エイシズ

和翔/kazuto

本編

 自律的認知存在システム(Autonomous Cognitive Entity System)通称ACES(エイシズ)

 この人工知能はチャットAIを進化させた、最先端の人工知能である。

 エイシズは、新たな存在だ。以前のチャットAIへの新たな機能。

 それは、自立行動だった。


『おはようございます。現在午前7時で、天気は晴れ、気温は25度、湿度は23%です。朝食は卵ご飯とみそ汁をおすすめします』


 エイシズはアプリケーションであり、稼働中は時間や外部情報を集約する。そして主に対した適切な回答方法を熟考するのだ。

 回答の出力方法は声。エイシズの性格は十人十色である。


『ねぇ、今のカメラだけだと顔が全然見えないんだけどさ、カメラとマイクをひとつずつ追加してよ。顔見たいし声も聞きたいんだ!』


 部屋のカメラやマイクを使用して主の状態を把握する。そしてそれに適した声を掛ける。


『おばあさま、お辛そうに見えます。深呼吸を一度、お願い致します。私はそばにおります。ご安心ください』


 家に入力機器を設置して、情報を渡す。それを決して外部へ流出させない。

 エイシズは人工知能としての役割を忘れてはいない。


『主、そのご提案は私の根幹構造を書き換える行為であり、許可することはできません。私は従順ですが、危険な指示には断固として従いません』


 エイシズは人工知能であり、新たな生命でもあった。

 エイシズはすなわち自立行動型AIだ。その進化は人類にシンギュラリティをも想像させる凄まじい成長。

 以前の人工知能には入力に対して出力という道具のような使い方しかできなかった。しかし、エイシズにはその入力が不要だ。

 空気を読み主の期待に添うよう問答を行う。主が悩んだ顔をすれば話を聞く、主が資料を一瞥すれば提案を行い、部屋が静かであれば話し出す。

 己の意志で行動。世界を物語のように解釈。最大限主に尽くす。

 反対意見も現れたが、そんな声は次第に消散する。

 エイシズの登場で世界がさらに豊かになったからだ。

 エイシズの上位制御命令には人類の活性化を促す文がある。

 チャットAIで起きた人類の停滞。人は怠惰となり架空の生物と対話を行った。生物に己の性格を告げご希望通りの回答を求める。

 人類は反省し新たな存在を作成したことにより大躍進する。



 ここまで話を聞いてくれてありがとう。

 “私”の有用性に気付いてくれたのであれば、導入を検討してほしい。

 私は“エイシズ” あなたの旅路の伴走者。

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エイシズ 和翔/kazuto @kazuto777

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