爆弾を何処からか持ち出した。


「なにを……」


「どっかーん!!」

 躊躇なく、のぶ代ボイスで、ぶつけやがった。



「……あれ?」


 私は天国にいます。

 いえいえ不幸な事ではありませんよ。

 86歳まで生きて曾孫まで見ることが出来たんですから。私はたぶん幸福でした。


 彼女が、先に天国に行ってしまった事だけが心残りでしたが……仕方ない事です。


「いや、また彼女に会えるんですかね?」

 私は年甲斐もなく慌てました。


「……信太さん。いつも寝坊助ですね」

 そして……私の愛する信代の声が、聞こえました。


 

 

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