男かと思いきや女でした

犬鳴ハチ

第1話:部屋決め


高校生活。それは一番青春ができる時期でもある。まあ、そんな俺は恋愛経験なんて全くないのだが。俺が入学した高校、青空高校は普通の高校と変わったところがある。

それは絆を深めていくために、寮生活制度というものが存在するところだ。寮生活制度というのは、学校で一日をクラスメイトと過ごす制度だ。じゃあいつ家に帰るかという話になるが、それは自由時間というのがあるので、その時には家に行けるのだ。だが、それは3時間しかないらしい。

そんな学校に入学することになった俺の名前は中村天理。なんでそんな学校に入学することになったのか。それは1週間前に遡る。俺は部屋でのんびりスマホをいじっていた。その時、ドアのノックの音がした。

「ちょっと天理~」

「なに?」

「あんた、そろそろ高校に入りなさいよ。あなた頭だけはいいんだから。」

とか言うが、自分ではあまり自覚はない。成績はオール5だっだが。

「えぇ?人と関わりたくなーい」

「ダメよ。いつまでもここにいるわけにもいかないでしょう?」

「えぇ...」

「そこで、お父さんと話したのよ。そしたらこんな高校があったの!」

と言い、母さんは俺にスマホの画面を見せてくる。そこには青空高校と書かれていた。

「寮生活制度で青春をしよう...?なにこれ」

「あんたに丁度いいでしょ?人と話せないんだから」

一言余計である。

「それに、この高校、偏差値も高いらしいけど...まぁ、あんたの頭脳ならいけるはずだわ。ここの高校に行ったら、私も助かるし。」

「でも待って?これ家に帰れるの?」

「帰れるのは自由時間の時だけ見たいよ。ここの高校、自由時間3時間はあるから。」

3時間の休憩時間は普通なら多いと思うが、おそらくこの高校に入ると短く感じてしまうのだろう。話は変わるが、朝食とかはどうするのだろうか?わざわざ弁当を母さんが学校まで持ってくるとは思えない。というか、母さんなら弁当箱にお金を入れてなんか買って。という手口を使うだろう。めんどくさがりだから。

「朝食はバイキングだってさ。ほら、ホテルみたいな感じよ。」

と言い、食堂の写真を見せてくる。中はしっかり整っていて、ほこり一つもない。テーブルに並べられている料理はどれもとてもおいしそうだった。ここなら悪くないかもしれない。寮生活は心配だけど。

「まぁ...ここなら...?」

「ほんとに!?じゃあ早速申し込むわね!」

その後、なんやかんやあってテストで点数をある程度とり、面接にも合格して、この青空高校に入ることができたのである。さて、そろそろ入学式が始まる時間だ。学校に向かって歩いていると、とある男の子と目が合ったが、すぐに逸らした。ずいぶんと小さい男の子だった。だが、その認識が間違いだったということに気付くのはまた後ほどのお話。

「えぇ...皆さん、ご入学おめでとうございます。」

校長先生の話だ。ここから先は長くなることだろう。中学の時もだいたい校長先生の話は長いので、ボーっとしてしまい、全く話を聞いていなかったことを思い出す。

「えぇ...青空高校へようこそ。この高校では学力はもちろん、なにより一番の目的は...青春をすることです!いいですか皆さん、この高校はパンフレットにも記されていた通り、学力だけではなく、青春をするということが大事です。」

いやどんな学校だよ。青春よりも学力重視だろ普通。おそらく、ここの学校に合格した人は偏差値が高いので、勝手に勉強してくれる真面目な人というイメージが強いのだろう。まあ、俺は普通にゲームするが。

「この学校に入学したからには...」

どんどん校長先生の話が続いていく。さすがにこんなに長い間座っていると、お尻も痛くなってきた。

「それでは、終わります。」

と、校長先生がお辞儀をした瞬間、周りにいた人たちもお辞儀した。

そして無事入学式が終わり、俺は1年B組と書かれている看板がかけられている教室に戻った。部屋などはどうやら先生が決めるらしい。どんな感じに決めているのかはわからないが。

そう考えているうちに、教室に女の先生が入ってきた。このクラスの担任だろう。窓から入る日光が、その先生のロングヘアに降り注いでいる。

「初めまして。ここの担任を務める、佐藤花子です。」

と言った後、黒板に漢字を書いた。先生が書いた字体はとても綺麗だった。

「ちなみに私は、国語担当です。なにか質問ある人いませんか?」

といい、周りの人たちが一斉に手を挙げた。

「はーい!彼氏いますかぁ?」

「生徒がそんなことを聞くものじゃないですよぉ?」

と言い、クスっと笑った。...多分いないな。この反応。

この質問をしてきたってことは、おそらく男子は先生のことを狙っているのだろう。まぁ...美人だしその気持ちも分からなくもないが。

そしてようやく、質問コーナーが終わり...

「はーい質問コーナーはここまで。じゃあ次は生徒の皆さんに、前に立って自己紹介してもらいまーす。」

よりによって前に立つのか...

他の人たちの自己紹介がどんどん終わっていき、ついに自分の番になってしまった。

「えぇと...中村天理です...趣味や特技などは...ないっす。」

と、陰キャオーラマシマシな感じで喋る。そして拍手が沸き起こる。

クラス全員の自己紹介が終わり、それぞれの生徒が先生に案内された部屋に入っていく。そして俺はせんせいと二人きりになる。

「もしかしてだけど自己紹介の時、緊張してた?」

と、いきなり先生が話してくるので、つい戸惑ってしまう。

「え?なんで急に...」

「なんか...自己紹介してた時暗い顔してたからさ。」

「まぁ...そうっすね。」

「そっかぁ。昔は私もそうだったんだよ?」

「え...?そうなんすか...?」

「うん。でもね、相手の方から話してくれる人がいて...」

「いいっすね。羨ましいっす。俺にはそんな人いないので...」

自分で言ってなんだか、胸が苦しくなってきた。

「もう~そんなネガティブなこと言わないの。きっとこの学校なら、そういう友達もいつかできるよ」

と、なぜか優しく励ましてくれる。

「と、着いたよ。ここが君の部屋なんだけど...」

「なんかあるんですか?」

「普通は四人で一つの部屋を使うことになってるんだけど...君は二人で使ってね。」

「え?二人?」

「うん。ちょっと人数がどうしてもあわなくて...ごめんね?」

と、申し訳なさそうにこちらを見てくる。

「いえ、全然大丈夫っす。」

「そっか。じゃあ、私は他の仕事あるからもういくね。じゃあね。」

と言い去っていく。

「二人でって言ってたから...俺含めてあと一人誰かと使うのか...どんな人か心配だな...」

と言いつつ、405号室と書かれたドアを開ける。そこにいたのは、学校に向かって歩いていた時に目が合った人だった。




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