第12話 キース村と盗賊
マルクとルルカに案内されながら、歩いていると小さな村らしき集落が見えてきた。
「ここがキース村さ。あんちゃんありがとな!」「ルルカ!母さんのとこ行くぞ!」といい、マルクは走り去る。俺をちらっと見て丁寧にお辞儀し、去っていくルルカ。それを俺は見送っていると背後から声を掛けられる。
「今のは、マルクとルルカ?」
「?貴方は?」
「申し遅れました。儂はキース村の村長、ワグナと申しますのじゃ。マルクとルルカは2日くらい見当たらなくて村人全員で探していましたが、一向に見つからなかったので心配していたのですよ。」
「俺はソロ冒険者ディセン。アルステア領に向かっている最中、あの子達を保護した。」
「ああ、あの子達を助けてくださったのですね、ありがとうございます。しかし、この村を見て分かられるとは思うが、農作物も少なく、肉も少量しかありません。最近では鉱山に盗賊が住み着いており、目星しい物は何もありません。今日はうちに泊まって朝早く旅立たれるといいでしょう。」と言われ、周りを見てみるとこちらをちらちらと伺う人々。その目には微かな憎悪が宿っている。
(ふむ。"何か"があるな。少し調べてみるか?)と内心思い、さり気なく質問する。
「農作物が育たないと言っていたが、何故育たないんだ?」
「雨が降らないのもあるし、土が固くクワ等で耕すのもかなりの労力がいるのです。見て頂いた通り、女や子、年寄りが多い村ですので魔物対策や畑仕事も一苦労なのです。」と言われ、村長の家まで案内される。
案内され、横になっても何となく落ち着かない。村人の生気のない目が頭を過ぎる。俺は畑仕事には詳しくないが、勇者パーティーに入る前に一緒に組んでいた仲間が話していたことを聞いたことがある。(固い土を柔らかくするには、石灰とか腐葉土?と言われるものが必要だと言って居たな。)
…ん?外が何か騒がしいな。少し出てみるか。外に出てみると母親らしき痩せこけた女性とマルクとルルカが村長に向かって何か話している。
「村長の嘘つき!魔物を売れば母さんを助けられるお金ができるって言ったじゃないか!」
「こら!マルク!村長になんてことを!」
「母さんは黙ってて!」
「母さんの流行病、神父様なら治せるって言うから。だから俺はッ……」といい、走り去ろうとするマルクを俺は捕まえる。俺を見て、マルクは涙に濡れた瞳で俺を見て「離せ、離せよ!!」と怒鳴る。
「村長。」と俺は言う。「鉱山があると言っていたが、そこでは何が取れる?」と聞くと「鉱山では宝石類が主に取れ、貴重なモンスターの素材があったりします。」と言う。「しかし、今は盗賊がいて、村の男どもは全員殺されてしまいました。恐ろしいことに盗賊のリーダーは"蒼き狼"のペルカ。ペルカの相棒は、変人錬金術師 ハバル。」といい、さらに続ける。「どちらも元冒険者でB級。ハバルは殺したあとも人体実験等を行っているという黒い噂があり、我々も領主様に何度も討伐をお願いしましたが"税が足りない"、"払って居ない"等を言われ、取り扱って頂けないのです。」と言う。それを聞いていたマルクは激昂し「俺が倒す。俺が盗賊を倒すから、だから…母さんを助けてくれ。」と泣き叫ぶ。それを見て、その姿が幼き日の俺によく酷似していた。俺はマルクを放っておけないし、内心(欲しいスキル、気になるスキルもあるしな…)と思い、ため息を静かに吐きこう言う。
「俺が盗賊を倒そう。」
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